ニュース

日本HP、ハイエンド向け「3PARストレージ」をミッドレンジにも本格展開へ

シンプルなストレージを実現する「HP Converged Storage」戦略を発表

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は13日、ストレージ戦略「HP Converged Storage」を発表。それを具現化するための中核製品として、ミッドレンジ向けストレージ「HP 3PAR StoreServ 7000シリーズ」(以下、3PAR 7000シリーズ)を同日より販売開始する。

 日本HPでは、次世代の統合ITインフラとして「HP Converged Infrastructure」を推進しており、サーバー、ストレージ、ネットワーク、サービスの各分野で、この戦略を支える製品展開を行ってきた。

 今回発表されたConverged Storage戦略もその1つで、常務執行役員 エンタープライズストレージインフラストラクチャー事業統括の杉原博茂氏は、「さまざまな形をしたものを1つのシンプルな形にまとめ上げる、“Polymorphic Simplicity”というビジョンをグローバルで発信しており、これが当社のストレージの基本戦略になる」と説明している。

 Converged Storageには大きく3つの柱があるが、その中で今回もっとも強調されたものが、「プライマリストレージのアーキテクチャを、エントリーからハイエンドまで広く展開する」(エンタープライズストレージインフラストラクチャー事業統括 HPストレージ事業本部 事業本部長の福岡英治氏)という点だ。

常務執行役員 エンタープライズストレージインフラストラクチャー事業統括の杉原博茂氏
HP Converged Storage戦略
エンタープライズストレージインフラストラクチャー事業統括 HPストレージ事業本部 事業本部長の福岡英治氏

 福岡氏は、仮想化が当たり前になりつつあるサーバーと異なり、ストレージはまだサイロ化された状態に置かれているため、その運用が限界になりつつあるという点を指摘。「15年前20年前からのレガシーな設計を引き継いでいる従来型ストレージでは、新たなニーズに対応できない。当社では、複雑でさまざまな形態のストレージをシンプルにするConverged Storageにより、ミッドレンジとハイエンドのアーキテクチャを統一し、境界を取り払う」と述べる。

 具体的な施策としては、従来はハイエンド向けを中心に提供してきた3PARのストレージをミッドレンジ向けにも投入することで、このアーキテクチャの統一を実現する。そのための基幹製品が今回発表された3PAR 7000シリーズで、これによって同じOS、同じソフトウェア、同じ機能をミッドレンジとハイエンドに提供できるようになるとした。

 「他社では、ハイエンドとミッドレンジで製品が分かれており、異なるアーキテクチャを採用しているので、別々の煩雑な管理が必要となり、コストの最適化もできない。Converged Storageこそが当社が推進する方向であり、独自の差別化である」(福岡氏)。

他社では異なるアーキテクチャで提供されているハイエンドからミッドレンジまでを、日本HPでは共通のアーキテクチャでカバーする

 また残りの2つとしては、「ブロック、ファイル、オブジェクトの各ストレージで共通データサービスを提供」「情報保持・保護のアーキテクチャを提供」するとのことで、3PARを含めた4つの製品ファミリで対応していくとする。

 今回、新戦略の発表にあたって、これら4つの製品ファミリはすべて刷新されており、旧3PARは「3PAR StoreServ」、旧LeftHandは仮想環境を最適化する基盤「StoreVirtual」、旧IBRIXは戦略的活用のためのプラットフォーム「StoreAll」、旧STOREMOCEは重複排除機能を備えた情報保護基盤「StoreOnce」として今後展開される。

 福岡氏はこれらの製品について、「異なるテクノロジーを生い立ちとしているが、今後、プラットフォームの標準化と共通の管理を実現していく。すべての製品がスケールアウト型でありこれは当社だけの特徴。将来の多様な変化に容易かつ柔軟に対応可能だ」と述べた。

HP Converged Storageを支える4つの製品ファミリ
HP 3PAR StoreServ 7200

 なお、新製品として投入された3PAR 7000シリーズは、「ハイエンドとの境界を排除する」とのうたい文句通り、ミッドレンジストレージながら、これまでの3PARストレージが備えるハイエンドの機能をすべて利用できるとのこと。

 例えば、競合のミッドレンジ以下のストレージでは、ハードウェア障害時にパフォーマンスへ影響してしまったり、マルチサイトの複製が行えなかったりするが、3PAR 7000シリーズはこうした点にもきちんと対応するほか、ミッドレンジストレージ一般の特徴である、容易な導入と運用性をそのまま保持。さらに、価格面でもハイエンドに対する優位性を維持しているという。

 もちろん、3PARストレージで評価されてきた機能はそのままで、マルチテナントへの対応、自律的な性能調整、筐体間でリソースのやり取りを動的に行えるフェデレーションといった機能はハイエンドの3PARストレージから受け継いでいる。

 「3PARストレージでは、大きな容量が必要になった場合のスケールアップ、性能を増やしたい場合のコントローラ増設によるスケールアウトが可能で、特にFCストレージの領域でスケールアウト性を持っているストレージは少ない。さらにフェデレーションにより、筐体を連携し1つの大きなプールとしてデータやボリュームを動的に配置換えできる。また、ミッドレンジに求められる運用のやりやすさなどを追求しており、いいとこ取りで両立しているのが3PAR 7000シリーズだ」(エンタープライズストレージインフラストラクチャー事業統括 HPストレージ事業本部 製品マーケティング本部 本部長の瀧澤一彦氏)。

 ラインアップとしては、下位機の「HP 3PAR StoreServ 7200」と上位機の「同 7400」を用意しており、価格はそれぞれ、333万9000円から、505万500円から。ミッドレンジストレージであるため、直販を行いながらもパートナー経由での販売をいっそう強化し、3年以内に金額ベースのシェア20%超を目指すとした。

 なお3PARストレージでは、従来機の「HP 3PAR F-Class」「HP EVA」からの移行ツールなども提供しており、ユーザーの新しいプラットフォームへの移行を支援する考えだ。

3PAR 7000シリーズの特徴
アーキテクチャ統一により、“いいとこどり”を実現

(石井 一志)