日立、“ビッグデータ”や社会インフラシステムに対応したクラウドサービスを提供


 株式会社日立製作所(以下、日立)は24日、“ビッグデータ”の活用や、社会インフラシステムに対応したクラウドサービスを提供すると発表した。「ビッグデータ利活用サービス」と「スマートインフラサービス」をサービスメニューに追加するほか、この提供のために、同社のクラウドソリューション「Harmonious Cloud」のサービス基盤として、「データ利活用環境」と「情報制御連携環境」を整備する。

ビッグデータ利活用サービスの概要
ビッグデータ利活用サービスの適用事例

 ビッグデータ利活用サービスは、さまざまな企業活動において生成されるログデータ、M2M関連データ、各種コンテンツなどの多量なデータ、いわゆる“ビッグデータ”の活用を支援するサービス。ビッグデータ活用のコンサルティングから、クラウドを用いたシステム設計・構築・運用に至るまで、システムライフサイクル全般にわたるサービスを包括的に提供する。

 日立 執行役常務 情報・通信システム社 プラットフォーム部門CEO兼クラウド事業統括本部長の佐久間嘉一郎氏は、「まずは保守業務、現場監理といった日立が得意としている分野、あるいは今後拡大が見込める医療、通信などでの訴求を図る」と、適用分野を説明する。

 具体例として、建設機械、プラント設備、エレベーターなどの運転データを活用した遠隔監視・保全管理での活用が可能。日立プラントテクノロジーが11月21日に発表した、クレーンの安全な稼働を支援するサービス「クレーンドクタークラウド」では、すでにこの技術が生かされているという。また医療分野では医療画像情報解析への適用、通信分野では通信ログ解析への適用が見込まれているとのこと。

 また、このサービスの提供基盤として、ビッグデータの収集・蓄積・検索・分析機能を持つ「データ利活用環境」の整備を図る。このための強化として、NASベンダーであるBlueArcの買収などストレージ関連の強化や、東京大学との共同研究による超高速データベースエンジンの開発、Hadoop関連でのノウハウの蓄積などを行っているとした。


日立 執行役常務 情報・通信システム社 プラットフォーム部門CEO兼クラウド事業統括本部長の佐久間嘉一郎氏「データ利活用環境」の概要
スマートインフラサービスの概要
スマートインフラサービスの適用事例

 一方のスマートインフラサービスは、システムのスマート化に向けたコンサルティングと運用を提供するもので、「日立グループが持つ実業ノウハウや、電力などで培った社会インフラ技術を生かす」(佐久間氏)という。適用分野としては、すでに沖縄で2011年2月より、EV(電気自動車)レンタカー向け充電ステーション管理システムが稼働しているほか、六ヶ所村でも再生可能エネルギー見える化システムが運用されているとのこと。

 今後はさらに、スペインやハワイなどでもEV充電ステーション管理システムの実証実験が予定されており、こうした実証実験でのブラッシュアップを行った後に、中国やインドなどの新興国市場にも広げていくとした。なお適用分野についても、エネルギー関連以外にモビリティ、水システム、都市マネジメントなどにも範囲を広げていく計画だ。

 これらのサービスを支える基盤としては、社会インフラの運用に関する情報の分析・知識か処理と制御システムを連携できる「情報制御連携環境」を構築した。この環境を活用することによって、現在独立して動いている社会インフラの異種システムをITによって連携させ、新たな価値・サービスの創世を図るとしており、例えば、「エネルギー分野では電気とガスの連携による効率化が見込めるほか、電気と鉄道といったインフラの連携でも適用できるのではないか」(佐久間氏)という。

 クラウドは、こうした大量のインフラ関連データを高速処理するためのリソースとして活用する意向で、ここで得られたデータ分析結果を、制御システムと協調して社会インフラへフィードバックするところまでを対応するとした。佐久間氏はこの部分について、「社会インフラ分野での実績とノウハウを活用して、日立では最適なサービスを提供できる。これが、ほかのITベンダーにはない大きな特徴と考えている」とアピールしている。


「情報制御連携環境」のイメージ「情報制御連携環境」の概要

 なお日立では、これらのサービスを国内に限らず海外でも積極的に展開する考え。ビッグデータ利活用サービスについては、米国のHitachi Data Systemsが展開。スマートシティ事業については、前述のように新興国市場を狙うという。あわせて海外のデータセンターも拡充を進め、特に中国の拠点を強化して、新興国での需要に対応するとしている。

 日立では、こうしたクラウド関連の売り上げにおいて、2012年度に2000億円、2015年度に5000億円を見込んでいる。

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