コンテナ型データセンター「SGI ICE Cube」拡充、他社製品も搭載可能に
マーケティング本部 データセンター戦略企画担当部長の増月孝信氏 |
日本SGI株式会社は6日、モジュラー型データセンター「ICE Cube」のラインアップ拡充を発表した。新たにマルチベンダー対応の「ユニバーサルモデル」などを追加する。販売開始は同日より。受注生産のため、価格は個別見積もり。
ICE Cubeは、全長20フィート(約6m)あるいは40フィート(約12m)のコンテナに、圧倒的な集約率でサーバー・ストレージを搭載できる、可搬式のデータセンター。構築における初期投資の軽減、導入・運用管理の簡素化、構築期間・導入時間の短縮などが可能となる。消費電力の削減もメリットで、独自の省電源供給技術や冷却効率を優先した専用の設備設計により、PUE(電源使用効率)1.12未満を実現している。
従来より提供している「デュアルローモデル」は、奥行きが半分のハーフデプスサーバー「Rackable」専用モデル。この薄さと前面メンテナンス機構により、コンテナ内部に2列のラック列を並べられ、最大1540Uを搭載できるのが特徴だった。
ICE Cubeの特徴 | 従来型とモジュラー型の電力コストの差 |
■マルチベンダー対応の「ユニバーサルモデル」
ユニバーサルモデルの概要 |
これに対して、ユニバーサルモデルでは通常の19型ラックを採用。SGI製品および他社製サーバー・ストレージを含むあらゆるラックマウントシステムを搭載可能で、コンテナの大きさ、ラックの数、設置方式、消費電力力に応じて4機種を用意している。冷却方式に「水冷式」のほか、初となる「空冷式」を用意したのも、ユニバーサルモデルの特徴。
ラインアップは、19型ラックがあらかじめ統合された「固定ラック型」と、標準ラックをコンテナに搬入する「ロールイン型」の2種類。前者は高密度製に優れ、後者は既存資産の再利用やほかのデータセンターへの移設などに柔軟に対応する。さらに固定ラック型には「水冷・電源容量優先モデル」と「水冷・密度優先モデル」、ロールイン型には「水冷モデル」と「空冷モデル」を用意し、全4機種を取りそろえた。
これらユニバーサルモデルでは標準サイズのラックを搭載するため、ラック列は1列までに制限される。このため、2列ラック方式のデュアルローモデルよりラック最大搭載数こそ減るが、水冷・電源容量優先モデルで最大4万6080コア、水冷・密度優先モデルで最大29.8ペタバイトのストレージ容量に対応するなど、拡張性は従来モデルを上回っている。
新冷却方式の空冷では、ITモジュール・断熱クーラー・変圧器をセットにした「エアー・コンテナ」を採用し、「フィルターを用いて排熱を外に出したり、あるいは寒冷地の場合、排熱と外気を混ぜ合わせて最適な室温とする仕組みを実現。チラーなどの水冷設備を不要としたことで、さらなるTCO削減が見込める」(マーケティング本部 データセンター戦略企画担当部長の増月孝信氏)としている。
ユニバーサルモデル・空冷式の概要 | エアー・コンテナの概要 |
■「デュアルローモデル」でも他社製品を一部搭載可能に
一方、デュアルローモデルでも、「ハイブリッド型」2機種を新たに追加する。従来通り、ハーフデプスラックを2列に並べるのだが、19型ラックも2本だけ搭載。ユニバーサルモデルと比べて台数に制限はあるが、一部、他社製品も搭載可能にしている。
今回の新モデルを加えて、ICE Cubeは2モデル全9機種のラインアップとなる。
デュアルローモデルのハイブリッド構成 | デュアルローモデルの導入事例 |
■建築内部に設置すれば、法規制も問題なし
ICE Cubeモデル構成一覧 |
米国などでは導入が進むモジュラー型データセンター。日本では、建築基準法の対象となってしまうなど、法規制の面から導入しづらい状況が続いている。しかし「建築物の内部に設置する場合は当然、建築基準法の対象外となる。コンテナ型というと、どうも“野ざらし”のイメージが付きまとうが、実際は巨大な倉庫など建築内部に設置するケースも多い」(増月氏)として、法規制の不安を払しょく。
さらに「日本には土地がないといった話もあるが、都市型にこだわらず、比較的安価な地方都市に目を向ければ、工場遊休地など再利用可能な敷地は十分存在する。また、日本の気候はコンテナ向きではないといった声も聞くが、SGI ICE Cubeは非常に柔軟な環境に対応するよう設計されている。セキュリティも、建築内部に設置すれば安心」と、日本での導入も特に問題ないとコメントした。
5月には、1)アセスメントサービス、2)設置環境の調査、3)設備環境の設計支援、4)システムアーキテクチャ設計支援、5)設置作業支援、6)運用・保守、といった豊富なソリューションを提供するSGI ICE Cube構築支援サービスなども開始している。こうしたサービス面も充実させて、日本初の採用を目指す。