特別企画

ショッカーに託したサイボウズ Office普及への思い

 今年のエイプリールフール、サイボウズは仮面ライダーに登場するショッカーが同社のクラウドグループウェア「サイボウズ Office on cybozu.com」を導入検討する特別サイト「ショッカーwithサイボウズ Office on cybouzu.com」を公開。街頭では、同社の青野慶久社長がショッカーに誘拐される様子をスクープした号外まで配布した。

 サイトは大好評で、目標だった月間6万PV(ページビュー)を大きく上回る28万1000PV、16万ユニークユーザーを記録。ビジネス向けプロモーションサイトとしては異例ともいえる大きな成果を得た。

 また、この企画はSNSでも好評で、Facebookの「いいね」は最初の2日間で2000件を超えたほか、Twitterでのツイート数も600件を超す反響があり、しかもネガティブな評価はほぼないという結果となった。

 話題になったこのサイト、一見すると笑いを誘うエイプリールフールのお遊びに思えるが、内容をよく吟味するとその印象は一変する。

 かなりまじめに、ショッカーが「サイボウズ Office on cybouzu.com」を導入することで、どんなメリットがあるのかを提案している(PDFファイルが開きます)のだが、少し見方を変えると、多くの中小企業にとっても参考になる内容になっているからだ。

 サイボウズがショッカーというキャラクターを活用し、訴えたいことはなんだったのか。サイボウズの内部に潜入し、その秘密を探った。

ショッカーの結束力はグループウェアあってこそ?

グループウェアによって綿密な打ち合わせ、スケジュール管理が行われているからこそ、毎回変わる複雑な作戦にも対応可能なのだ

 ご存じの通りショッカーは、仮面ライダーに登場する、世界征服をたくらむ悪の組織である。そのショッカーの戦闘員が、右手を挙げて「イー!」とおなじみのあいさつをする姿を、日本人であれば一度は見たことがあるのではないか。

 サイボウズ側がショッカーに接触した結果、驚くべきことが明らかになった。ショッカー戦闘員から、「仮面ライダー登場以降、内部のチームワークに悩んでいた」というのだ。

 ショッカー戦闘員の直属の上司は「怪人」だが、蜘蛛男、蜂女など、強力な怪人が、次々と仮面ライダーに倒されてしまうことが起きる。つまり、ショッカー戦闘員にとっては、直属の上司が次々と替わってしまうことになる。

 仮面ライダー登場以前は、ショッカー戦闘員は一人の怪人に長期間仕える体制となっていた。怪人とは綿密な信頼関係が生まれ、戦闘員同士にも強力なチームワークができあがっていたのだが、その関係が、仮面ライダーの登場により一変してしまった。

 新たに生み出される怪人は、それぞれの得意分野に合わせた作戦を用意する。ある怪人は街頭が作戦の舞台だったのに、別の怪人は山奥が作戦の舞台となる。怪人によって変わる作戦に、ショッカー戦闘員はその度にきちんと付き合っていかなければならない。遅刻することなく毎回異なる集合場所に集合し、大胆に変わる作戦に合わせて行動しなければならないのだ。

 そこでサイボウズではショッカー戦闘員に対し、グループウェアとはどんなものかを説明し、グループウェアがチームワーク強化、一人一人の生産性向上、仕事のスピードアップ、情報資産をデータベース化することを紹介。「サイボウズ Office on cybozu.com」導入による現状の課題解決を提案(PDFファイルが開きます)した。

 サイボウズ Office on cybozu.comは、誰でも使えるインターフェイスを持ち、パソコンだけでなくスマートフォン、タブレットを利用可能。簡単にアプリケーションを作成できる簡易データベース機能も備え、初期費用は不要で一人あたり500円からという低価格で利用できる。

 この特長をふまえ、ショッカーが抱える問題がグループウェアのスケジュール、ファイル管理、施設予約、ToDoリスト、ワークフロー、メッセージ、電話メモといった機能を利用することで解決できることを、ひとつひとつ、ケース別に提案したのだが、その結果、無事に採用され、ショッカーが3000社目の導入組織になったのだという。

作戦行動には、グループウェアを利用した綿密な打ち合わせが欠かせない
スマートフォンやタブレットから利用できるので、外出先でもコミュニケーションが可能だ

ボウズマン複数化計画が話の発端

ショッカーによるサイボウズ採用を報じた“号外”。街頭などで配布され、人気を博した

 実は、ショッカーへのグループウェア導入提案が実現するきっかけは、サイボウズのビジネスマーケティング本部 ソーシャルコミュニケーション部 cybozu.comプロモーション担当の杉山浩史氏が発した、こんな疑問からだった。

 「サイボウズのオリジナルキャラクター、ボウズマンは地球上のビジネスパーソンの危機を救うため日夜奔走しているイントラの星からの使者だが、なぜ、一人で活動しているのだろう?サイボウズ製品は一人ではなく、チームで仕事をする際に大きな強みを発揮するはずなのに…」。

 杉山氏はグループウェアのチームに途中から加わっているのだが、こうした疑問は、やはり外から中に入ってきたがゆえの視点だったようだ。

 これまで、ボウズマンが一人で活動することに疑問を抱いていなかった社内のスタッフからは、驚愕と賛同の声があがった。同じ、ビジネスマーケティング本部でプロダクトマネージャーを務める栗山圭太氏もその一人だった。

 「まさに指摘通りだと思いました。グループウェアは複数人数で利用してこそメリットがあるのに、ボウズマンは一人ですから…」。

 そこでボウズマンを複数人数で展開するプロモーションが計画されたが、そこには重大な問題があった。

 「ボウズマンの認知度がそれほど高くなかったのです。ボウズマンを使ったプロモーションを効果的に行うためには、ボウズマン自身の認知度を上げなければならない。サイボウズ製品をプロモーションすることが目的であるわけですが、その前にオリジナルキャラクターの認知度を上げる活動をしなければならない…。余分な作業が必要になる分、効率が悪いのではないか?という声があがったのです」(栗山氏)。

 そこで、こうしたプロモーション計画を、サイボウズのCBO(チーフ・ブランディング・オフィサー)で、テレビ番組などのプロデューサーでもある、おちまさと氏に相談したところ、「その企画をもっと有名なキャラクター、例えばショッカーで展開してはどうだろうか?」という提案があったのだという。

 最初に紹介した通り、ショッカーは多くの日本人が知っており、しょっちゅう上司が替わって情報共有が難しく、まさにグループウェアによる問題改善をしやすい組織である。

 おち氏からは、「これだけ環境が悪い中、現場の戦闘員たちがきちんとチームワークを保ち、情報共有ができているのはショッカーがグループウェアを導入しているからに違いない。ショッカーがグループウェアをどう利用しているのか、見たくないか?」という声がかかった。

 「その意見に賛同する声が社内からあがり、ショッカーに対してサイボウズ Office on cybozu.comの導入提案計画が始動することとなったのです」(栗山氏)。

クラウドが生んだ"新しい顧客層"に使ってもらうために

サイボウズの栗山圭太氏

 前述したように、ショッカーへの導入提案は、グループウェアとはどんなものかを説明するところから始まり、サイボウズ Office on cybozu.comの基本的な特長を説明する内容となっている。グループウェアという製品ジャンルも、サイボウズ Officeという製品も、決して新しいものではない。であるのに、基本的な機能からあらためて紹介したのはなぜなのか。

 「グループウェアというジャンルは誕生してから20年になります。改めてどんな機能があるのか、基本を説明する必要はないと思われるかもしれません。しかし、クラウド化によって新しい需要が創出されたのです。10人程度の企業で利用することを考えた場合、パッケージ版ではソフトウェア、サーバーハードウェアや初期導入作業の費用などを合わせると60万円程度かかり、翌年からは年に保守費用などで5〜6万円必要となります。それに対しクラウド版は、セットアップ費用も必要とせず、毎月5000円から6000円程度で利用できますし、ユーザーの増減も自由です。これまで、コストがネックとなってターゲット外となっていたお客さまが、新たにターゲットとなり、そういうお客さまにグループウェアとはどんなものなのか知ってもらう必要が出たのです」(栗山氏)。

 2年前にサイボウズでは、青野慶久社長自らが、クラウドである「cybozu.com」を強く訴求する戦略を打ち出した。その結果、新規顧客は5〜6倍と劇的に増加し、追加ユーザーを増やしたいという企業も増加した。

 これは新たなターゲットに向けて、サイボウズが徹底的に訴求した成果であるが、サイボウズの試算では、日本の中小企業580万社のうち、グループウェア導入のメリットがあると考えられる企業は150万社存在する。そのうち15万社程度は何らかのグループウェアを導入しているが、130万社以上はまだ導入しておらず、大きな潜在市場になっているのだという。

 これまでも地道な取り組みとして、中小企業向けのコンサルティングを実施している企業、商工会議所などを介したアピール活動を行ってきたが、それだけでは伝わらない層に向けてグループウェアをアピールしていく上では、ショッカーへの導入効果の説明は、目を引き、かつわかりやすいという点で大きな効果があるというわけだ。

 実際に、ショッカーの導入紹介サイトを見てお試し版を利用する企業は、通常よりも2割増加したという。

 こうした実績をふまえ、杉山氏は「クラウドによってグループウェア市場が拡大したことを実感しています。当社は日本のお客さまにあったグループウェアを提供し、しかも実績を持っています。日本の中小企業の皆さまに適したグループウェアとして、これまでグループウェア導入を検討してこなかったお客さまにぜひ一度、試していただきたい」とアピールしている。

より使いやすいグループウェアを目指し、継続的な改善を

最新版のサイボウズ Office 9.3では、「いいね!」以外のオリジナルコメントも表現可能になった

 しかしサイボウズ側の取り組みは、それだけでも終わらない。機能面でも、いかにグループウェアを使って効果を出してもらうか、という点を中心として、強化を続けている。あくまでもショッカーは興味を持ってもらうための入り口でしかなく、製品自体に良さがないと、本当のユーザーにはなってもらえないからだ。

 例えば、サイボウズ Officeでは、ボタンを押すことで投稿されたメッセージに「いいね!」をつける機能を搭載している。よく、Facebookの真似をしたのか?と言われるそうだが、この機能を開発した意図はまったく異なるのだという。

 グループウェアを導入しても、社内の一部だけが利用しているだけでは定着しないし、情報の発信者が多くないと、本当の価値が生まれてこない。かといって、ユーザー全員に「何か情報を書き込め」と言ったところで、書き込むことへのハードルは高い。すぐに全員が書き込むようにはならないが、「いいね!」ボタンを押すだけであれば、参加するのはそう難しいことではない。まず、ボタンを押すところからグループウェアに参加する意識を養おう、というのがこの機能の狙いなのだ。

 さらに4月から提供されている最新版のサイボウズ Office 9.3では、「いいね!」ボタンの表現を自由に変えられるようにした。これによって、例えば「了解しました」といったビジネス表現へ変更することで、より押しやすくすることができる。もちろん、自由な文言を使うこともでき、ショッカーには、「イー!」と変更して利用することを提案しているのだという。ショッカー戦闘員なら、これ以上押しやすい表現は存在しないだろう。

 また「Cybozu Advance」は、サイボウズの研究機関サイボウズ・ラボが開発した新しいスケジューラーで、ドラッグ&ドロップ操作によって予定の変更、移動ができる。これも、Googleカレンダーなどで慣れ親しんでいる人が多い動作であり、エンドユーザーの生産性を上げるのに役立つのだという。

 こうした、より使いやすく、より継続して使ってもらうための工夫を随所に行うことで、グループウェアをもっともっと普及させようとしている。サイボウズの取り組みには、今後も注目していきたい。

(三浦 優子)