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NEC、第1四半期連結決算は増収減益~スマホ開発中止の業績への影響は未確定

 日本電気株式会社(以下、NEC)は7月31日、2013年度第1四半期(2014年3月期)の決算を発表した。売上高は前年同期比1.4%増の6401億円、営業損失は前年同期から139億円減の218億円の赤字、経常損失は同160億円減の282億円の赤字、当期純損益は同36億円悪化した215億円の赤字で、増収減益となった。

 通期見通しは、売上高は前年比2.3%減の3兆円、営業利益は前年から146億円減の1000億円、経常利益は同220億円減の700億円、当期純利益は同104億円減の200億円を見込む。営業利益1000億円の確実な達成を大命題としている。

 また、開発中止を発表したスマートフォン事業の影響については、「現在通期でどの程度影響が出るのか、見極めを行っている最中」(取締役執行役員兼CFO 川島勇氏)とし、現時点では業績への影響は明確になっていないとした。

第1四半期 概況サマリー
取締役 執行役員兼CFOの川島勇氏

セグメントを変更、ITソリューションをパブリックとエンタープライズに分割

 NECでは今回からセグメントを次の4分野に変更。従来のITソリューションが、販売先によってパブリック、エンタープライズに振り分けられ、パーソナルソリューションはその他に分類された。

 主要4セグメントの分類は以下の通り。

・パブリック=官公庁、公共、金融およびメディア向けシステムインテグレーション、サポート、アウトソーシング、クラウドサービス及びシステム機器販売など
・エンタープライズ=製造業および流通・サービス業向けシステムインテグレーション、サポート、アウトソーシングおよびクラウドサービスなど
・テレコムキャリア=通信キャリア向けネットワークインフラ及びサービス&マネジメントなど」
・システムプラットフォーム=ハードウェア、ソフトウェア、企業ネットワークおよびデータセンター基盤、サポートなどのサービスなど

 今回の発表では、その他の中に携帯電話端末事業が含まれる。サーバーおよびビジネスパソコンはシステムプラットフォームに含まれ、個人向けパソコンはすでに決算対象外の事業となっている。

セグメント別実績サマリー

 セグメント別の売り上げは、パブリック分野が前年同期比10.1%増の1266億円、営業利益が前年から3億円増の4億円。官公庁向け、公共向け事業が堅調に推移したことから増収となり、事業拡大に向けた体制強化などの先行投資増があったものの、売り上げ、営業利益ともにプラスとなった。

 エンタープライズは、売上高は前年同期比17.4%増の587億円、営業損益は2億円改善した24億円の赤字。流通・サービス業向けが順調に推移し売り上げは増加したが、営業損益は依然として赤字となった。ただし、流通・物流インフラ関連の投資増があったものの、売上増の影響で前年に比べ改善している。

パブリック分野の第1四半期概況
エンタープライズ分野の第1四半期概況

 テレコムキャリアは前年同期比0.7%減の1540億円、営業利益は前年同期から71億円減の56億円。国内は好調だった前年同期から減収となったが、海外はTOMS(通信運用管理ソリューション)中心に増収。営業利益はSDNやTOMS関連の投資費用の増加などにより、前年よりも71億円減となった。

 システムプラットフォームは、売上高は前年同期比3.3%減の1577億円、営業損益は前年から48億円悪化した66億円の赤字。前年に大型案件があったために売上高は前年よりもマイナスとなり、営業利益も売上減の影響で悪化した。この分野に含まれるビジネスパソコンは、具体的な数値は明らかにしなかったものの、対前年比で増加、サーバー事業もほぼ前年並み、ソフトウェア事業もほぼ前年並みとなった。

 その他の事業は、売上高が前年同期比3.5%減の1431億円、営業損益は前年から62億円悪化した99億円の赤字。電子部品事業のNECトーキンが非連結対象となったこと、携帯電話の出荷台数減により減収となり、営業損益も売上減、エネルギー関連の体制・開発強化などによる費用増で悪化し、マイナスとなった。

テレコムキャリアの第1四半期概況
システムプラットフォーム分野の第1四半期概況

携帯事業を見直し、スマホの新規開発を中止

携帯電話端末事業の見直し

 NECでは携帯端末事業の見直しを行い、スマートフォンの新規開発を中止し、現在販売中の機種をもって生産・販売を中止する。スマートフォンに関する保守、フィーチャーフォンの開発や保守は引き続き行い、埼玉日本電気での生産は継続し、社会ソリューション事業へ経営資源をシフトする。

 「NECカシオモバイルコミュニケーションズには、4月末時点で900人の従業員がいたが7月までにグループ内に移動した人員が300人で、現在は600人の従業員がいる。このうち、今後の保守事業に150人の人材が必要となるが、残りの450人に関しては順次社会ソリューション事業への移動を行う」(川島氏)

 スマートフォンの開発を中止し、フィーチャーフォンの開発を継続する理由としては、「スマートフォン投入が遅れたこと、その後、魅力的な製品の開発ができなかった。フィーチャーフォンについては、スマートフォンほど開発コストをかける必要がない」と説明した。

 NTTドコモが2トップ戦略として、NEC以外のメーカー端末を全面に推したことの影響については、「外的要因というよりも、われわれ自身の問題」とドコモの戦略変更の影響ではないと強調した。

営業利益1000億円は死守

 2013年度の通期見通しとしては、売上高は前年比2.3%減の3000億円、営業利益は同3.3%増の1000億円、経常利益は同2.3%増の700億円、当期純利益は同0.7%増の200億円。事業の非連結化の影響を除けば、売上高は実質約2%の増収となる。

 国内経済の景況感もあり、国内IT投資は回復基調で、キャリア設備投資は減少が見込まれるものの、TOMS、SDNの市場が拡大し、社会インフラでは政権交代に伴う経済財政政策が進展し、スマートエネルギープロジェクトの活発化などが見込まれるという。

 NEC自身は社会ソリューション事業への注力、グローバルで戦える成長基盤の確立とともに、戦略投資の継続、不採算案件の縮小、CCC圧縮活動の加速などを進めていく方針だ。

2013年度経営方針
2013年度業績予想サマリー

 セグメント別では、パブリックが売上高は前年比8.0%増の7350億円、利業利益は前年比80億円増の570億円。官公庁、公共向けで堅調な推移を見込み、原価低減などで増益を見込む。

 エンタープライズは売上高が前年比1.4%増の2550億円、営業利益が前年から5億円増の60億円。製造業向けでの堅調な推移を見込み、営業利益もともに増加する見通し。

パブリック分野の通期見通し
エンタープライズ分野の通期見通し

 テレコムキャリアが売上高は前年比0.8%増の7150億円、営業利益は前年から116億円減の600億円。国内は前年が好調であったことから減収を見込んでいるが、海外ではTOMS、モバイルバックホールを中心に増収を見込んでいる。営業利益については、SDNなどの投資加速と、前年にあった知財関連の一過性利益計上の影響による減収となると見ている。

 システムプラットフォームが売上高は前年比5.3%減の7050億円、利業利益は前年から37億円減の290億円。前年にあった大型案件の影響により、ハードウェアを中心に減収となる見込みで、営業利益についても減益となる見通しだ。

テレコムキャリアの通期見通し
システムプラットフォームの通期見通し

 その他の事業については、売上高は前年比14.0%減の5900億円、利業利益は前年から149億円減の20億円。NECモバイリングおよび電子部品事業の非連結化などにより減収を見込み、営業利益も前年にあった液晶関連特許売却の影響による減収を見込む。携帯電話端末事業はこの中に含まれるが、現時点ではスマートフォン開発中止は織り込まれていない。「上半期中にどの程度の影響となるのかなどを明確化したい」としている。

 また、現在市場が拡大しているスマートフォン事業から撤退することでの企業ブランドなどへの影響については、「今回のスマートフォン新規開発中止の決定は、中期経営計画で標榜している社会インフラソリューションへのリソース集中が目的となっている。リソースシフトは必ずしもネガティブファクターではなく、前向きなものであり、事業へのマイナス影響はそれほど大きくないと考えている」とイメージ的な影響は少ないとした。

三浦 優子