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日本HPは「マジメ過ぎる」、新社長の吉田仁志氏が思い語る

【左】ジム・メリット氏、【右】吉田仁志氏

 日本HPは8日、新社長就任会見を開催。米HPシニアバイスプレジデント エンタープライズグループ&マネージングディレクター アジアパシフィック&ジャパン担当のジム・メリット氏と、新社長に就任した吉田仁志氏が登壇し、意気込みなどを語った。

 最初にメリット氏が登壇。「ビッグデータ」「クラウド」「モビリティ」「セキュリティ」といったIT業界の昨今のメガトレンドに触れ、「これまでのITとは根本から異なる“New Style of IT”への需要が高まり、それが企業への圧力となる。企業はリスクを抑えながら、新しいITへの移行を実現したいと考えている」と説明。その流れに対応すべく、日本HPが2012年度から取り組んでいる5カ年計画について、「私が2011年にHPにジョインしてから問題の特定、成長基盤の再構築などに注力し、3年でバランスシートの健全化に成功した」とこれまでの経緯を振り返った。

 この5カ年計画において、2015年度は「加速」の年だ。それは企業としての成長という意味があると同時に、IT業界の急速な変化に追随するための「加速」という意味も込められる。そのための象徴的な施策が、2014年10月に発表された「HP分社化」である。メリット氏は「分社化はまさにIT業界の変化に追随するためのもの。HPの“イノベーション”のDNAは共通文化として両社に継承させながらも、専門性を持った2社に分けることで、さらなるバリューを届けられると信じている」と語る。

5カ年計画

 分社化は2015年10月末を期限とし、エンタープライズ事業の「HP Enterprise」と、コンシューマ事業の「HP Inc.」の2社に分離される。グローバル共通の施策で日本も例外ではない。HP Enterpriseは「インフラ」「サービス」「ソフトウェア」「クラウド」事業を軸に580億ドルの売上規模に、HP Inc.は「パーソナルシステムズ」「プリンティング」事業を軸に570億ドルの売上規模の企業になるという。

日本HPは「マジメ過ぎる」

 そんな節目にある日本HPの新社長に就任する吉田氏。就任は1月1日付けなので「HPについて勉強中」と詳細な方針がまだ語られなかったが、「日本HPを選んだのはなぜ」について思いの丈を述べた。

 「年を取ってきて改めて“日本に貢献したい”という思いを抱くようになった。ではどう貢献する? 我々がこの業界でやってきたことよりもいい状態で次の世代に渡したい。HPはグローバルなトップ企業。外から眺めていても、愚直でまじめ、顧客志向が高く、すばらしい企業文化を持っていると思っていた。企業は社会に貢献しなければならない。そう考えたときに、HPの中でHPを元気にできれば、日本の顧客や社会を元気にできる。さらに世界にも貢献できる。これはいいチャンスだと思って(就任を)引き受けた」。

 「IT業界は変換期。IT企業はビジネスモデルを変化せざるを得ず、社会もこれまでと違ったあり方が問われている。それでもITの果たす役割は非常に大きく、IT業界でトップ企業のHPが果たす役割も非常に大きい。HPなら変革の先頭に立って、世の中を変えていけると深く信じている」とコメント。

 要約すると「IT業界で最も影響力の大きい企業」「(製品ポートフォリオが幅広く)ありとあらゆるものがあり、包括的なサービスを提供できる世界でも有数の企業」であることに加え、「企業文化は企業ごとに異なる。自分専用のものがあり、他人のものは使いたくない歯ブラシのようなもの。企業文化はまねできない。そんな中でHPの企業文化は好きになれた。自分が好きであることが重要」という思いが決め手だったようだ。

 今後の方針については「新米ほやほやで企業戦略はこれから考えなければいけない。今後90日間は顧客・パートナー・社員の声を聞いてHPを理解するところから始める」としつつも、「やりたいことはいくつかある。まずは“さらなる顧客志向”。もともと高いので、さらに今後は“さらに顧客の業績に貢献する”にはどうしたらいいかに取り組みたい」とした。

 一方、現時点で思う課題については、「まじめで大きな花火を打ち上げるというより、堅実にいい製品を出す印象。いいところでもあるが、少し“マジメ過ぎる”。外から見ていても実力の割に露出が少ないと感じていた。もう少し高い視点で議論をし、もっともっとアピールすべき」と語った。

川島 弘之