特別企画
Windows 10 Technical Preview 2015年1月版の機能を紹介
(2015/2/6 06:00)
1月末に公開されたWindows 10のTechnical Preview版では、今年の秋ごろにリリースが予定されているWindows 10の、使い勝手を試すことができる。
Windows 10のTechnical Preview版のリリース直前のプレスイベントでは、Windows Phone 8.1に搭載されていたデジタルアシスタントのCortanaの採用、新しいブラウザのSpartanなどいくつかの話題があった。しかし、1月末にリリースされたTechnical Preview版には、プレスイベントで紹介された機能のすべてが入っているわけではない。
Microsoftでは、Windows Updateなどにより適宜新しい機能をTechnical Previewに導入していくと話している。また、次のTechnical Previewは、4月末に開催されるBuild2015に合わせて公開されると思われる。
今回のWindows 10 Technical Previewでは、日本語版が提供されたので、特に使い勝手などを紹介していこう。
Windows 10のスタートメニューは、Windows 7のスタートメニューとは違う
2014年に公開されたWindows 10 Technical Preview版でも指摘したが、Windows 10はUIの中心がデスクトップモードに変わっている。ただし、タブレットモード(Modern画面)ではWindows 8のスタート画面が中心となる。
Windows 8/8.1では、タブレットモードとデスクトップモードは、全く異なったUIモードだったが、Windows 10ではできるだけ両モードが融合するように作られている。
デスクトップモードのスタートメニューには、Modernモードのアプリのタイルが表示されている。画面の左サイドには、Modernアプリ(Windowsストアアプリ)やデスクトップアプリケーションが表示される。これは、Windows 7のプログラムメニューではなくWindows 8/8.1のアプリ一覧が表示されていると考えればいい。このため、今までのプログラムメニューがそのままWindows 10で戻ってきたわけではない。
昨年のTechnical Previewでは、スタートメニューのアプリのタイル表示は、画面の右側に伸ばしていけた。しかし、今回のTechnical Previewでは、タイル表示は、縦に表示(バーを上下させる)される。このため、ユーザーがタイルを追加して、スタートメニューを右側に伸ばしていくことはできない。
新しくスタートメニューの右上部にスタートメニューを展開するボタンが付けられた。このボタンを押せば、スタートメニューが全面表示になる。このスタートメニューが全面表示になったものが、タブレットモードのスタート画面となる。
Windows 10では、2-in-1 PCなどで利用する場合、キーボードを取り外すと自動的にタブレットモードになるContinuum機能が用意されている。この機能により、タブレットとPC(キーボードとマウスを接続)をシームレスに行き来することができる。
今回は、デスクトップPCにWindows 10 Technical Previewをインストールしたため、2-in-1 PCを使ったContinuum機能の詳細はテストできなかった。ただ、デスクトップでも、タブレットモードをオンにすれば、ほぼ同じ画面が表示できる。
デスクトップモードでは、Windowsストアアプリはデスクトップ画面上にウィンドウとして表示されるが、タブレットモードでは、Windows 8/8.1と同じように全画面でアプリが表示される。
今回のTechnical Previewで大きく変わったのは、Windows 8/8.1のチャームがなくなったことだ。以前から、チャームは活用されていないというデータを得ていたMicrosoftでは、Windows 10ではチャームを廃止することにしたようだ。昨年のTechnical Previewではチャームは残っていたが、今回のTechnical Previewでは完全にチャームは表示されないようになった。
チャームの替わりというわけではないが、新たにAction Centerが用意された。チャームでは、検索、共有、スタート、デバイス、設定などの項目が表示されたが、Action Centerでは、各種の通知、設定などが行えるようになった。つまり、チャームが持っていた検索などは、スタートメニューやタスクバーの検索ボックスに移し、Action Centerではネットワーク、PC設定、システムに関する通知などを一括して管理するようにしたわけだ。
Windows 8/8.1では、各種の設定はチャームのPC設定とコントロールパネルに分かれていた。PC設定から項目がなく、コントロールパネルにしかないという設定があったり、PC設定からコントロールパネルの機能が呼ばれただけという機能もあった。PC設定がキチンと整理されていなかったともいえる。
Windows 10では、コントロールパネルにあった設定をできるだけ設定(Setting)で行おうとしている。ただ、一部の機能は設定からコントロールパネルの一部機能を呼び出すため、UI操作のイメージが異なる画面が表示されることもある。このあたりは、おいおいWindowsストアアプリベースのUIに替わっていくのだろう(例えば、パーソナル設定のスクリーンセーバー設定を選択するとコントロールパネルの設定画面が表示される)。
もしかするとWindows 10のリリース時には、コントロールパネルからしか呼び出せない設定が残ることもあるかもしれないが、将来的にはすべてのシステム設定は新しい設定(Windowsストアアプリベース)に替わっていくのだろう。
日本語版ではCortanaは非サポート、新ブラウザSpartanはなし
1月に行われたプレスプレビューでは、デジタルアシスタントのCortanaや新ブラウザのSpartanがデモされた。新ブラウザのProject Spartan(開発コード名)に関しては、今回公開されたTechnical Previewには入っていない。Microsoftは、今後数カ月後にTechnical Previewをリリースするとしている。Windows 10 Technical Previewをテストしているユーザーには、Windows Update経由で提供される。
Microsoftが新しいブラウザSpartanを提供するのは、現在のIEを拡張していくことが難しくなったということもあるのだろう。IEは、Microsoft独自解釈のHTMLをサポートしているため、古い互換性を持ったまま、新しいWeb標準をサポートしていくことが困難になってきたと予想される。例えば、IEで多く使われていたActive Xは、セキュリティ上の問題となったため、徐々に縮小し、Windows 8のModernモードのIEではActive Xはサポートされなくなった。
こういった流れを見て、全く新たなプラットフォームの上に新しいブラウザを作る方が、PCだけでなく、タブレット、スマートフォン、ゲーム機など、マルチプラットフォーム化していくのにメリットが大きいと感じたのだろう。
もう一つ、ブラウザでシェアを伸ばしつつあるFirefox、Chromeなどは、頻繁に機能をアップデートしているのに比べると、IEはWindowsのメジャーアップデートに合わせて、バージョンアップが行われている。これでは、Web標準をタイムリーにサポートできない。そこで、旧バージョンとの互換性を捨てても、新しいブラウザがいると判断したのだろう。
Microsoftでは、当面IEとSpartanの2つのブラウザをサポートしていくことになる。ただ、IEに関しては、後方互換性を重視するため、新機能の追加は余り行われなくなり、セキュリティパッチが中心になるだろう。一方、Spartanは、Web標準の新しい機能を積極的に採用するようになるだろう。
Cortanaに関しては、日本語版ではサポートされていない。ただし、英語版がサポートされているため、英語環境ではテストできる。
実際、Windows 10がリリースされる秋に日本語版のCortanaが入るかどうかは、難しいのではないかと感じている。Cortanaは、昨年リリースされたWindows Phone 8.1で採用され、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語などがα版として提供され、中国語やロシア語などが追加されている。
日本語のCortanaが提供されるためには、クラウド上でのCortanaサービスが提供される必要がある。2014年にMicrosoft Azureの日本データセンターが提供されたため、将来的には日本語版のCortanaも提供されだろう。ただ、Cortanaが必要とする日本語のビッグデータが現状では構築されておらず(英語版ではWindows Phone 8.1ですでに構築されている)、Windows 10リリース時にはテストサービスという位置付け、もしくは、将来的に日本語版Cortanaが提供されるということになるだろう。
Office 16もWindows 10と同時期にリリースか?
Microsoftは、新しいOffice(Office 16)をWindows 10と同じタイミングで提供する計画を持っている。
1月のプレスイベントでは、デスクトップ版のOfficeをOffice 16として提供し、Windowsストアアプリ版のOfficeを「Office for Windows 10」として提供する。
Office for Windows 10は、Word、Excel、PowerPoint、OneNote、Outlook、Calendarなどのアプリが用意されている。Office for Windows 10は、Universal App化されているため、Windows 10のタブレットだけでなく、Windows 10 for Phone and Tablet(Windows 10では、TabletとPhoneを1つのエディションとして提供)でも動かすことができる。
ただ、Office 16とOffice for Windows 10は機能が異なるようだ。Office for Windows 10が提供するアプリケーションでは、一部の機能がサポートされていない。フル機能を利用するためには、デスクトップ版のOffice 16が必要になる。ただし、一般のユーザーがOfficeを利用する上では、Office for Windows 10で十分な機能を持っている(例えば、複雑なExcelの関数がOffice for Windows 10ではサポートされていないなど)。
Office for Windows 10は、Windows 10だけでなく、iOS、AndroidなどのOfficeへ移植されるベースとなっていくのだろう。将来的には、Windowsストアアプリを基本としたOfficeが、iPhoneでも、Androidタブレット、Windows 10でも動作するようになるのかもしれない。
Office 16やOffice for Windows 10の提供形態に関しては、はっきりしていないが、日本国内でも個人向けにOffice365の提供(Officeのサブスクリプション版)が行われたことを考えれば、Office 365ユーザーを中心に提供されることになるのだろう。もしかすると、Office 16世代では、すべてOffice365にライセンスが統合されるのかもしれない。
2月4日にはWindows 10 Technical PreviewのストアにUniversal App版のOffice(Office for Windows 10)のTechnical Preview版が公開されている。日本語入力に関しては問題があるが、使い勝手はテストできるだろう。
Windows 10のエディションは?
Windows 10では、1つのWindows OSというコンセプトの元に、PCのWindowsとWindows RT、Windows Phoneが1つのコードとして融合され、PC用のWindows 10とタブレット/スマートフォン向けのWindows 10 for Phones and Tablets、IoT用のWindows 10 for IoTに分かれる。
また、x86/x64の32ビットと64ビットのコードが用意される。Windows 10に関しては、Windows 7などの旧来のデスクトップアプリケーションが動作するが、Windows 10 for Phones and Tabletsにはデスクトップモードがなく、Windows Phone 8/8.1のアプリとWindowsストアアプリだけが動作するようだ。
Microsoftでは、Windows 10とWindows 10 for Phones and Tabletsの切り分けを8インチの画面サイズとしている。8インチ以下はWindows 10 for Phones and Tabletsで、8インチ以上はWindows 10となる。つまり、ARM版のWindowsとして提供されていたWindows RTは、Windows 10 for Phones and Tabletsに吸収されることになる。
プロセッサから見れば、Windows 10は、x86の32ビット版、x64の64ビット版が提供される。Windows 10というOSのカテゴリではARM版は提供されないようだ。Windows 10 for Phones and TabletsでARM版が提供されることは分かるが、x86/x64版が提供されるかは明らかにされていない。もしx86/x64版が提供されるとしても、デスクトップモードはサポートされないだろう。またARM版においても、64ビット版が提供されるかどうかは不明だ。
このあたりは、2月に提供されるWindows 10 for Phones and TabletsのTechnical Previewがリリースされれば、ある程度分かると思われる。
なお1月のプレスイベントの質問で、Windows RTを使ったSurfaceに関して、Windows 10に相当するアップデートを計画していると答えている。ここから考えれば、実質的にWindows RTは終わったと見るべきだろう(プレスイベント後、MicrosoftはWindows RTを採用したSurface 2、Nokia Lumia 2520などの製造を中止したと発表している。こういったことからも、Windows RTというOSは終わったものといえるだろう)。
昨年の開発者カンファレンス「Build 2014」で、9インチ未満のスマートフォンとタブレットに関してはWindowsを無償で提供すると発表したことを受け、2014年後半は、Atomプロセッサを採用したタブレットと、Windows 8.1 for Bingを採用した低価格のノートPCなどが数多く販売された。
これらのタブレットやPCの多くが8インチのディスプレイを採用しているため、Windows 10へのアップデートが行われるだろう。こういったことを考えれば、x86/x64プロセッサのタブレットやPCはWindows 10に集約され、Windows PhoneなどのAMRベースのスマートフォンは、Windows 10 for Phones and Tabletsになるのだろう。
Windows RTなどのARMベースのWindowsタブレットは、ほとんどメーカーが製造を中止しているため、現実的にはx86/x64ベースの8インチ以上のタブレットとノートPC、デスクトップで利用するWindows 10、8インチ未満のARMプロセッサベースのスマートフォンやファブレット、タブレットなどのWindows 10 for Phones and Tabletsに別れていくのだろう。
Windowsのビジネスモデルが大きく変わる
Microsoftでは、Windows 10リリース後、Windowsのビジネスモデルを大きく変えていく。
既存のWindows 7/8/8.1から1年間は、Windows 10へのアップデートを無償で提供する。また、Windows OSのアップデート方針も大きく変える。
今までは、3~4年でメジャーアップデートを行っていたWindows OSだが、Windows 10後は、メジャーアップデートという考え方を止めて、Windows Updateを経由して、適宜新機能を追加していくことにした。つまり、Windows 10が動作するPCは、ハードウェアのサポートが終了するまで使用できることになる(ただし、各メーカーがバンドルしているアプリケーションなどは別扱い。もしかするとメーカーが提供する専用ドライバの関係で、特定のモデルはアップデートできないということも起こる可能性もある)。
このあたりは、昨年あったWindows XPのサポート終了などのドタバタ騒ぎを受けてのものかもしれない。OSのサポートを終了するのではなく、Windows Update経由でいつも新しい機能を持ったOSにアップデートしていくというコンセプトだが、これなら、Windows 10にアップデートした後は、Windowsのバージョンは1つということになる。
サードパーティにとっても、最新のWindows OSをサポートしていればよくなるため、複数のOSバージョンでの動作テストするというコストをかけなくてもよくなる。Microsoftにとっては、世の中にあるのは、常に最新のWindows OSだけしかなくなる。プレスイベントでは、Windows 10は、Windows as a Serviceの第一歩になるとMicrosoftでは話している。
なおWindows 7のメインストリームサポートはすでに2015年1月13日に終了し、延長サポートは2020年1月14日に終了する。Windows 8のメインストリームサポートは、2018年1月9日に終了し、延長サポートが2023年1月10日に終了する。2023年1月10日以降は、常に最新のWindows 10しか存在しないことになる。
このような環境になれば、個人向けにサブスクリプションモデルでのOSビジネスが可能になるだろう。Office 365では、一足先にOfficeを年間サブスクリプションで提供している。
ただ、企業においては、常に新機能が提供されるWindows 10は大きな問題が起こる。このため、Microsoftでは、Windows Enterprise版におけるアップデートは、個人向けとは別扱いになるとしている。
まず、Windows 7/8/8.1 Enterprise版は、Windows 10への1年間の無償アップデートの対象とはならない。Software Assurance(SA)ベースでのアップデートとなる(Windows 7/8/8.1 Proは1年間の無償アップデートの対象)。
さらに企業においては、SAベースで2つのブランチを提供する。Long Term Servicing Branchは、Windows 10においてセキュリティパッチのみ提供して、新機能は提供しない。Current Branch for Businessは、新機能は提供するが、個人向けWindows 10に先に提供して、トラブルがないことを確認し、互換性などのテストを行った後に新機能を提供する。このため、Current Branch for Businessは、個人版のWindows 10から数週間後、あるいは数カ月後に新機能が提供されることになる。
Long Term Servicing BranchとCurrent Branch for Businessは、異なるエディションというよりも、Windows Server Update Services(WSUS)とActive Directory(AD)のグループポリシーなどで設定されるのだろう。
クライアントOSと同じタイミングでリリースされてきたWindows Serverは、2016年リリースと発表された。Windows ServerはDockerサポートなど、大幅に機能追加が行われるため、リリースが1年ズレたのだろう。また、System Centerなども次世代のWindows Serverと同じタイミングでバージョンアップする。
このあたりは、明らかになり次第、順次レポートしていく予定だ。