ニュース

「データから価値創出するまでの摩擦をゼロに」~米Treasure Data 芳川裕誠CEOの思い

IoT分野にも注力

米Tresure Data CEOの芳川裕誠氏

 トレジャーデータ株式会社は12日、これまでの事業概況および2014年の事業戦略について説明会を開催。米Treasure Data CEOの芳川裕誠氏が2014年の方針として「先行事例のベストプラクティス化」と「IoT分野への注力」の2点を掲げた。

 日本発シリコンバレー企業として2011年12月に創業した米Treasure Dataは、2012年12月に日本法人を設立し、2013年5月から日本市場での事業展開を本格的に開始。国内企業を対象に、クラウド型データマネジメントサービス「トレジャーデータサービス」を提供してきた。

 サービスインから約1年間で、グリー、良品計画など、主にデジタルマーケティング・広告業界やオンラインゲーム業界で導入が進み、顧客数は約2倍に。社員数は国内が15名、グローバルで50名となった。日本以外のグローバルでも顧客数は倍増し、現在サービス上で管理しているデータ数は約6兆件に達する。

顧客例
管理データ件数の推移

 その上で「先行事例のベストプラクティス化」と「IoT分野への注力」が今後の戦略となる。

 「先行事例のベストプラクティス化」では、業界ごとのサービス展開を推進。5月29日に発表したオンラインゲーム業界に特化したサービスのように、今後も業界の特性に合わせたパッケージサービスを提供する。時期は未定だが、次はデジタルマーケティング・広告業界を検討しているという。

 「IoT分野への注力」では、よりさまざまなデータソースからデータを収集できるよう機能強化を進める。従来、同社のサービスで分析されてきたのは、Webサーバーなどのログデータがメインだった。それがIoTとなると、モバイル、車や家電などのセンサー、スマートグリッドなど多様な世界に広がる。データタイプも多様となるため、「ありとあらゆるデータセットを格納できるように収集機能などを強化していく」(芳川氏)。

 実際、組み込み機器メーカーとの取り組みも始まりつつあるという。

IoTではさまざまなデータソース/データタイプを扱う必要性が
ビッグデータ解析の勘所は、多様なデータの収集・整形に適切な投資を図ること。このあたりの摩擦をトレジャーデータサービスでゼロにしたい

 これら戦略のそもそもの意図は何か。芳川氏は次のように説明する。「石油業界が発掘~精製~流通~販売とパイプラインを作っているように、データパイプラインを構築したい。データを分析する目的はビジネスバリューを創出することだが、従来企業がデータを分析しようと思ってもバリュー創出に至るまでに、環境の構築など多くの手間がかかっていた。これを楽にしたいというのが当社の思い」。

 トレジャーデータサービスは、従来手間のかかっていた分析にうまくクラウド技術を組み合わせることで、安さ・速さ・簡単さを実現した点が注目を集めている理由だ。芳川氏は「ビッグデータへのアプローチとして従来の方法はコストセンターと見なされることが多かった。一方で、簡単に使えるトレジャーデータサービスでは、ビジネスバリューを創出し、分析結果を販売するような新しいビジネスが生まれる可能性もある。ビッグデータの本来の価値である“バリューアップ”のためのツールとして認知され始めている」と語る。

 その一例が「Cool Vender in Big Data 2014の1社に当社が選ばれたこと」だ。米Gartnerが毎年、各分野の代表的なプレイヤーを選出するもので、2014年のビッグデータ部門には、ClearStory Data、Gazzang、Treasure Data、Viaが選ばれた。

 クラウドサービスとして「安さ・速さは当然重要だが、一番は使うのが簡単なこと。分析して価値を創造するまでのあらゆる摩擦を限りなくゼロにしていきたい」という。それらを具体的な施策に落とし込んだのが、業界別にテンプレートなどをそろえる「業界ごとのサービス展開」や、データソースへの対応を拡充し、(ユーザーが意識しないでも)あらゆるデータを収集できるようにする「IoT分野への注力」という新しい取り組み。

 日本でも順調に導入数を増やし、説明会当日には、GMOペパボによる新規導入事例も発表された。GMOペパボは同社のサーバーホスティング事業において、サービスごとに行っていたログデータの収集・保管・分析を、トレジャーデータサービスで統合し、全社横断的なデータ活用を実現。「ロリポップ!」「ムームードメイン」「カラーミーショップ」など合計14のサービスに関するデータ管理に活用するという。

 このほか、自動車のセンサーデータを車載機から収集・保管・分析することで、アフターマーケットにおけるマーケティング施策に生かしたり、ヘルスケア領域で注目されているウェアラブル機器のセンサーデータをBluetooth・スマートフォン経由で収集し活用したりするような、まさにIoT分野での事例も出始めているという。

 芳川氏は「(IoTも含めて)とにかくビッグデータ解析の敷居を下げていく。そしてクラウド型ビッグデータ解析において、デファクトスタンダードになるよう頑張りたい」と思いを語った。

川島 弘之