Windows Server 2012研究所
クラウドOSビジョンを具体化するWindows Server 2012 R2とSystem Center 2012 R2 (ライバルはVMwareとRed Hat?)
(2013/12/3 06:00)
ライバルはVMwareとRed Hat?
MicrosoftのクラウドOSビジョンにおいても、仮想マシンで動かすOSとしては、オープン性を重視している。そこで、ハイパーバイザーであるWindows Server 2012 R2 Hyper-V上で、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)、CentOS、Ubuntu ServerなどのOSSのLinuxが最適に動作できるように、Linux Integration Services(LIS)を提供している。
LISは、仮想マシン上のLinux OSにインストールするドライバ群だ。LISをインストールすることで、Hyper-V上で最適なパフォーマンス(エミュレーションではなく)でLinux OSが動作することが可能になる。
また、クラウドサービスのWindows Azure上でも、Linux OSのテンプレートが数多く提供されている。
Microsoftのこうしたビジョンにおいて直接的なライバルとなるのは、VMwareかRed Hatになるだろう。VMwareは、仮想環境のvSphereを中核として、オンプレミス/クラウドの管理ツールなどまで提供する対象を広げている。
また今年の8月末に米国で行われたカンファレンスのVMworldにおいて、VMware自身がクラウドサービスを提供するとの発表を行った。これにより、1社でオンプレミスとクラウドの両環境を手がけることになる。
ただし、VMwareはOSを自社で手がけていないため、この点に付いては大きなピースが欠けているといえる。VMwareでは、Novellと提携してSUSE Linux Enterprise Server(SLES)を提供しているが、うまくいっているとは思えない。それでも、サーバー仮想化におけるシェアはまだまだ大きい。
一方のRed Hatは、LinuxのディストリビューションであるRHELを中核として、ミドルウェアのJBossなどを提供している。最近では、Open Stackのディストリビューションも提供しているし、米国ではOpen ShiftというPaaSも展開中だ。
Microsoftとしては、サーバー仮想化分野でシェアを持ち、ブランドとして確立しているVMwareのvSphereを何とか追い抜こうとしている。Windows Server 2008やWindows Server 2008 R2のHyper-Vは、機能的にもvSphereと比較にならないほどだったため、この世代のHyper-Vを実運用環境に持ち込む企業はあまり見られなかった。
しかし、Windows Server 2012になり、Hyper-V環境が機能的にも、パフォーマンス的にもvSphereに匹敵するようになったきた。Windows Server 2012 R2でvSphereを追い越したとは明言できないが、この世代のHyper-Vなら、実運用環境に耐えうるようになったといえるだろう。
さらに管理ソフトのSystem Center 2012 R2では、仮想マシンの管理を行うSCVMM(System Center Virtual Machine Manager)、物理/仮想のサーバーを管理するSCOM(System Center Operations Manager)が提供されており、オンプレミスとクラウドの両方を1つのコンソールで管理できるようになる。
なによりも、Amazon Web Services(AWS)に匹敵する、ワールドワイドをカバーするパブリック クラウドのWindows AzureをMicrosoftが展開しているのも、大きなメリットだろう。
Windows Server 2012 R2、System Center 2012 R2、Windows Azureの組み合わせなら、企業がハイブリッドクラウドを構築するのもやりやすい。VMwareもWindows Azureに対抗するために、自身でクラウドサービスを始めたのかもしれない。