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スケールアウトストレージを手掛ける米Scality、日本法人を設立

すでにニフティや国内大手携帯キャリア2社が採用済み

スキャリティ・ジャパン 代表取締役に就任した江尾浩昌氏

 ソフトウェアベースのスケールアウトストレージ製品を提供する米Scalityは5日、日本法人としてスキャリティ・ジャパン株式会社を設立した。代表取締役には、スケールアウトNAS製品のIsilon Systems(EMCが買収)や超高速フラッシュストレージのFusion-io(SanDiskが買収)などの国内トップを歴任した、江尾浩昌氏が就任する。

 Scalityの製品「Scality RING」は、汎用x86サーバーによるクラスタでネットワークストレージを構成するソフトウェア製品だ。ノードを増やすことで容量を増やせるスケーラビリティや、冗長化などが特徴となる。クライアントからは、オブジェクトストレージまたはファイルサーバーとして、NFS、REST、OpenStack Swift、OpenStack Cinderといったプロトコルでアクセスする。

 同種のソフトウェアは最近いくつか登場しているが、その中でも、ペタバイト級を含む導入実績を豊富に積んでいるのが特徴だ。米国ロスアラモス国立研究所における500ペタバイト級の事例や、世界第2位の動画ストリーミングサービス「Dailymotion」における15ペタバイト級の事例などが公表されている。

 国内でもすでに、ニフティ株式会社での導入が2012年に発表されているほか、大手携帯キャリア2社などで採用されているという。なお、日本での売上は全体の15%を占める。Scality社がもともとWebメール向けから始まったことや、メッセージングソフトウェア企業とパートナーシップを結んでいることもあり、日本では特にメールアーカイブでの導入が多い。

 Scalityは2009年設立。サンフランシスコの本社のほか、ワシントンDCとパリに拠点を持ち、東京がそれに加わった。2014年の実績では、米国市場で250%以上、ヨーロッパ市場で300%以上、日本市場で500%以上の成長だったという。

Scality RINGの導入企業。日本では大手携帯キャリアやニフティが採用
Scalityの概要。COOのメナード氏によると「international peopleが集まっている」という

パートナー経由で販売、日本語サポートも用意

 国内での販売は、パートナー経由となる。すでにメッセージングソフトウェアのOpenwave Messaging、Zimbra、TwoFiveや、ハードウェアのHP、Seagateとの間で、グローバルなパートナーとして提携している。国内でも、日本法人設立にあわせて株式会社ブロードバンドタワー(BBT)がディストリビューター契約を締結したことが発表された。

 ライセンス体系としては、製品にバンドルされてそのライフサイクルによるもの、永続的なもの、1年や2年といった期限のあるものの3種類があるという。

 また新たに、重度障害については日本語窓口を新設し、平日の9時から17時まで受け付ける。それ以外の時間や軽度障害については、国外コールセンターで24時間対応する。2015年度中に24時間の日本語対応を目指すという。なお、コアサポートとコアエンジニアリングはフランスに置かれている。

 同日に開かれた記者会見で、代表取締役の江尾氏は、「外資系企業では、日本にあるのは営業部門だけで、サポートやマーケティングは本社で、ということもある。しかしスキャリティ・ジャパンでは、必要な部門として営業・SE・市場開発兼マーケティングの部門を最初から設置した」と語った。また、「サポートはユーザー数が増えてから、となりがちだが、アーリーアダプターへのサポートが大事なので、強化した」と説明した。

スキャリティ・ジャパン株式会社の概要
Scalityのパートナー。新たにブロードバンドタワーが加わった。
国内サポート体制の強化
グローバルでパートナーを強化する「ATLAS partner program」。日本でも4月から開始

ペタバイト級以上での実績

 Scality COOのアーワン・メナード(Erwan Menard)氏も、Scality RINGの特徴を説明した。

 まず、汎用x86サーバーで動くことによる、ハードウェア選択の柔軟性とコスト削減を挙げ、「専用のストレージアプライアンスに比べて、TCOをCAPEXもOPEXも30~50%削減する」と主張した。

 また、ペタバイトにまでリニアに拡張できる実績のあるスケーラビリティを挙げた。江尾氏も「これまでいろいろなソリューションがあったが、われわれはペタバイト級以上でちゃんと稼働してコストメリットを出せる実績がある」と述べた。

 そのほかメナード氏は、「特に日本の企業では可用性が重視される」として、可用性などの耐障害性により「ダウンタイムゼロを実現できる」と語った。

 Scality RINGの適用分野としては、Daylymotionなどの「Web&クラウド」、政府機関を含む「アクティブアーカイブ」、メディア企業などの「コンテンツディストリビューション」、HPCの「分散コンピューティング」、企業の「エンタープライズクラウド」の5つを説明。日本ではメールアーカイブが採用されてビジネスを立ち上げることができたが、これからグローバルで強いWebなどの分野も強化していくと語った。

 メナード氏は最後に、「日本でSoftware Designed Storageのリーダーになる」と意気込みを見せた。

Scality COO アーワン・メナード(Erwan Menard)氏
Scality RINGの5つの適用分野。日本ではこれからWebを強化するという

パートナーのビジネスを紹介

 記者会見には、グローバルのハードウェアパートナーであるHPとSeagate、さらに日本からパートナーに参加したブロードバンドタワーも登場し、祝辞を述べるとともに、自社とScalityのパートナービジネスを紹介した。

日本ヒューレットパッカード株式会社 HPサーバー製品統括本部 マーケティング本部 本部長 宮本義敬氏
オブジェクトストレージ向けに作られたSL4500シリーズと、Scalityとの協業
日本シーゲイト株式会社 代表取締役社長 新妻太氏
SeagateのネットワークストレージSeagate KineticとScalityの組み合わせ
株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長 CEO 藤原洋氏
2次代理店経由で販売するほか、自社クラウドサービスで提供する

高橋 正和