クラウド&データセンター完全ガイド:データセンターサービスガイド

雪氷冷房を取り入れた“エアコンを使わない”DCで空調と電力供給の課題を解決する――青い森クラウドベース

寒冷地型エクストリームデータセンター
青い森クラウドベース
http://aoimoricb.co.jp/

青森県六ヶ所村のむつ小川原開発地区に東北地方最大級のデータセンターとなる「寒冷地型エクストリームデータセンター」を建設する青い森クラウドベース。外気冷房に加えて、データセンターでは世界初となる“雪氷冷房”の技術を導入。エアコンを使わないデータセンターを実現させ、多くのデータセンターが頭を抱える空調と電力供給という問題を解決する。

外気と雪氷のハイブリッド冷房で空調の電力消費の半減を目指す

 青い森クラウドベースは、青森県内外のIT企業3社の出資によって2014年5月に生まれたベンチャー企業である。同社は、2015年秋に、青森県六ヶ所村のむつ小川原開発地区に東北地方最大級のデータセンター「寒冷地型エクストリームデータセンター」を完成させる計画だ。

データセンター外観イメージ

 近年、サーバーをはじめとするIT機器の高出力化による電力使用量の増加、それにともなう空調需要の増加、さらには地球温暖化により、データセンターの電力消費は増加の一途をたどっている。日本のデータセンターの6割以上は首都圏に集中していると言われており、東日本大震災以降の電力料金の上昇は、とりわけ電力料金の高い首都圏において大きなコスト圧迫要因となっている。

 青い森クラウドベースが建設する「寒冷地型エクストリームデータセンター」は、多くの日本のデータセンターが抱えている、空調と電力供給という2つの大きな課題の解決を目指すものだ。

 青い森クラウドベース代表取締役社長の長内睦郎氏は、「青い森クラウドベースは、データセンターとしてはおそらく世界でも初めてとなる外気冷房と雪氷冷房のハイブリッド冷房により、コンプレッサーを使った機械冷房ゼロを目指します。これにより、多くのデータセンターの消費電力の3~4割を占める空調の電力消費を1割以下にし、PUE 1.2以下を実現できると試算しています」と話す。

 外気冷房は近年、地方型のデータセンターを中心に導入が進んでいる技術だが、青い森クラウドベースでも冷涼な青森県の気候をサーバールームの冷却に生かす。「青森県の年平均気温は10.4度と、東京より5度以上低く、年間の8割以上で外気冷房が利用可能です」(長内氏)。

 さらに、外気冷房だけではまかないきれない真夏期の冷却を担うのが雪氷冷房だ。雪氷冷房とは、冬季に降る雪を蓄積して断熱保冷を施しておき、冷房に利用する技術だ。農作物の貯蔵庫などに多くの利用実績があるが、データセンターにおける利用例は世界でも初となると言う。

 「もちろんバックアップとしてエアコン機能は搭載しますが、基本的には外気冷房と雪氷冷房のみでサーバールームの冷却をまかなう予定です。世界最高レベルの、世界に誇れる超省エネルギー型データセンターを実現します」(長内氏)

外気+雪氷冷房システムのイメージ

 雪氷冷房の採用は、自然エネルギーの利用によってデータセンターの電力消費量を減らし、地球温暖化防止に貢献するだけでなく、東北に置くことによってデータセンターの首都圏集中のリスクを分散するという意味合いも持っている。同社の「東北クラウド産業の発展に貢献する」という設立理念にも通じるものだ。

高密度実装にも耐えうる最大実効6kVAを標準で提供

 同社はさらに、「最新機器に対応し、高い空調と電力供給能力を持った高規格のデータセンターで、圧倒的に優位なコストで、未来に発展性のあるクラウド基盤を提供する」という設立理念も掲げており、寒冷地型エクストリームデータセンターの「エクストリーム」という言葉にそれが表れている。

 近年のサーバー機器は、計算能力の向上とともに消費電力も増加する傾向にある。特にブレードサーバーをはじめとする高密度サーバーの設置には大きな電力供給が必要とされ、1ラックあたりの電力供給が重要となる。青い森クラウドベースでは、最新のIT機器をラックにフル搭載できるよう、最大実効6kVAを標準提供し、一部は20kVA以上のハイパワーサーバーエリアも設ける予定だ。

 加えて、郊外型の土地の安さというメリットや高効率なハイブリッド冷房により、提供価格も低く抑えられる。長内氏は、「電力を多く使うユーザーほど、青い森クラウドベースのコストメリットは大きくなる」という。ファシリティについては、JDCC(日本データセンター協会)が定めるTier 3以上に準拠する。

 また、青森県六ヶ所村のむつ小川原開発地区にある立地予定地は、2012年から30年間に震度6弱以上の地震に見舞われる確率が3%以下(首都圏は26%以上)で、落雷も年間1,500以下と少ない(首都圏は6,000以上)。台風の主な経路から外れており、自然災害リスクが極めて低く、強固な地盤を誇る地域だ。実際に、東日本大震災の際でも液状化などの地盤変化は見られなかった。

 当初の建設規模は約300ラックだが、1000ラック程度まで拡張可能な将来性を考慮した建築設計としている。300ラック規模のデータセンターは東北地方では最大級であり、高密度対応であるため、設置可能なIT機器のキャパシティは決して小さくない。

メインセンターとしてだけでなくDR、バックアップサイトにも最適

 青い森クラウドベースでは、同センターにおいてハウジングサービスとホステッドプライベートクラウドサービスを中心に提供する予定だ。パブリッククラウドに関しては提供予定はない。

 ハウジングに関しては、遠隔地であるため、ユーザーがデータセンターに極力訪問する必要がないように、機器設置などの物理作業を代行するサービスを充実させる計画だ。ホステッドプライベートクラウドは、パブリッククラウドのような共有環境ではなく、自社の専用環境を必要とするユーザーに対して、オンデマンドでのIT環境を提供する。当初は物理環境の提供までとし、ミドルウェアやアプリケーションの構築や運営は、パートナーと提携して提供していく。

青い森クラウドベース 代表取締役社長 長内睦郎氏

 想定されるユーザーについて、長内氏は、「首都圏のユーザー企業およびクラウドベンダーなどのITサービスプロバイダーに、自社のクラウド基盤として利用していただくことが主体になると考えています。また、他の商用データセンターの遠隔地や高密度需要があった場合に紹介、再販していただくことも歓迎いたします」と話す。

 高密度なIT機器を利用したいユーザーのメインセンターやクラウドセンターとしての利用はもちろん、首都圏や関西圏の企業のDR(災害対策)やバックアップサイト、ストレージ用途の活用にも適したデータセンターと言えるだろう。多くのデータセンターが直面している問題に正面から取り組む「寒冷地型エクストリームデータセンター」に要注目だ。

お問い合わせ先

青い森クラウドベース株式会社

03-3839-3395

info@aoimoricb.co.jp