ENEOSグローブ、XenDesktopとHyper-Vによるデスクトップ仮想化環境を導入
BCP基盤を確立、計画停電による交通機関混乱時も自宅から業務を遂行
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(シトリックス)は13日、ENEOSグローブ株式会社が、XenDesktopとHyper-Vを用いたデスクトップ仮想化ソリューションを導入したと発表した。ENEOSグローブでは、これを用いてBCP(事業継続計画)の基盤を確立したほか、企業統合の円滑化や運用負荷の軽減も実現したという。
ENEOSグローブは、JX日鉱日石エネルギーのLPガス事業と、三井丸紅液化ガスの統合により、3月に誕生したLPガスの元売り事業者。合併前の三井丸紅液化ガスでは、パンデミックや大規模災害が発生し、出社できない状況であってもビジネスを継続できるBCP環境の実現を目指して、2010年春にデスクトップ仮想化の導入検討を開始していたという。
今回、XenDesktopが採用されたのは、WAN経由で全国の拠点からアクセスするユーザーのパフォーマンスにおいて、シトリックスの通信プロトコルであるICAが優れていたこと、また無償のCitrix Receiverによって、PCのみならずシンクライアント、タブレット端末など、さまざまな環境から仮想デスクトップへアクセス可能な点が評価されたため。
加えて、XenDesktopの管理コンソールが操作性に優れているほか、マスターとなるOSイメージを用意するだけで、複数の仮想デスクトップをすぐに一斉展開できる「プロビジョニングサービス」機能が用意されるなど、ツール類も充実していることも理由としている。
一方、新規導入のクライアントOSがWindows 7に決定していたことから、Windows 7と親和性の高いHyper-Vが、仮想デスクトップOS用のハイパーバイザーに採用された。このほか、今まで培ってきたWindowsの運用スキルを無駄にしなくても済む点、System Center Virtual Machine Managerによる運用管理が容易な点なども評価されたとのこと。
この環境では、3台の物理サーバー上でHyper-Vによる仮想環境を構築し、130台分のWindows 7が仮想デスクトップとして動作している。また、このほかに1台の物理サーバーを用意し、N+1の冗長性を持たせた。ストレージはデータコアのストレージ仮想化ソフト「SANmelody」ベースで構築し、物理サーバーとはFCで接続している。
クライアント側は、約120台のデスクトップ型シンクライアント端末を導入し、WAN経由でXenDesktopにアクセスする。社外からのアクセス時は、DMZセグメントにCitrix Access Gatewayを設置し、SSL VPNによるセキュアな通信を実現。社外アクセスでは無線LAN や3Gの通信網を通じて、タブレット型端末も利用するとのことだ。
こうしたソリューションの利用により、ENEOSグローブでは、業務の継続性が大幅に向上し、社員が出社できない状況でも、自宅などから社内システムへアクセスして業務が行えるようになった。実際に、東日本大震災の影響による計画停電で交通機関の運行が乱れ、一部社員の出社が不可能になったものの、自宅の個人PCから会社のデスクトップ環境
にアクセスし、必要な業務を遂行できたという。
また、ENEOSグローブが発足する際の企業統合にも貢献し、統合による従業員の増加に対して、クライアント端末を人数分用意するだけで、OSやアプリケーションの端末へのインストール作業を行わず、データセンターだけで準備作業を進められたとしている。
なお、この案件はデスクトップ仮想化ソリューションにおける日本マイクロソフトとシトリックスのアライアンスによるもの。システム構築は日本オフィス・システム株式会社が担当し、2011年2月末までの4カ月間という短期間で、検証、構築などを含むすべての作業を完了した。
さらにデスクトップ仮想化と同時にサーバー仮想化も実施し、7拠点に分散設置されていたファイルサーバーをデータセンターに集約。メールシステムを、Linuxベースのメールサーバーから仮想サーバー上のExchange Server 2010に移行している。