特別企画

「あっ、メール消しちゃった!」――。誤消去にも対応できる“メールアーカイブ”のススメ

関税法改正で輸出入のメール保存が義務に

 インターネットのメールは、メールサーバーを経由して送受信されるものの、通常は各個人への配送が終わると、受信した個人のところにしか残らなくなる。そこで、企業が送受信するすべてのメールを保存し、必要な時に目的のメールを検索するシステムが「メールアーカイブ」だ。

 企業がインターネットのメールを業務に使っている中で、数々のメールはまさに業務の記録といえる。米国ではSOX法などの法令により、メールの保存が義務づけられているし、日本でもこうしたコンプライアンスや、情報漏えいなどの不正行為を防止する内部統制、あるいは訴訟対策のために、メールアーカイブを導入する企業が増えている。

 また国内では、2012年の関税法改正により、輸出入にかかわる取引の関係書類をメールでやり取りした場合、そのメールなどを5年間保存することが義務づけられた。保存する方法は問わないものの、個人のPCに保存していたのでは、誤ってメールを消去してしまったり、PCが故障して消えてしまったり、といったリスクがある。そのため、間違いなく保存し続けるための手段として、メールアーカイブが注目されるようになっている。

メールアーカイブは、メールサーバーを経由して送受信されるメールをまるごと保存するとともに、後から必要に応じて検索できるようにするシステムだ

メールアーカイブシステムの構築はたいへん?

 一見、輸出入など自社は関係ないと思われるかもしれないが、海外と手軽に取引できるようになった現在、実は輸出入に携わる企業はかなり多いので、たくさんの企業がこの規制の対象となる。そして、そうした企業の中には、大企業だけでなく小規模な企業もたくさん含まれている。

 メールアーカイブ自体は以前から存在する製品ジャンルのため、エアーの「WISE Audit」、サイバーソリューションズの「MailBase」、デジタルアーツの「m-FILTER」など、さまざまな製品が提供されている。

 しかし従業員数十人程度の企業では、メールサーバーやメールアーカイブを自前で構築・運用するのは難しい。また、メールサーバーやメールアーカイブを単体で提供するサービスもあるが、それらを組み合わせるのにも知識がいる。

 そのため、小規模な企業がメールアーカイブを導入するには、メールアーカイブのサービスが付いたメールサーバーのサービスが向いているだろう。

 もちろん、メールサーバーを自社やIaaSで構築してもいいが、サーバーやOSなどの面倒な管理作業を事業者側に任せてしまう、マネージドサーバーのサービスを利用するのも、専任のIT管理者がいないような小規模な企業にとってはメリットがある。

 マネージドサーバーには、例えば、NTTスマートコネクトの「スマートコネクト マネージドサーバ」(以下、マネージドサーバ)がある。このサービスでは、サーバーやOSなどの管理は事業者に任せられるほか、Webサーバーやメールサーバーでの利用を想定して作り込んでいるため、簡単に始められるメリットもあるという。

 このマネージドサーバでは今年の7月に、初期費用2万円(税別、以下価格はすべて同じ)、月額3万円から利用できるメールアーカイブのオプションサービスを開始した(マネージドサーバ自体の費用は別途必要)。ユーザーが管理画面から申し込むと、6営業日で自動的に保存が開始され、検索などの操作が可能になる。

キーワード検索の画面イメージ
相関関係検索の画面イメージ

 メールアーカイブのシステムには、実績があるエアーの「WISE Audit」を採用した。事業者側が特にメールアーカイブのノウハウを持っているわけでないため、サードパーティの製品を利用する方が合理的といえる。

 その点WISE Auditは、製品リリースから10年近くが経過しており、大手企業や同様のサービスで、300件以上の導入実績がある。メールアーカイブは長期もわたってサービスを提供する必要があるだけに、ベンダーが力を入れており、製品が突然なくなったりしないことが重要になる。そういった面でも、WISE Auditなら問題はないだろう。

アカウント数には課金されない!

 マネージドサーバのアーカイブ機能では、アカウント数が無制限であることが特徴といえる。アーカイブ製品・サービスでは、一般的に、アカウント数で課金されることが多く、例えば、それほどメールはやり取りしないのにメールアカウントが100ある、といったケースでは料金が高くなってしまう。さらに異動や退職で不要になったアカウントであっても、アーカイブを残すためには課金されるケースもあるという。しかしマネージドサーバの場合は、容量ごとの課金のため、こうしたアカウント数が多い場合に適している。これは、ほかのサービスにはないポイントだ。もちろん、容量が足りない時には100GB単位での追加を行える(100GBごとに初期費用5000円/作業、月額6000円)。

 保存期間は7年間と長く、関税法による5年の規定にも対応可能。7年あれば、ほかの多くの規制にも対応できる。

 なお、実際に利用しているユーザーからの評価はどうなのかを、NTTスマートコネクトに聞いてみた。「まだリリースしてからは間がありませんが、すでに数百アカウント規模の企業の利用事例があります。このお客さまの場合は、もともとオンプレミスでメールアーカイブを構築していたのですが、機器のリプレースのタイミングで移行されました。機器を新しく調達すると時間がかかりますが、マネージドサーバならば6営業日で導入でき、運用も任せられるということで選ばれたそうです」(同社 平田賀一氏)。

平田賀一氏

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 Webサーバーもメールサーバーも運用を任せられるマネージドサーバーで、自分たちで作業することなく1週間程度でメールアーカイブが利用できるサービス。情報システム専任者がおらず海外取引をする小さな企業が、メールアーカイブからWebサイトまで利用するには、ありがたいサービスといえるだろう。

高橋 正和