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「IBM System z」初の統合型システム~クラウドにメインフレームの信頼感を

 米IBMは8日(現地時間)、メインフレーム技術を活用した高信頼クラウドサービスの迅速展開を可能とする新しいエンタープライズクラウド製品群を発表した。

 目玉となるのは「IBM System z」初の統合型システム製品である「IBM Enterprise Cloud System」。基幹系業務を支える高信頼クラウド環境を迅速に構築したい企業やサービスプロバイダ向けに、オープン技術で構築された統合基盤を提供する。

 単一システムで最大6000の仮想マシンを支え、セキュアなマルチテナント環境の展開、ワークロードに合わせたリソース共有を可能にするメインフレームは、ダイナミックなプライベートクラウドを展開したいという企業のクラウド基盤のニーズに応える。システムの効率性と拡張性の向上により、Linuxを「IBM System z」で稼動するクラウド基盤は、x86ベースのクラウド基盤と比べて、全体コストを最大で55%削減できるという。

 IBM Enterprise Cloud Systemは工場で組み立てられたあと、自動化されたクラウドオーケストレーションと監視機能を用いて設定されており、導入後すぐに大規模なクラウドサービスを展開できる。メインフレームの特性をクラウドで生かすことで、企業はクラウドに関連する多くのセキュリティやダウンタイムの問題を解決できるという。

 このほか、企業が迅速にモバイルアプリを開発・展開し、それらを基幹業務プロセスやアプリケーション、データと完全に連携させる「IBM System z Solution for Mobile Computing」も発表した。

 「IBM Enterprise Cloud System」「IBM System z Solution for Mobile Computing」については、メインフレームのシステム容量ではなく使用したコンピューティング能力に基づいた支払いが可能な新価格モデルも発表している。

 ストレージやソフトウェアまわりでも新製品を発表。ストレージ関連では、メインフレーム用フラッシュ「IBM DS8870」を発表し、HDDの30倍という性能を実現した。ソフトウェア関連では、Veristormの「zDoop」と連携した業界初の商用「Hadoop for Linux on Hadoop」を提供。Webやクラウド、モバイルによるz/OSアセットへのアクセスを迅速に実現する「IBM WebSphere Liberty z/OS Connect」、セキュリティインテリジェンスとコンプライアンス報告により、システムへの攻撃を防ぐ「IBM Security zSecure SSE」も提供する。また、メインフレームのトランザクション処理用ミドルウェア「CICS(Customer Information Control System)」を搭載する「CICS Transaction Server」新製品も用意した。

 IBM Academic Initiativeでは、学生・教授・企業・大学と連携して70カ国、1000以上の大学で18万人以上の学生にメインフレームのトレーニングやカリキュラム資源を提供してきた。次世代のメインフレームユーザー育成を目的としたこの活動を発展させ、新たに3種類のオンライン教材を提供する。シラキュース大学やマリスト大学、The Linux Foundationとの合意に基づき、2014年中に段階的に提供が開始される。授業はすべて、人・場所・時間を問わず無料で受けられるという。

川島 弘之