日本HP、新本社を5月の正式開所に先駆けて公開


運河沿いに新築された日本HPの新本社

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は17日、5月16日に正式に開所予定の新本社を、マスコミ向けに公開した。現在はオフィス機器などが導入される前の段階で、導入後は社員以外が立ち入ることができなくなるスペースが設けられることから、什器などが入る前の段階で内部が公開された。


ガレージで創業したHPのイメージと、その精神に立ち返る「HP Garage Tokyo」

新本社の概要
新本社は23区内では4カ所に分散されていたオフィスを統合

 新本社は、東京都江東区大島2丁目の、猿江恩賜公園と運河を挟んだ向かい側に建設された地上9階の自社ビルとなっている。

 社員から募集し決定した愛称は、「HP Garage Tokyo」。ガレージで創業したHPのイメージと、その精神に立ち返るという意味が込められているという。

 もともとは新日本石油の製油所があった場所で、土地改良などが行われた後、2009年9月に建築が開始され、2011年2月に竣工した。3月から業務と並行して引っ越しが始まり、5月16日に開所式を行う予定となっている。

 敷地面積は191万2360平方メートル、建築面積は67万2611平方メートル、延べ床面積は445万3240平方メートル。建築、設備の施工は清水建設が担当した。

 9階建てだが、9階は機械室、8階がカフェテリアで、7階から下がオフィスフロアとなっている。

 日本HPはDEC、コンパックと合併したこともあって、東京都内に市ヶ谷本社、荻窪事業所、高井戸事業所、新宿事業所、八王子事業所、昭島事業所と6つのオフィスが存在している。新本社完成後は、バックオフィス機能を持つ八王子事業所、工場という位置付けの昭島事業所を残し、4つの事業所を閉鎖して新本社に統合する。

 正社員4000人、契約社員を含めて6000人のスタッフが出入りすることができる拠点を作ることで、コミュニケーションの強化を目指す。


グローバルリアルエステイト本部 管理統括 加藤武彦氏

 HPのワールドワイド組織で、オフィス戦略を担当するグローバルリアルエステイト本部 管理統括の加藤武彦氏は、「HPはオフィスを経営戦略の一環ととらえている。ただし、オフィスをめぐる環境は国ごとに違いがあり、その国での最適な選択をする必要がある。今回の新本社は、コスト的なメリットがあり、お客さまに対してもメリットを生むオフィスとはどういうものかを検討した結果、建設を決定した。新本社を利用することで浮いた経費部分は、スタッフの拡充といった投資に回すことが企業戦略として適切だと考えた」と説明している。

 

開放感の生まれる高い天井を採用、基準階の面積はサッカーコートと同程度


新本社の内部構造
新本社ビルのコンセプト

 ビルの特徴としては、天井高が2.9メートルと通常のビルよりも高くなっている。天井を高くすることで、開放感が生まれることが狙い。

 コンセプトとしては、基準階の面積がサッカーコートと同程度の100メートル×55メートルと都内最大級の広さをとり、柱を内部ではなくバルコニー部分に設置したことで、広大でフレキシブルなオフィス空間を実現。家具レイアウトから導き出した、全方位奥行き17メートルがあることで、効率的に活用できる空間となっている。

 エネルギー消費量を抑えるために、日射遮断、自然採光、自然換気併用空調を取り入れオフィス中央部分の吹き抜け、庇を活用している。外気をうまく取り入れると共に、全面ガラスの外壁に庇(ひさし)を設けることで、自然採光を調整できるため、日射による温度の上昇を抑え、オフィス内の明るさを調整することができる。その結果、従来に比べCO2排出量を約40%削減することを実現した。

 庇は、バルコニーとして活用することで、川側は社員が外に出てリフレッシュスペースとして活用し、住宅側は近隣住宅などからの視線制御という役割を担っている。さらに、空調機、ダクトルート、外部柱の設置スペースとしても活用している。

 天井を透明にして採光にも利用されているオフィス中央部の吹き抜けは、電源を設置して簡単な仕事ができるカウンター、階段、レストルームとして活用することで、社内コミュニケーションを触発させることを狙う。

基準階床面積は都内最大級となるサッカーコートと同程度明かりや冷暖房に利用する消費電力を少なくするために吹き抜け、庇などを活用
庇はバルコニーとして利用され、空調機置き場、ダクトルート、柱、近隣への視線制御など複数の役割を担っているオフィスの中心部分に設けられた吹き抜けは社内コミュニケーション触発を狙い作られた

 正式な開所となる5月16日以降には、什器など設備を整えた段階でのオフィス公開を実施する予定となっている。

 

8階のカフェテリアスペース


8階はカフェテリアスペース。めん類コーナー、グラムごとに料金を支払うコーナー、軽食、個室など900席が用意される予定。支払いは電子マネー「nanaco」で行い、通常のnanaco同様、利用した際のポイントも付与される見込みだ
カフェテリア内には外部の顧客との歓談に使われる簡単なバースペースも用意されるカフェテリアには個室も用意される予定カフェテリアの外のバルコニーは緑化目的の樹木が置かれ、季節のよい時期には食事ができるテーブルが置かれる予定

吹き抜けスペースやトイレも一工夫


コミュニケーションを活発化するための吹き抜けスペース吹き抜けの手すり部分には電源が設けられ、立って簡単な仕事ができるようになっている
男子トイレは通称「伊勢丹仕様」。焦げ茶色の落ち着いた色味となっている女子トイレには男子トイレにはないパウダースペースが設けられている
女子トイレは「高島屋仕様」。柔らかい色合いとなっている女子トイレの手洗い所の後ろには男子トイレにはないついたてがあり、トイレに入った人と顔を合わせなくても手洗いコーナーを利用できる

オフィススペースとサーバー室


オフィススペースオフィススペースの内側には会議室が設けられている
会議室のライトはセンサー方式で入室を感知して明かりがともり、人が出た後は自動的に明かりが消える、消し忘れを防止した仕様となっているオフィススペースに敷かれたじゅうたんは方角によって色が異なる
柱の下にはライトがあり、夜は柱を下から照らす社内サーバー室

 

教室スペースのある2階と、ショールームスペースのある1階


2階部分にはトレーニング用の教室スペースが設けられている一階部分はショールームスペースとなり、エンタープライズ製品をはじめ、プリンタなど全HP製品を見ることができるスペースとなる
屋外には樹木が植えられて、周囲の住宅との目隠しとしての役割も担っている
現在工事中の1階スペースにはスターバックスコーヒーとセブンイレブンができる予定
関連情報
(三浦 優子)
2011/2/18 10:56