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ヴイエムウェア、“ポストPC時代”の柔軟なワークスタイルを支援する「VMware Horizon Suite」

VMware ViewはVMware Horizon Viewに改称、HTML5対応ブラウザでの利用も可能に

ヴイエムウェア 代表取締役社長の三木泰雄氏

 ヴイエムウェア株式会社は21日、エンドユーザーが柔軟なワークスタイルを実現するための包括ソリューション「VMware Horizon Suite」を発表した。デスクトップ、アプリケーション、データを統合したポータル「VMware Horizon Workspace」、仮想デスクトップ(VDI)環境を提供する「VMware Horizon View」(旧称:VMware View)、ユーザーのPC環境を統合的に管理する「VMware Horizon Mirage」から構成され、2013年第1四半期より提供開始となる見込み。

 米VMwareでは、ソフトウェアによってデータセンターの構成を自由に変更できる「SDDC(Software-Defined Data Center)」、「ハイブリッドクラウド」、企業のエンドユーザー自身がシステムの構築や運用・管理に積極的に携わる「エンドユーザーコンピューティング」の3つを2013年の3本柱としてかかげている。今回発表されたVMware Horizon Suiteは、そのうち、エンドユーザーコンピューティング分野の基幹となる製品だという。

 ヴイエムウェア 代表取締役社長の三木泰雄氏は、「現在のIT部門では、スマートフォンなどに代表されるさまざまなデバイスや、モバイル、コンシューマ向けを含めた新しいアプリケーションを企業内でエンドユーザーにどう使わせるかという点で、大きな課題を抱えている」という点を指摘。

 こうした、新たな“ポストPC時代”に対応するためのソリューションを、ポイントソリューションではなく、「デスクトップ、データ、アプリケーションといった要素をトータルに提供できるVMware Horizon Suiteとしてそろえることにより、企業のIT管理者を支援していく」とのメッセージを強く発信する。

デスクトップ、データ、アプリケーションへの一元的な仲介ポイントを提供するのがHorizon Suiteの役割だという
Horizon Suiteは3つの製品から構成される

統合ソリューションであることのメリットを提供するHorizon Workspace

 この中核となるのが、Horizon App Managerの後継として新たに製品化された、Webポータル製品のHorizon Workspaceである。

 Horizon App Managerでは、SaaSアプリケーションと、アプリケーション仮想化製品のThinAppで仮想化されたWindowsアプリケーションなどをカタログ化し、ユーザーが容易にアクセスできるようなポータル機能を提供していた。Horizon Workspaceではさらに、VDI環境へのアクセス機能と、企業向けのデータ共有機能が統合されている。

 このうちデータ共有機能は、従来「Project Octopus」として発表されていたもの。一口でいえば「企業向けのDropbox」とでもいうべき機能で、企業がデータを管理した状態での、デバイス/ユーザーを越えたファイル共有を可能にする。

 もちろん、企業でこうしたアプリケーションを利用しているところもあるだろうが、セキュリティ面などを考慮すると好ましい状態とはいえないし、かといって便利なものを禁止してはユーザーの不満が募る。ヴイエムウェアでは、Horizon Workspaceによってこうした課題をクリアし、企業でも現実に使える機能を用意すると同時に、VDIなどと統合した容易な管理性を提供することで、企業のIT管理者を支援するものだとアピールしている。

 なお、パスワードなどの手段でユーザーを認証し、シングルサインオンを提供する機能は引き続き備えているので、SaaSアプリケーションやデスクトップ環境など、異なった接続先へアクセスする場合でも、そのたびにいちいち認証を求められるようなことはない。

Horizon Workspaceは統合的なWebポータルである
アプリケーションへの容易なアクセスを提供する

VMware ViewからリブランディングしたHorizon View 5.2

HTML5対応ブラウザによるデスクトップ接続が可能になった

 VDIについては、従来はVMware ViewとしておなじみだったHorizon Viewが引き続き提供される。同時に発表された新版「Horizon View 5.2」でも、以前の機能は継承しつつ、新たにマルチデバイス対応などが強化された。

 具体的には、HTML5対応のWebブラウザがあれば、サーバーにアクセスしてWindowsデスクトップ環境を使えるようになっている。これは、「Project AppBlast」として紹介されていた機能の正式版で、一部機能の制限はあるものの、端末側にVDI用のクライアントモジュールがなくてもデスクトップ環境を使えるので、ユーザー側の利便性が向上する。

 しかし、多くのスマートデバイスではタッチインターフェイスを採用しており、Windowsデスクトップ環境との親和性は高くない。そこでHorizon View 5.2では、ジェスチャリング機能によってユーザーインターフェイスを最適化し、タッチデバイスからでも使いやすいインターフェイスを提供するとのこと。

 また今回は、管理機能がHorizon Workspaceに統合されたほか、スケーラビリティを強化。さらに、サーバー側のGPUを利用した3Dのアクセラレーションを正式サポートしたため、例えば3D CADシステムを利用するクライアントをVDI化する、といったことも可能になっている。

Horizon View 5.2での強化点
Horizon Workspaceに統合されている

統合イメージ管理を進化させるHorizon Mirage 4.0

 3つ目のコンポーネントである統合イメージ管理ソリューションのHorizon Mirage 4.0も、従来のVMware Mirage(さらに前はWanova Mirage)から改称した製品である。

 Horizon Mirageでは、物理デスクトップのイメージをサーバー上で一括管理し、ローカルデバイスに配信する仕組みを提供する。ユーザーは配信されたデスクトップイメージを利用するが、あくまでもローカルPC上で実行するので、オフライン環境でも使える点がVDIなどとは異なっている。またローカル側で更新された分は、オンラインになった際にサーバーと自動的に同期される。

 またHorizon Mirage 4.0では、Windows 8/Windows 7などの最新環境に対応したほか、イメージまるごとではなく、OS、ドライバ、各アプリケーション、データなどのレイヤに分割しているので、OS間の移行、物理環境からVDI環境への移行(P2V)などが非常にやりやすくなっている。

 ストラテジックアライアンス部長の名倉丈雄氏は、「ユーザー環境のOSに依存しない部分だけを新しい環境へ簡単に持って来られるので、サポート期限の迫っているWindows XPからの移行なども非常にやりやすい。アプリケーションレイヤを分割したことで、あるアプリケーションはバージョンアップが必要だが、あるアプリケーションはThinAppによるカプセル化で対応可能、といった柔軟な利用に対応している。もちろん、本来的な目標であるユーザー環境の保全にも利用可能だ」と、そのメリットを説明した。

 なお、VMware Horizon Suiteの参考価格は、ユーザーあたり3万2000円から。現段階では、コンポーネントごとの価格は明示されていないが、個別での提供も継続される。

Horizon Mirage 4.0の特徴
ストラテジックアライアンス部長の名倉丈雄氏

(石井 一志)