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宮城・石巻市で「高齢者健康・生活支援モデル」実証へ、富士通ら5社

 富士通株式会社は、宮城県石巻市において、高齢者の生活全体を地域で支えることでQOL(Quality of Life)向上を目指す「高齢者健康・生活支援モデル」の実証を開始する。クラウドサービスを活用した情報連携基盤を構築し、医療・介護および生活支援サービス関係者間で、高齢者の健康や生活を支えることを目的とした情報共有・情報連携のあるべき姿を検証する。実施期間は2013年11月~2014年3月末。実施地域は宮城県石巻市。高齢者約70名が対象。

 総務省がスマートプラチナ社会(全ての世代がイノベーションの恩恵を受け、 いきいきと活動できる超高齢社会)の実現に向けて実施する「情報連携活用基盤を活用した高齢者在宅医療・生活支援モデルの実証実験」を同社が受託して行うもの。医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニック石巻、介護事業者のぱんぷきん株式会社、介護旅行を提案する株式会社SPI あ・える倶楽部、ソフトバンクモバイル株式会社の協力の下で実施される。

高齢者の生活を支える関係者間で情報共有

 目的は、医療・介護・生活支援サービスなど高齢者の生活を支える関係者間で共有すべき情報項目を検討するとともに、情報連携基盤における必要機能を確立し、それらを利用した効果・課題を検証すること。

 超高齢化社会で在宅医療・介護を中心とした地域医療体制の構築が求められる中、富士通と祐ホームクリニック石巻は、他職種の関係者(在宅医療医師・訪問薬剤師・訪問看護師・ケアマネジャー・ホームヘルパーなど)における情報連携について検討・検証を重ね、2013年1月に「高齢者ケアクラウド」として富士通がサービス化した実績がある。

 今後、この連携の輪を他業種にも広げ、高齢者の生活を地域全体で支え合うためには、「生活支援サービスなどの民間事業者も含めた社会的ネットワークづくり」「高齢者の加齢に伴い虚弱化していく過程に対応できる仕組みづくり」が課題であるととらえ、必要な情報連携環境の整備を進める。

 特に高齢者の加齢に伴う虚弱化対応としては、高齢者の家族からの働きかけが有効であり、動画・写真などのビジュアルな情報を用いて、離れて暮らす家族とのコミュニケーションの質・量を高め、高齢者の健康・生活状況に対する理解促進や関心を喚起することが必要ととらえ、その結果、家族から高齢者の健康促進や生活活性化のためのサービス利用を提案されることまでを目指す。

「コミュニケーター」「コーディネーター」新2職種を設置

 実施期間は2013年11月~2014年3月末。実施地域は宮城県石巻市。高齢者約70名が対象。実証の全体像としては、自立高齢者の社会的接点となる人材であり、定期的に高齢者を訪問し生活の様子やニーズを伺う役割を果たす「コミュニケーター」(ぱんぷきんが担当)、高齢者や家族のニーズを正確支援サービス利用へとつなぐ役割を果たす「コーディネーター」(祐ホームクリニック石巻が担当)の2職種を新たに設け、高齢者の普段の生活の様子・変化・要望などを抽出、生活支援サービス事業者へとつなぐ。

実証全体の流れ

 また、関係者間で共有する情報項目を定めるとともに、そのための連携基盤を構築し、情報共有を行う。高齢者やその家族は情報項目の一部を専用ポータルサイトから閲覧でき、医療介護事業者や生活支援サービスの窓口となるコーディネーターへ連絡が取れる仕組みを提供する。

 この情報連携基盤は富士通のクラウドサービスで構築し、セキュリティなどを確保。また、高齢者やその家族に向けては、シニア世代に特化した操作性や家族間の交流のためにコンテンツを工夫したモバイル端末を提供。端末の一部は富士通の「らくらくスマートフォン」に加え、ソフトバンクモバイルの協力を得て実証に活用する。

システムの全体像

超高齢社会を地域で支える仕組みづくりへ

 実証で検証した内容については、高齢者の生活支援サービスを提供する各業界有識者を構成員とした地域協議会で討議し、今後の普及について検討。それら成果や課題を整理し、超高齢社会を地域で支える仕組みづくりのモデル化と全国展開を目指していく。

川島 弘之