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NEC、パブリック事業の成長戦略を発表 マイナンバーとパブリックセーフティに注力

新事業創出にも意欲

 日本電気株式会社(以下、NEC)は29日、パブリック事業の現況と今後の事業展開について記者説明会を開催した。説明会で、NEC 執行役員常務の西村知典氏は、当面のパブリック事業の成長ドライバとして、マイナンバー関連事業およびパブリックセーフティ事業に注力するとともに、中長期的成長に向けて新事業の創出を図っていく方針を示した。

 「当社は、『社会価値創造型企業』への変革を進める中で、社会ソリューション事業に力を入れて取り組んでいる。社会ソリューション事業は、『パブリック』、『テレコムキャリア』、『エンタープライズ』、『スマートエネルギー』の4つの事業領域で構成され、『パブリック』は2014年度の売上高構成比で28%を占めている」と、西村氏はパブリック事業の位置づけを説明。「パブリック事業では、官公庁関係から自治体、教育機関、医療機関、交通機関、金融機関、放送・メディアまで、インフラ領域を中心にICTを活用した社会ソリューションを幅広く提供している。業績は、年平均10%以上の成長性を維持しており、2014年度には中期経営計画目標売上の7800億円を1年前倒しで達成した」と、パブリック事業が好調に推移していることを強調した。

NEC 執行役員常務の西村知典氏
パブリック事業の業績推移

 NECが強みをもつ領域としては、「行政サービス」、「防衛」、「パブリックセーフティ」、「交通、水」、「放送」を挙げ、「特に『行政サービス』での地方公共団体情報システム機構からのマイナンバー中間サーバー・プラットフォームの獲得、『防衛』での2014年度補正予算における野外通信システムの獲得、さらには『パブリックセーフティ』において消防無線デジタル化特需を確実に刈り取り、売上計上できたことが中期経営計画の前倒し達成に大きく貢献した」としている。

 国内パブリックICT市場の動向については、「マイナンバー特需やセキュリティ需要が市場をけん引し、2015年度から2018年度まで、年率約2%の安定成長を見込んでいる」との見解を述べた。その中で、NECの今後の事業展開としては、「パブリック領域では、現在もセキュリティ事故が頻発しており、法整備をともなうセキュリティニーズはますます増大すると予測している。当社では、こうした背景を踏まえながら、中長期的な大型需要のトレンドを確実に捉え、成長の波に乗り続けていく。具体的には、マイナンバーとパブリックセーフティの2つの領域に力を注いでいく」との方針を明らかにした。

パブリック事業の中長期での方向性

 マイナンバー領域では、2014年から2016年の基盤インフラ整備市場規模3600億円(2015年7月時点)のうち、マイナンバー関連システム(セキュリティ含む)で1000億円の売上獲得を目指す考えで、「当社は、政府系基幹システム構築プロジェクトに参画し、中間サーバー・プラットフォームのノウハウを蓄積している。一方で、地方自治体の基幹系システム構築でも豊富な実績をもっている。この強みを生かし、マイナンバー領域において、政府系基盤システムの構築ノウハウを全国の地方自治体に展開していく」という。

 具体的には、マイナンバー制度にともなう地方公共団体のセキュリティ対策として、同社の先進技術を生かしたサイバーセキュリティソリューションや生体認証ソリューションを提供していく。また、同社では、企業向けマイナンバー関連セミナーを約2500社(2015年7月現在)に実施しており、今後も民間企業へのマイナンバーの普及促進にも貢献していくとしている。

マイナンバー市場におけるNECの強み

 パブリックセーフティ領域では、国内外での強みを生かし、2015年度で約1100億円の売上高を目指す計画。「IoTの進展によって、社会インフラの安定稼働を維持するためには、実空間(フィジカル)とサイバー空間を合わせて統合的に守ることが重要になる。当社は、フィジカルセキュリティとサイバーセキュリティの双方で強みをもっており、約30年で世界約40カ国以上に500システム以上の認証システムを導入するなど、多くの国と地域でパブリックセーフティ事業を展開している。2015年度には、パブリックセーフティ事業で売上高約1100億円を達成し、その後も市場成長率を上回るペースで事業成長を目指す」と意欲を見せた。

 中長期的なパブリック事業成長に向けた戦略としては、“モノ(技術)からコト(新たな価値創造)へのアプローチ”と“業務・運用・社会課題への深い理解から始める新事業創出”の2つを掲げ、「新たな社会ソリューション事業の創出を目指し、その領域のノウハウをもつパートナーと連携してさまざまな実証事業を行っていく」という。

 具体的な取り組みについて西村氏は、「“モノからコトへのアプローチ”では、例えば、NECのハイブリッドセンサー(振動・水圧・温度)と業界ベンダーとのパートナリングを活用することで『水ICT業界(水AMI)』に参入する。また、センサーデータに基づく故障予兆検知システムを入り口に、獲得した知識から業務を理解して業務改善を支援するコンサルティングサービスを提供する。一方、“業務・運用・社会課題への深い理解から始める新事業創出”については、医療・ヘルスケア領域において、医療だけにとどまらないトータルケアをゴールに置き、その実現に必要な医療支援サービスをパートナーとの連携により創出する。また、金融領域では、より経済が活性化した豊かな社会の実現を目指し、新たな金融サービスを金融機関などとのパートナリングにより創出していく」と、事例を挙げながら説明した。

唐沢 正和