ニュース
NECが中期経営計画を発表、2015年度に売上高3兆2000億円、営業利益1500億円を目指す
2012年度の連結決算は増収増益、最終利益は304億円
(2013/4/26 23:20)
日本電気株式会社(以下、NEC)は26日、2015年度を最終年度とする中期経営計画を発表。売上高で3兆2000億円、営業利益で1500億円、当期純利益で600億円、フリーキャッシュフローで1000億円、ROEでは10%、海外売上高で7500億円(海外売上高比率23%)を目指す。
できるだけ早く営業利益5%を達成したい
NECの遠藤信博社長は、「中期経営計画の目標値では、営業利益5%、海外売上高比率は25%には達しないが、この目標を出きるだけ早く達成したいと考えている。できれば、2015年度には達成したい」などとした。
中期経営計画では、「社会ソリューション事業への注力」、「アジアへの注力、現地主導型ビジネスの推進」、「安定的な財務基盤の構築」の3点を挙げる。
「社会ソリューション事業への注力」では、社会価値創造型企業への変革を掲げ、ICTを活用した高度な社会インフラを提供する事業に経営資源を集中させるとともに、社会の課題解決を成長機会ととらえ、新たなビジネスモデルを確立するとした。
「蓄電池事業は、単に機器を販売するビジネスよりも、レンタルした方が価値を発揮できることがわかり、新たなビジネスモデルに取り組んでいる。このように、新たなビジネスモデルをクリエイトしていくために、ビジネスイノベーション統括本部のなかに、ビジネスモデルクリエーションのための組織をつくった。社会ソリューション領域において、新たな価値を創造していくことになる」とした。
社会ソリューション事業は、「パブリック」、「テレコムキャリア」、「エンタープライズ」、「スマートエネルギー」から構成。特に経済成長によるインフラ整備の必要な新興国への展開を強化するという。
パブリック、エンタープライズ、スマートエネルギーの3つの領域では、現在、1兆1000億円の売り上げ規模を、2015年度には1兆4100億円に拡大。営業利益率で7%を計画する。
また、テレコムキャリアでは、7100億円の売上高を、2015年度に8000億円に拡大し、営業利益率で10%を目指すほか、システムプラットフォームでは、7500億円の売上高を、2015年度に8000億円とし、営業利益率では5%を目指すことになる。
キャリアビジネスでは、TOMS(テレコム・オペレーティング・マネジメント・システム)とSDNを柱に成長戦略を描き、システムプラットフォームでは、グローバルで生き残れるコスト競争力強化と、安定品質の確保を目指すという。
また、同社では、社会ソリューション事業の遂行に向けて、スピード感ある組織体制への変革を目的とした再編を2013年4月に実施。社会ソリューション事業を支える次世代仮想化ネットワーク、スマートエネルギー、セキュリティソリューション関連へ重点投資するという。
「NECのコア・コンピタンスである、SDNなどの次世代ネットワーク技術、高性能・高信頼IT基盤技術、各種センサーやヒューマンインターフェイス技術などを生かし、独自性および競争優位性があるICTアセットに加え、コンサルティングや運用サービスなどのサービス領域を強化することで事業領域を拡大する」という。
NECでは、SDNやスマートエネルギー、セーフティ関連で、約1000億円の戦略投資を計画。現時点では全社売上高の約6割を占めている社会ソリューション事業の比率を、2015年度には7割まで高め、営業利益率8%の確保を目指す。
「アジアへの注力、現地主導型ビジネスの推進」では、グローバルで戦える成長基盤の確立により、アジアを中心とした新興国および発展途上国に注力。現地ニーズに対する感度を高め、事業スピードを加速するという。
遠藤社長は、「アジア地域は、NECのネームバリューを生かすことができる市場。eインフラやeガバメントに対する需要が旺盛で、NECの強みを発揮できる」などとした。
セーフティやスマートエネルギーなどの事業を積極的に拡大。海外5極体制を進化させ、現地主導型ビジネスを加速。セーフティ事業の企画および実行する拠点として、シンガポールに、グローバルセーフティ事業部を2013年4月に新設。現地でのマーケティング機能やほかの地域でも応用できる共通ソリューションの開発機能などを強化し、ほかの地域における事業展開を支援。現地ニーズに対する感度を高め、スピード感のある事業遂行を進めるという。
「安定的な財務基盤の構築」では、コスト競争力の強化、営業利益で1500億円、フリーキャッシュフローで1000億円を創出する収益構造の確立、ハイブリッド・ファイナンスによる財務余力の確保を掲げた。
「ハイブリッド・ファイナンスは、株主に迷惑をかけないという点からの判断したものであり、また、中期的にみて、財務面でのバッファが必要であると考えたことから実行に移している。今後、大きな投資が必要な場合に活用するが、なにもなければ、それはそのままバッファになる」と説明した。
なお、遠藤社長は、2012年度までの中期経営計画「V2012」を振り返り、「高い収益目標を目指したが、コアアセットを生かした拡大モデルを描けなかった。事業構造を考えると、4兆円の売上高は最低限必要な規模ととらえ、そのためには海外展開が重要だととらえた。しかし、ITを中心とした海外での高い成長目標を掲げたものの、経営資源の集中が進まず、パートナーリングでも成果が上がらなかった。これは大きな反省点である。また、東日本大震災、タイ洪水被害、欧州危機などの外部環境変化に適応できる財務体力が不足していた。3兆円の売上高で成り立つ体質を目指す必要がある」など語った。
また、携帯電話事業に関しては、「グローバル規模での競争力を確保する枠組みが必要であり、そのためには海外でビジネスを行う携帯電話事業者とパートナーリングを組んで、ボリュームを追求していく必要がある」としたものの、「携帯電話事業の売却を、第一義に考えているわけではない。ソリューションを作り上げるには、携帯電話によるヒューマンインターフェースは必要」などとした。
2012年度は増収増益、304億円の最終黒字に
一方、同社が発表した2012年度(2012年4月~2013年3月)の連結業績は、売上高が前年比1.1%増の3兆716億円、営業利益は同55.5%増の1146億円、経常利益は同118.8%増の920億円、当期純利益は前年の1103億円の赤字から1407億円改善し、304億円の黒字となった。
NECの川島勇取締役執行役員兼CFOは、「売上高は、計画に対しては未達となったが、事業の非連結化の影響を除くと約3%の増収となっている。ITソリューション、キャリアネットワーク、社会インフラがけん引した。売り上げ増とともに、400億円の構造改革効果があり、営業利益は増益となり、期初計画を達成した。また当期純損益では、営業利益の改善と持分法投資損益の改善があり黒字に転換。復配を実現した。損益に関しては、すべての項目で計画を上回っている」などと総括した。
セグメント別業績は、ITソリューション事業の売上高は前年比4.86%増の1兆2458億円、営業利益は213億円改善の661億円。ITソリューション事業のうち、ITサービスの売上高は前年比5.2%増の8593億円、プラットフォームの売上高は同3.8%増の3865億円となった。
ITサービスでは、製造業、流通・サービス業、通信事業者向けなどで増収となったほか、豪CSG社のITサービス事業の連結化がプラス効果となったほか、プラットフォームでは大型案件の効果があり増収となった。
キャリアネットワーク事業の売上高は前年比7.5%増の6477億円、営業利益は125億円増の631億円。社会インフラ事業の売上高は同12.7%増の3723億円、営業利益は116億円増の278億円となった。
パーソナルソリューション事業の売上高は10.9%減の5891億円、営業利益は47億円減のマイナス37億円の赤字となった。そのうち、モバイルターミナルは売上高が12.8%減の2624億円、PCその他が9.3%減の3267億円。営業利益はモバイルターミナルが約120億円の赤字、PCその他は約80億円の黒字となった。モバイルターミナルでは、NECモバイリングの携帯電話販売事業が好調だったが、携帯電話の出荷台数が大幅に減少。PCその他では、個人向けPCの非連結化に伴い減収となった。
「パーソナルソリューションの営業利益は、2013年1月時点で100億円の黒字を見込んでいたが、それに比べて137億円の悪化となっている。携帯電話事業が年間出荷計画で430万台としていたものが、実績が290万台にとどまったことが影響。140万台の下振れによって、粗利が大きく減少している。その結果、将来の在庫リスクを考え、在庫の棚卸評価引当を計上。さらに、ソフトウェア資産の減損損失で150億円を特別損失に計上した。これによって、2013年度の携帯電話事業の計画において重荷はなくなる。2013年度は、携帯電話でほぼ前年並みとなる300万台の出荷を計画しているが、上期は150億円程度の赤字が出ると想定。下期はブレイクイーブンと予想している」と語った。
その他事業においては、売上高が14.5%減の2166億円、営業利益は112億円増の223億円となった。
2013年度は売上高3兆円、営業利益1000億円を目指す
なお、2013年度の業績見通しは、売上高が前年比2.3%増の3兆円、営業利益は前年比146億円減の1000億円、経常利益は220億円減の700億円、当期純利益は104億円減の200億円とした。
川島勇取締役執行役員兼CFOは、「2015中期経営計画の初年度として、この計画を達成すべき最低限の目標に据えるとともに、スピード経営を実施し、目標に対して上積みをしていきたい。社会ソリューション事業への注力、グローバルで戦える成長基盤の確立、戦略投資の継続、不採算案件の縮小、CCC(キャッシュ・コンベンション・サイクル)圧縮活動の加速といった点に取り組む。NECモバイルの非連結化を含むと、売上高は前年比2%の増加になる。まずは、営業利益1000億円の確実な達成を目指す」などと語る。
損益見通しについては、2012年度に達成した計画値を、そのままスライドした内容となっている。
セグメント別の通期見通しは、ITソリューション事業の売上高は前年比1.1%増の1兆2600億円、営業利益は39億円増の700億円。ITソリューション事業のうち、ITサービスの売上高は前年比5.6%増の8850億円、営業利益は約560億円、プラットフォームの売上高は3.0%減の3750億円、営業利益は約140億円を計画。ITサービスでは、回復基調にあるIT投資環境を受けて着実な増収を目指すが、プラットフォームでは前年度の大型案件の反動で減収を見込んでいる。
キャリアネットワーク事業の売上高は0.4%増の6500億円、営業利益は81億円減550億円。社会インフラ事業の売上高は12.8%増の4200億円、営業利益は8億円減の270億円。
パーソナルソリューション事業の売上高は17.7%減の4850億円、営業利益は63億円減のマイナス100億円の赤字。そのうちモバイルターミナルは売上高が37.5%減の1640億円、PCその他が1.7%減の3210億円。
その他事業においては、売上高は14.6%減の1850億円、営業利益は123億円減の100億円としている。