事例紹介

会期前後の膨大なWebアクセスにもきっちり対応、Interop Tokyo公式サイトの裏側は?

 幕張メッセで毎年開かれるネットワーク技術のイベント「Interop Tokyo」。今年の6月に開催された「Interop Tokyo 2014」は入場者数13万人以上を集めるなど、毎年盛況の中で行われている。

 ネットワーク技術者が多く集まるイベントであるため、展示会場やカンファレンスなどの情報を、事前または会場でWebサイトから調べる来場者も多い、しかし、年1回だけのイベントであることから、ピーク時に合わせてサイトを運営していると、非常に無駄が大きくなってしまう。

 かつては、会期にWebサイトへのアクセスが集中してダウンすることもあったというが、現在、Interop Tokyoを開催する株式会社ナノオプト・メディアでは、会期付近だけサーバーを増強することによって対応し、成果を上げている。

Interop Tokyo 2014のWebサイト

イベントの際の短期間のみサーバーを増強

 ナノオプト・メディアでは、2006年から2012年まで、会期中やその前後のアクセス集中時期に物理専用のレンタルサーバーを利用し、ピーク時のトラフィックに対処してきた。それ以前には、アクセスが集中した負荷によってWebサーバーがダウンすることもあったそうだが、同サービスを利用するようになってからは、安定した運用を実現していたという。

 しかし同社では翌2013年から、利用するサーバーを新たなサービスに切り替えた。
新しい仮想専用タイプのマネージドサーバー(NTTスマートコネクトが同年に開始したサービス「スマートコネクト マネージドサーバ」(以下、マネージドサーバ))を使い始めている。

 物理専用サーバーでもきちんとトラフィックに対処できていたのだから、そのままでも機能的には問題がない。しかし、より安く、手軽に利用したいというニーズは常にあり、新サービスがそのニーズに合っていたことが、サービスの切り替えを決断した大きな理由だった。

 「マネージドサーバ」は、仕組みとしては仮想サーバーを用いた一種のVPSだ。ただし名前のとおり、運用管理をサービス事業者におまかせできる"マネージドサーバー"となっている。

 自分でVPSなどのサーバーを運用管理するには、OSやWebサーバーソフト、PHPなどのミドルウェアをインストールした上で、定期的にセキュリティ情報を集めてアップデートを実施するなど、管理作業とそのスキルが必要になる。それに対して「マネージドサーバ」では、運用管理をサービス事業者にまかせてレンタルサーバーのように使えるため、利用側はコンテンツに注力できるのだ。

マネージドサーバ 管理画面のイメージ

 ナノオプト・メディアでは、Interop Tokyo用に「マネージドサーバ」で複数のWebサーバーを構築し、ロードバランサーでそれらのサーバーを束ねて利用。2013年は5台、2014年には4台のサーバーを利用し、会期中の高負荷にもかかわらず、安定した環境を提供できたという。

複数のWebサーバーを構築し、ロードバランサーでアクセスを分散させている。2014年は4台のサーバーを利用した

 さらに最低利用期間はなく、利用料金は日割りで計算される。そのため、特定の期間だけ利用したり、サーバーを増やしたりといったことがしやすい。

 「日割りで利用できることを生かして、イベントが終わった翌営業日ごろにはサーバー解約されていました。まさにわれわれが想定しているとおりの使い方でした」とNTTスマートコネクトの平田賀一氏は説明する。

 同じく北川彩音氏も「物理専用のレンタルサーバーを使っていた際は1カ月単位の課金でしたが、『マネージドサーバ』を利用することで日割りになり、だいぶコストを削減していただきました」と語る。

NTTスマートコネクトの北川彩音氏

レンタルサーバーの使いごこちで複数台構成を利用

 このようにナノオプト・メディアは、レンタルサーバーを利用してきた実績を元に、より目的に合ったサービスとして「マネージドサーバ」を採用した。「ロードバランサーを使った複数台構成で安定して動いている点が評価されました」と平田氏。

 また、Interop Tokyo 2014のサイトでは、コンテンツを簡単に複数台へコピーするコンテンツ同期機能も使っている。ロードバランサーを利用中にコンテンツを更新する場合は、1台のサーバーを更新するだけで、管理画面から簡単に全サーバーのコンテンツを更新できるため、こういったケースには適しているという。

 「これ以外に評価していただいている点としては、レンタルサーバーとしての使いごこちを作り込んでいることもあります。契約したらすぐにコンテンツをアップロードして使えるという、"手間のかからなさ"が受け入れられたと思います。IaaSサービスで簡単にできるじゃないか、というお話もあるでしょうが、IaaSには特有の"取っつきにくさ"があり、誰でもすぐにというわけにはいかないですから」(平田氏)。

NTTスマートコネクトの平田賀一氏

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 Interop Tokyoサイトのように、1年のうち1~2週間だけ大きなアクセスがあるような場合には、ピークに合わせた設備を1年中維持するのは現実的ではない。また、専任の情シス担当者のいない企業では、サーバーのセットアップや運用管理、IaaSの操作習得などの工数もかけづらい。

 ナノオプト・メディアのような企業であれば、技術的には、自前でサーバーを運用することは可能だろう。しかし、Webサーバーとしての利用を想定して提供されている上、事業者側に運用を任せられる「マネージドサーバ」を利用すれば、面倒な作業を省き、ユーザーは本業に集中することが可能だ。

 しかも、ロードバランサーによって複数台のサーバーへアクセスを分散させることで、アクセス数が多いWebサイトでも安定した運用な可能。アクセスが予想以上に集中した場合でも、サーバーのスペックを上げたり、負荷分散対象のサーバーを追加したりすることで、すぐに対応できる強みもある。

 典型的な使い方として、イベントやキャンペーンのサイトを運営するケースとは、非常に親和性が高いといえるだろう。

高橋 正和