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要介護者情報を関係者で共有、いざというときの迅速対処へ~茨城・笠間市

 茨城県笠間市が地域包括ケアシステムの実現に向け、要介護者に関する情報を笠間市や要介護者の家族、地域の介護事業者や医療機関がタブレット端末などでリアルタイムに閲覧・共有できるクラウド型システムを構築、10月から運用を開始した。要介護者への介護・医療サービスにおける業務効率化やサービス品質の向上を図る。

 「介護健診ネットワーク」と呼ばれるシステムで、日立製作所、日立産業制御ソリューションズなどが2013年7月から2014年3月まで笠間市で実施した試験導入を経て、本格運用が開始された。

 従来、笠間市や地域の介護事業者、医療機関、救急隊、薬局などの介護・医療関係者は、要介護者の緊急連絡先や要介護認定状況、健康診断結果、ケアプラン、お薬手帳、さらには現在の病状といった情報を、個々のデータベースに蓄積し把握・利用していた。「介護健診ネットワーク」では、これらの情報を高いセキュリティを実現したクラウド上に集約し、関係者がインターネット経由でリアルタイムに共有・閲覧できる。

 例えば、これまでケアマネジャーなどの介護事業者が、笠間市の窓口や要介護者の自宅に出向いて入手する必要があった要介護認定に関わる資料などを、介護事業者自身のPCやタブレット端末から入手可能となる。また、要介護者の容態が悪化して救急車が出動する際に、救急隊員が速やかに対象者のこれまでの健康状態や介護状況、緊急連絡先などの基礎情報を把握した上で、病院や家族へ迅速かつ正確に連絡することが可能となる。

「介護健診ネットワーク」の概要図

 2014年10月からは、笠間市と家族をはじめ、社会福祉法人笠間市社会福祉協議会、笠間市内の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などとの情報共有を開始しており、2014年度中に救急隊などとの情報共有も順次開始する予定という。

 笠間市は今後、市内全域の介護・医療関係者を対象に「介護健診ネットワーク」の導入を推進し、利用機関数を拡大していくとともに、同システムに蓄積される要介護者に関するケアプランや介護・医療関係者のサービス提供実績・計画などの情報を活用して、要介護者への新たなサービスも創り出していく考え。

 日立は、笠間市での実績を基に「地域包括ケア支援自治体クラウドソリューション」を開発し、2014年7月から全国の自治体向けに提供している。

川島 弘之