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小中学校の膨大な紙のテストをデータ化、DNPとマイクロソフトが実証研究
学習履歴分析→個別指導の実現めざす
(2015/6/2 12:49)
大日本印刷株式会社(以下、DNP)と日本マイクロソフト株式会社(以下、マイクロソフト)は1日、学校現場のテストをデジタル化するプロジェクトを開始すると発表した。これまで印刷物で配布されてきた小テストのデータをWordに変換。教員が学習履歴をデータとして管理し、生徒ごとに合った個別指導に生かせる環境を実現する。
小中学校では2020年までにタブレット端末が1人1台配備される予定で、さまざまなデジタル教材やテストアプリ、コンテンツが開発されている。一方、紙で使用されている小テストやドリルをデジタル化して活用したいというニーズもあるという。
DNPの調査では、中学校1校あたり年間約2000ページの紙の教材を使用。小学校はさらに多く、それら総額は年間約300万ページにもなると推測される。これらはデジタル化が遅れており、デジタルテストの普及には、大量の小テスト・ドリルをいかに速くデータファイル化できるかが重要になるという。
今回のプロジェクトでは、DNPが教材会社や自治体が作成した紙のテスト・ドリルを効率的にWordに変換し、採点機能も簡単に追加できるシステムを構築。マイクロソフトはOfficeやデータ可視化ツール「Power BI」を提供するほか、DNPや教育ICT販売会社、教材会社と協力し、同システムを教育機関に提案する。
デジタルテストの利点
デジタルテストによるメリットは、教員が生徒1人1人の理解度を短期間で正確に把握可能になること。正誤情報を即座に把握でき、解答にかかった時間や途中経過などもデータとして取得できる。たとえ正答であっても生徒がつまずいた箇所が確認できるため、進捗状況や理解度に応じて、問題や指導教材を提供するといったアダプティブラーニングへの展開も可能になる。
さらにデジタルテストデータは学校全体で管理できるため、クラスや学年の傾向を教員同士で共有し、指導計画を練り直すことも短いスパンで可能に。自治体が作成する小テスト・ドリルを活用すれば、地域内の他校と比較して自校生徒の弱点が把握できるため、個別指導も行いやすくなるという。
今後の展開について
今後の展開として、今年度中に東京や京都などの自治体・学校で、紙の教材をWordに変換したデジタルテスト利活用に向けた実証研究を始める。東京都内の小学校では小学5年生向けの算数教材をはじめとする1000ページ分、京都府内の中学校では3年生向けの3教科300ページ分の教材をWork化して検証する。そのほか、福岡県・神奈川県・埼玉県などの小中高校約10校でも教材を含めた実証を予定するという。
目標は約3万ページの教材のWord化。3年間で1万校分のWord化をめざすという。さらにDNPが提供する記述式デジタルテストの回答分析システムと、「Microsoft Azure」の機械学習プラットフォーム「Azure Machine Learning」を連携。生徒の学習データをビッグデータ化して学習予測を行い、個別指導や教材を提供するシステム・サービスの実現もめざすとしている。