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シャープ、個別学習ツール「STUDYFIT」開発、短い集中学習に最適

佐賀県多久市の小学校で「学力アップ」確認

辰巳剛司氏

 シャープ株式会社は23日、児童の個別学習を効果的にサポートするデジタル学習システム「STUDYFIT」を開発し、5月より提供を開始すると発表した。株式会社日本標準と2014年11月に共同開発したタブレット向けデジタル教材を採用。販売において日本マイクロソフト株式会社と協力する。

 同システムでは、児童が各自のタブレット端末で学習。教員が児童全員の理解状況を把握し、個別指導による学習サポートを可能とする。2014年11月下旬から佐賀県多久市の公立小学校5年生を対象に実証実験を実施。児童の学力向上に加え、学習意欲においても一定の成果が確認されたという。

デジタル学習教材 小学5年生算数の例。解答を選択すると答え合わせと解説が表示される
その他画面例

 特徴は、学校現場で実績のある日本標準の教材を採用する点。シャープ 通信システム事業本部 モバイル祖リュション事業部長の辰巳剛司氏は「教育現場におけるICT教育の課題の1つが教材不足。日本標準の教材とシャープの電子書籍技術で不足を補う」と説明する。

 教育現場の課題としてはそのほか、「ネットワーク回線の細さ」「先生への負荷」「通常授業への影響」が挙げられる。これらに対してもそれぞれ解決策を提案している。

 ネットワーク回線の細さに対しては、学習ログや回答データの送信時のみ通信環境を利用する設計とし、通信環境に影響されることなく学習を進められるようにした。また、教材自体も単元別の小問で構成され、1日5分~10分の短時間で無理なく取り組めるため、通常授業に影響を与えずにすきま時間での学習が可能という。

 実証実験に参加した児童からは、「忘れている漢字や計算のやり方を復習できた。続けたらもっとできるようになると思った」「10分間のタブレットタイムは集中できた」という声が挙がった。朝のすきま時間の10分間の集中時間を取ったことが学習意欲の向上につながったほか、「副産物」として「朝の集中学習時間が習慣となると、ざわつきが減り、落ち着いた雰囲気も生まれた」と佐賀県多久市長の横尾俊彦氏は語る。

 教員は診断テストで各児童の現状の学力を診断できる。デジタルデータなので集計・採点が迅速に行えるのも特長だ。実証実験に参加した先生から「全国統一模試などは結果が戻ってくるのに時間がかかり内容を忘れてしまうが、これならすぐにフィードバックできて助かる」との声があがるように、弱点を克服するための個別指導プランを翌日からでも始められるのは強みとなる。先生からは「驚くほど学習意欲は高かった」という感想もあがった。

 自動正誤判定の仕組みも備える。たとえば算数の小問において手書き欄で計算し、選択肢から答えを選ぶ方式とすることで、解答と同時に正誤と解説が表示される。また、学習履歴機能で「児童がどこでつまずいているか」が即座に分かり、誤答の多い問題順に表示してクラス全体の苦手問題も分かるため、「先生の負荷を抑えられる」(辰巳氏)という。

運用イメージ図

 実証実験では、診断テストの総合正答率が国語は8ポイント、算数は12ポイント向上した。また、学力到達状況においても両教科ともにC層の割合が減少し、A層の割合が増加。「学力が底上げされる結果となった」(横尾氏)。

実証実験の定量的成果「学力が底上げされた」

 3社は全国の自治体や小学校に同システムを積極的に提案する考え。販売はマイクロソフトが協力。システム構成内容は、デジタル教材(診断テスト・指導問題)、児童用アプリ(Windowsタブレット対応)、教員用アプリ(サーバーアプリ)。児童用のタブレット端末やサーバー、通信環境も含めて提供する。商談開始時期は5月から。

 今後の展開としては、普通教室でのICT利活用に関するハンズオンセミナー「Windows in the Classroom」内でSTUDYFITを紹介するほか、クラウドサービス「Microsoft Azure」を活用し、評価版を全国展開(先着30校を予定)するとしている。

川島 弘之