Windows Server 2012研究所

クラウドOSビジョンを具体化するWindows Server 2012 R2とSystem Center 2012 R2 (ライバルはVMwareとRed Hat?)

ライバルはVMwareとRed Hat?

 MicrosoftのクラウドOSビジョンにおいても、仮想マシンで動かすOSとしては、オープン性を重視している。そこで、ハイパーバイザーであるWindows Server 2012 R2 Hyper-V上で、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)、CentOS、Ubuntu ServerなどのOSSのLinuxが最適に動作できるように、Linux Integration Services(LIS)を提供している。

 LISは、仮想マシン上のLinux OSにインストールするドライバ群だ。LISをインストールすることで、Hyper-V上で最適なパフォーマンス(エミュレーションではなく)でLinux OSが動作することが可能になる。

 また、クラウドサービスのWindows Azure上でも、Linux OSのテンプレートが数多く提供されている。

Hyper-V上でLinuxを最適に動かすため、Microsoft自身がLinux関連ソフトの開発を行っている

 Microsoftのこうしたビジョンにおいて直接的なライバルとなるのは、VMwareかRed Hatになるだろう。VMwareは、仮想環境のvSphereを中核として、オンプレミス/クラウドの管理ツールなどまで提供する対象を広げている。

 また今年の8月末に米国で行われたカンファレンスのVMworldにおいて、VMware自身がクラウドサービスを提供するとの発表を行った。これにより、1社でオンプレミスとクラウドの両環境を手がけることになる。

 ただし、VMwareはOSを自社で手がけていないため、この点に付いては大きなピースが欠けているといえる。VMwareでは、Novellと提携してSUSE Linux Enterprise Server(SLES)を提供しているが、うまくいっているとは思えない。それでも、サーバー仮想化におけるシェアはまだまだ大きい。

 一方のRed Hatは、LinuxのディストリビューションであるRHELを中核として、ミドルウェアのJBossなどを提供している。最近では、Open Stackのディストリビューションも提供しているし、米国ではOpen ShiftというPaaSも展開中だ。

 Microsoftとしては、サーバー仮想化分野でシェアを持ち、ブランドとして確立しているVMwareのvSphereを何とか追い抜こうとしている。Windows Server 2008やWindows Server 2008 R2のHyper-Vは、機能的にもvSphereと比較にならないほどだったため、この世代のHyper-Vを実運用環境に持ち込む企業はあまり見られなかった。

 しかし、Windows Server 2012になり、Hyper-V環境が機能的にも、パフォーマンス的にもvSphereに匹敵するようになったきた。Windows Server 2012 R2でvSphereを追い越したとは明言できないが、この世代のHyper-Vなら、実運用環境に耐えうるようになったといえるだろう。

Windows Server 2012 R2は、SAPのプラットフォームとして最速を記録した
Microsoftは、Oracleと提携して、Windows Server 2012 R2のHyper-VとWindows Azureの仮想環境でのOracle Database、Javaなどの動作を正式にサポートしている。OracleのOracle VM以外では、Hyper-VとWindows Azureのみが正式サポートになっている
VMwareのvSphereを越える性能をWindows Server 2012 R2のHyper-Vは持っているという
Hyper-Vの性能がアップするにつれて、ハイパーバイザーとして利用されるシェアもアップしている

 さらに管理ソフトのSystem Center 2012 R2では、仮想マシンの管理を行うSCVMM(System Center Virtual Machine Manager)、物理/仮想のサーバーを管理するSCOM(System Center Operations Manager)が提供されており、オンプレミスとクラウドの両方を1つのコンソールで管理できるようになる。

 なによりも、Amazon Web Services(AWS)に匹敵する、ワールドワイドをカバーするパブリック クラウドのWindows AzureをMicrosoftが展開しているのも、大きなメリットだろう。

 Windows Server 2012 R2、System Center 2012 R2、Windows Azureの組み合わせなら、企業がハイブリッドクラウドを構築するのもやりやすい。VMwareもWindows Azureに対抗するために、自身でクラウドサービスを始めたのかもしれない。

System Center 2012 R2を利用すれば同じコンソール上でオンプレミスとクラウドの管理できる
SCOMでは、Windowsコンピュータのリストにオンプレミスとクラウドのサーバーが表示される。SCにとっては、オンプレミス、クラウドといった区別はない
管理用のカスタムビューでは、Windows Azureとプライベートクラウドのサーバーがアイコンとして表示される。このアイコンをクリックすれば、サーバーの状況が簡単に確認できる
System Center 2012 R2のエディション。今回からエディションが大きく変わった。現在は、Datacenter、Standardはプロセッサライセンス、EssentialsとFoundationはサーバーライセンスとなっている
プライベートクラウドやパブリッククラウドの環境を管理するならSystem Center 2012 R2 DatacenterかStandardが向いている。2つのエディションの差は、管理できるOS環境の数になる

(山本 雅史)