特別企画

共用サーバーと専用サーバーのいいとこ取り? マネージドサーバーサービスとは

・共用サーバーと専用サーバーのいいとこ取り? マネージドサーバーサービスとは
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/special/20140924_667866.html
・会期前後の膨大なWebアクセスにもきっちり対応、Interop Tokyo公式サイトの裏側は?
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/case/20141001_669167.html
・「あっ、メール消しちゃった!」――。誤消去にも対応できる“メールアーカイブ”のススメ
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/special/20141008_670257.html
・最新版以外のアプリも使いたい! マネージドサーバーで企業の“ワガママ”に応える
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/special/20141015_671196.html
・ownCloudで“Dropboxライク”な自社専用ストレージをつくろう!
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/special/20141022_671477.html

共用サーバー、専用サーバー、IaaSの長所と短所

 ホスティングサービスでは、古くから共用(共有)サーバーと専用(専有)サーバーの2種類が提供されている。

 共用サーバーは、複数人が自分のデータを持って同時に使えるというサーバーの特性を利用し、1台のサーバー上で複数ユーザーのWebコンテンツなどを収容するサービスだ。一方、専用サーバーは、1ユーザーごとに1台のサーバーを割り当てるサービスである。

 共用サーバーは、1台のサーバーを多くのユーザーが使うため、利用料金が安い。そのかわり、ほかのユーザーが、アクセスが非常に多かったり、負荷のかかるソフトを実行したりすると、その影響をもろに受けてしまう。専用サーバーはその逆で、ほかのユーザーの影響を受けないかわりに、負荷の高くないときでもサーバー1台をまるまる専有し、利用料金が高い。

 最近では、VPS(仮想専用サーバー)やIaaS(Infrastructure as a Service)という形態のサービスも登場している。これらのサービスは、仮想化技術を使って1台の物理サーバーの中で複数台の仮想サーバーを動かしているが、仮想マシンのリソースを負荷に応じて変更させたりすることで、性能の調整を行える。OSも各種LinuxディストリビューションやBSD、Windows Serverなどさまざまな種類から選んで使える。サービスによっては、自分でOSをインストールできたり、仮想マシンイメージをアップロードして使えたりすることもある。

 IaaSはさらに、複数台構成のサーバー環境を構築するための仕組みを用意している。これにより、アクセスが多くなるときにはサーバーを増やして対応する、といった構成をとれるのだ。また、後からサーバーのスペックを変更できるのも一般的になっているし、料金体系においても、日単位や時間単位の料金体系で構成を変更できるなど、柔軟性が高い。

 こうしたVPSやIaaSは、よくも悪くも「ユーザーが自分の好きなように構成できる」のが特徴だ。ユーザーがサーバーOSの管理者権限を持ち、サーバーソフトなどを自分でインストールして組み合わせ、目的に合わせて自分で設定して利用できる。IaaSの場合はさらに、複数台の仮想サーバーを用いて、3層のWebサーバーを立てたり、複数台でスケールアウトしたりできる。価格も、時間課金をうまく使うなど、使い方によっては安く済ませることができる

 その反面、管理作業においては、サーバーやネットワークについてのスキルが必要だ。特に最近は、OSやサーバーソフトなどに脆弱性が発見されることも多く、アップデートも頻繁に行われている。それらの最新情報を追いかけ、パッチやアップデートなどの対応をしていくだけでも大変だ。それだけでなく、サーバーが正常に動いているかどうか、OSや各サーバーソフトウェアが正常に動作しているか、CPUやメモリの使用量に異常はないか、不正と思われるアクセスはないかなどを監視している必要がある。

 いざ問題が発生したときには、問題個所や原因を特定し、間違いなく対応しなくてはならない。リモートから対応できる問題ならいいが、ハードウェアの障害の場合もある。「情シス部門はない(あるいは専任担当者はいない)が、Webサイトを公開したい」というような企業には手が回らない。

スケール変更できるサーバーをおまかせ管理で

 サーバー管理のスキルや人員はない、しかしほかのユーザーの影響を受けず必要なときのための性能は確保したい、ただし最大のアクセスに合わせて専用サーバーを契約すると費用がかかってしまう。管理をおまかせにできて、ほかのユーザーの影響を受けず、リソースを自在に伸縮でき、費用をおさえたサービスはないか――。

 まだ多くはないが、そうした“すき間”のニーズに応える、マネージドサーバーと言われるようなサービスも最近では登場してきた。

 例えば、NTTスマートコネクトの「スマートコネクト マネージドサーバ」(以下、マネージドサーバ)は、そのような既存のホスティングサービスやIaaSの間にあるニーズを埋める、ユニークなサービスである。

 NTTスマートコネクトではほかに、共用や専用のホスティングサービス「スマイルサーバ」や、IaaSの「スマートコネクト VPS」などを提供している。「マネージドサーバ」は、それらのサービスと棲み分けされた新しいサービスとして、2013年にスタートした。

 「マネージドサーバ」の特徴は、「管理をおまかせにできること」と「リソースを自在に伸縮できること」だ。仮想マシンベースで提供されるなど、サーバーの作りはVPSだが、サーバーの管理は、レンタルサーバーのようにNTTスマートコネクトにまかせるようになっている。さらにはIaaSのように、1台のサーバーのリソースやサーバーの台数をユーザーが簡単に変更できる。

 サービスプランは、仮想CPU 1コア+メモリ2GBのプランA(月1万9000円、以下すべて税別価格)から、仮想CPU 8コア+メモリ16GBのプランE(月7万5000円)まで、5プラン。ディスク容量はサービスプラン共通で、標準で100GB。以降100GB単位で最大2TBまで拡張できる。別途、初期費用が1万5000円かかるものの、2週間のお試し期間も用意されているし、最低利用期間はなく、利用料金は日割りで計算される。

 なお、1台目の契約には3営業日がかかるが、一度開通してしまえば、サーバーの追加や削除は、ユーザーが自らコントロールパネルから行える。同社 クラウドビジネス部の平田賀一氏によると、「サーバーの追加は、おおむね30分もあれば完了します」という。

「スマートコネクト マネージドサーバ」のコントロールパネル
クラウドビジネス部の平田賀一氏

 また台数を増やすだけではなく、稼働しているサーバーのサービスプランを、IaaSのように後から変更して、CPUやメモリのリソースを増減させることもできる。再起動はかかるが、停止時間は1~2分程度であり、ディスクの内容は維持される。ディスク容量がサービスプランと別体系になっているのは、このサービスプラン変更ができるためだ。

 管理をおまかせにしているのでユーザーからは目に見えないが、仮想サーバーでサーバーを提供しているメリットは、この柔軟さにある。仮想サーバーのディスクイメージは仮想サーバーを動かす物理サーバーとは切り離され、専用のストレージ上に保存される。これにより、仮想サーバーのイメージをどの物理サーバーでも同じように実行できるし、スペックを変更することもできる。

 「専用サーバーでも安価なものは、『マネージドサーバ』と同じぐらいの価格のものもあります。しかし『マネージドサーバ』では、仮想サーバーのイメージが物理サーバーから切り離されているので、スペックを変更できますし、物理サーバーが故障したときでも、ほかの物理サーバーで迅速に復旧できます」(平田氏)。

レンタルサーバーの簡単さ

 柔軟さといえば、Amazon EC2に代表されるIaaSの得意分野だ。それに対する「マネージドサーバ」の特徴として平田氏は「レンタルサーバーの使いごこち、簡単さ」を挙げる。

 「Webサーバーやメールサーバーに用途を絞り込んで、それ以外の部分を意識しないようにしています。サーバーの構築や管理は当社にお任せいただけるので、『サーバーについてそんなに詳しいわけではないけど、手軽にコンテンツを公開したい』、というユーザーに向いていますね」(平田氏)。

 ユーザーは、サービス業から学校、製造業、病院などの医療機関まで、業種はさまざま。従業員数で見ると、数十人から数百人ほどの規模の、専任の情シス部門がないまたは人数が少ない企業が中心だという。こういった利用規模は、想定通りなのではないだろうか。

ドメインを作成して、その中でユーザーやメール、コンテンツを管理する

 さらに、一般的なレンタルサーバーとは異なり、スペックを途中で変更することもできるなど、柔軟性は確保されている。

 プランや台数の変更は、実際にはそれほど多くないというが、「イベント(のピーク)に合わせて変更するケースが見受けられます。また、最低利用期間がなく日割り料金で利用できることから、イベント期間だけ短期間利用するというケースもあります」と、同社クラウドビジネス部の北川彩音氏は説明する。頻繁には変更しなくても、いざというときに変更できるという柔軟性の安心感が、ユーザーに受け入れられているのだろう。

 コントロールパネルも、対象ユーザーが迷わないよう、提供サービスに特化し、簡単さを意識して開発した。アカウントの管理やコンテンツの管理などがWeb画面からできるようになっている。「スマートフォン用のコントロールパネル画面も用意してあります。自宅でスマートフォンからサーバーの負荷を確認することもできます」(平田氏)。

スマートフォンからアクセスすると、スマートフォン用の画面で表示される

 サーバーを追加して同じ役割のサーバーを増やすときに、元からあるサーバー上のコンテンツを数クリックでコピーする機能もある。これは、「マネージドサーバ」を開始した後、ユーザーの要望で追加された機能だという。

 同様に要望を受けたものとして、キャンペーン開始やサイトリニューアルなどにあわせ、指定した時間にコンテンツを切り替える機能も近日提供予定とのこと。このように、ユーザーのニーズを受けて、日々サービスは強化されている。

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 IaaSのような拡張性を、レンタルサーバーのようなおまかせ管理で利用できる「マネージドサーバ」。レンタルサーバーともIaaSともまた違った使い方になるサービスだが、イベントや規模拡大など将来の規模が読めないサイトを、サーバー管理の手間をかけずに公開するような用途に向いたサービスといえるだろう。

高橋 正和