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新ブラウザ「Spartan」を搭載した、Windows 10のビルド「10049」

 3月30日(米国時間)に提供されたWindows 10 Technical Previewの新ビルド10049は、ユーザーが待ち望んでいた新しいブラウザ、「Project Spartan」(開発コード名、以下Spartan)が搭載された。今回は、Spartanの機能を紹介していく。

早いタイミングでの新ビルドの提供

 2015年になり、Windows 10 Technical Previewは、1月末に公開されたビルド番号9926、3月18日に公開されたビルド番号10041、3月30日に公開されたビルド番号10049と順調に提供されてきている。

 ビルド番号10049がビルド番号10041の2週間後に公開されたのは、Windows 10 Technical Previewをテストしているユーザーからのリクエストに応えるためだ。

 3月9日に書かれたMicrosoftのWindows Blogにおいて、Operating Systems Group Data and FundamentalsチームのジェネラルマネージャーGabriel Aul氏は、「社内のテスト体制を整備し、Windows 10 Technical PreviewのアップデートスケジュールをFast(速い)にしているテスターには、今までよりも迅速にWindows Updateを使って新しいビルドを届けるようにする」としていた。

 このブログを受けて、3月18日にビルド番号10041がリリースされ、3月30日にはビルド番号10049がリリースされることになった。

 今後、Windows UpdateのアップデートスケジュールをFast(速い)に設定しているテスターには、数週間ごとにアップデートが届くことになるだろう。

 今回提供されたビルド10049も、Windows UpdateをFastに設定しているユーザーに対して、Windows Update(オンライン)のみでの提供となっている。

OSのテストは、まずOSグループ、Microsoft社内で行い、大きな問題がなければ、Technical PreviewのFastグループ、その後、Slowグループに配布されている。今後は、Fastグループに対してアップデートの頻度を上げていく

 なお、Windows 10が正式にリリースされた後でも、Windows Updateには、Fast(速い)とSlow(遅い)という2つのオプションは残る。

 正式リリース後、Fastオプションではいち早く新機能が提供されるが、Slowオプションでは、Fastオプションで多くのユーザーが試してみた後、トラブルがないことが確認されてからのアップデートになる。FastオプションとSlowオプションのスケジュールの差は明言されていないが、1カ月単位で異なってくるかもしれない。

 企業ユーザーは、グループポリシーなどで、セキュリティアップデートだけを適応し、新機能へはアップデートしないという選択もできるようになるだろう。

 現在のTechnical PreviewのFastオプションでは、多くのバグが残っていたり、トラブルが起こったりすることもある。じっくりとWindows 10 Technical PreviewをテストしたいIT管理者などは、アップデートスケジュールをSlow(遅い)にしておけば、新機能をすぐにテストすることはできなくとも、ある程度バグがとれ、安定した動作を行えるものが提供される。

新ブラウザSpartan

 Windows 10の目玉機能の1つと言われていた新しいWebブラウザのSpartanが、今回のビルド10049にやっと搭載された。

 Microsoftでは、Windows 10に、Internet Explorer(IE)とSpartanの両ブラウザを搭載する予定にしている。当初はIEでも、新しいHTMLエンジンのEdgeHTMLと、IEのエンジンであるMSHTML(Trident)を切り替えて使えるようにするアイデアを持っていた。

 しかし、分かりにくいというユーザーからのフィードバックを受けて、EdgeHTMLはSpartanからしか利用できないようにする方針に変更した。これにより、IEはメンテナンスモードに入り、セキュリティパッチなどのリリースは行われるが、新機能の追加や新バージョンのIE(例えばIE 12など)はリリースされない予定となった(Spartanに関しては、IE以外のブランド名が付けられる予定だ)。

 EdgeHTMLは、MSHTMLから古いIEとの互換性を除去して、スタンダードなHTML規格をサポートするように改良されている。

 Microsoft社内でもWebkitやBlinkなどのHTMLエンジンを採用してはどうか、という声もあったが、最終的には、自社がコードを開発したHTMLエンジンを使った方が、将来的に拡張していく場合でも都合がいいとのことで、自社開発のEdgeHTMLが開発された。

Windows 10 Technical Previewビルド10049で搭載されたSpartan。シンプルなブラウザとなっている
設定項目はIEに比べると非常にシンプル

 なおSpartanは、ブラウザとしては初めてUniversal Appsで開発された。このため、コードをそのままARMプロセッサベースのスマートフォンやタブレット上で動かすことができる。

 以前のIEは、Modernアプリ(Windowsストアアプリ)版のIE、スマートフォン版のIE、Xbox版のIEなどが存在し、微妙に異なる表示や動作(挙動)をしていた。しかしSpartanでは、デスクトップPC、スマートフォン、タブレットで同じコードが使われるため、画面サイズの差はもちろんあるものの、HTMLエンジンやJavaScriptエンジンなどは、それぞれのプラットフォームで同じような動作をすることになる。

Windows 10には、IEのMSTHML、SpartanのEdgeHTMLと2つのHTMLエンジンが搭載されているが、EdgeHTMLはSpartanでしか利用できない

 Spartanでは、IEが持っていたActiveXプラグイン、Browser Helper Objectsのサポートは行われていない。これらのプラグインやオブジェクトは、IEのセキュリティホールになりやすい。

 またChromeやFirefoxなどのブラウザでは、拡張機能はJavaScript、CSS、HTMLなどのインターネット標準のテクノロジーを利用して作られている。そこでSpartanでも、これらのブラウザと同じような方式で拡張機能が作れるようにする計画を持っている。開発方法など詳細に関しては、4月末に開催されるBuild 2015で発表されるだろう。

 アップデートについても、これまでとは異なる手法が採用される。Microsoftでは、SpartanはChromeやFirefoxのようにひんぱんなアップデートを行い、インターネット標準テクノロジーをタイムリーに採用していく予定と説明している。従って、IEのような大バージョンは存在せず、インターネットに接続していれば、常に最新のSpartanにアップデートされている状況になる(もちろん、企業ユーザーのために、グループポリシーなどでアップデートをコントロールすることもできる)。

開発中のため、まだまだ完成度は低い?

 実際にSpartanを試してみると、さすがにTechnical Preview版での動作のため、キビキビ動作するとはいえないが、製品版では改善されてくると思われる。

 いくつかWebブラウザのベンチマークを行ってみたが、HTML5やJavaScriptの互換性はIEよりも高くなっている。また、SpartanのJavaScript(IEのChakraを拡張したモノ)では、パフォーマンスを向上させるためにasm.js(現在はFirefoxのみでサポート)を採用することにしている。また、HTTP/2、WebRTC、WebAudioなどの機能もサポートされるようだ。

FuturemarkのブラウザベンチマークPeacekeeperで、IEとSpartanを比較してみた。現在のビルドでは、1654のIEに対しSpartanは1703となり、Spartanの方が少し速い。今後、チューニングが進めば、Spartanはさらに速くなるだろう
Googleが、ChromeのJavaScriptのベンチマークのために作ったOctane。Spartanでは16972だったが、IEでは18692とIEのJavaScriptの方が速い。このあたりは開発途中のためか
ゲームエンジンで有名なUnityが用意している、WebGLのパフォーマンスを計測するためのベンチマーク。Spartanでは22428だったが、IEは22977と微妙に速い。対してFirefoxは、90000というスコアを出している。IEやSpartanも製品版ではもっと速くなるはずだ

 HTMLエンジンやJavaScriptエンジンといった面では、インターネット標準テクノロジーを積極的に採用するが、独自機能として、Web Noteという機能が用意されている。

 Web Noteは、表示したWebページに、ユーザーが自由に書き込みやマーカーを入れられるようにする機能だ。もちろん、書き込みを行ったWebページは、Universal Appsの機能を使って、ほかのアプリ(リーディングリスト、OneNote)と共有することもできる。

 今回はサポートされていないが、ほかのユーザーにメールで送ったり、企業であればSharePointサーバーで共有したりすることもできるだろう。

 なお、書き込みを行ったページを「お気に入り」に保存すると、現状では、画像イメージで書き込みごと保存される。画像イメージで保存されるため、Webページにリンク情報などはなくなってしまう。

 タブレットモードで使ってみると、Web Noteの機能は便利そうだ。指でタッチして、マーキングしたり、コメントを入れたりして、ほかのユーザーと情報が共有できるようになれば、いろいろと便利になる。またSpartanと連携することで、今一つ注目が集まっていなかったOneNoteも、使えるアプリとして見直されるかもしれない。できれば、Webページを画像イメージとして保存するだけでなく、リンク情報を含めて保存してくれると便利になるだろう。

 Spartanでは、音声アシスタントのCortanaと連動して検索を音声で行うことができるが、今回のビルドでも日本語環境におけるCortanaはサポートされていない。Cortanaに関してはクラウド上のサービスと連携するため、Windows 10がリリースされる夏でも、日本語環境がサポートされるかは難しい。秋以降に日本語環境でのベータテストが始まり、本格サービスとなるのは2016年に入ってしまうかもしれない。

右上のマーキングアイコンをクリックするとWeb Noteモードに入り、Spartanに表示されているWebページにペンでいろいろ記入できる
ペンだけでなく、マーキングペン(半透明)も用意されている
テキストも入力することができる
共有ボタンを押すと、OneNoteやリーディングリストなどのアプリとデータが共有できる
Spartanは、画面サイズに応じて、自動的にWebページの表示を変えてくれる。ただしWebページ側でも、マルチサイズを意識したページ作成が必要になる

 このほか、Video、MusicのアプリもUniversal Apps化され、Windows 10用がリリースされた。4月1日にリリースされたMusic AppとVideo Appは、現段階では非常に荒削りで、操作途中に落ちることもある。近々、再度アップデートを行い、ある程度テストできるアプリに仕上げていく方針だ。なお現状では、ベータ版のStoreに接続されるため、ビデオや音楽を購入することはできない。

Musicアプリ。Windows 8.1版のアプリと同じく、アプリ内からStoreに飛んで音楽を購入することができる。OneDriveをデータの保存場所として利用できるため、デスクトップPCだけでなく、スマートフォンからもアクセスすることが可能
Videoアプリ。現状では荒削りすぎてテストもキチンと行えない。近日中にアップデートが行われ、ある程度テストできるようになる模様

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 Windows 10 Technical Preview ビルド10049は、まだまだ荒削りだが、新しいブラウザのSpartanなど、Windows 10が向かう方向性が打ち出されたと思う。

 次のアップデートに関しては、4月末のBuild 2015が1つのタイミングとなるだろうが、もしかすると、Fastオプションのテスターには、Buildの前にアップデートがリリースされる可能性もある。

 今後も、アップデートに注目していきたい。

(山本 雅史)