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日本IBM、PaaS型のブロックチェーン・プラットフォームを10月から提供開始

 日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は、Linux Foundationが提唱するブロックチェーン フレームワーク「Hyperledger Fabric 1.0」をベースとしたIBM Cloudのフル・マネージド・サービス「IBM Blockchain Platform」の国内提供を、10月から開始することを発表した。

ブロックチェーン活用に必要なさまざまな要素を提供

 IBM Blockchain Platformでは、「分散台帳」「スマート・コントラクト」「合意形成」「暗号技術」の機能に加えて、ブロックチェーンを活用するアイデアをすぐ形にできるアプリケーション開発環境「Hyperledger Composer」、コンソーシアム型のブロックチェーン・ネットワークの形成と運営を支援するツール群、IBM Cloud経由で本番利用に求められるシステム性能と高度なセキュリティが提供される。

IBM Blockchain Platformの特徴

 用途や規模に応じて「Entry」「Enterprise」「Enterprise Plus」の3つのプランが用意されている。Entryは主に実証実験や開発向けのプランで、合意形成の機能が省略されており、ピア時間単位の課金方式で1時間あたり52.5円となっている。Enterpriseは本番利用を想定した中核プランで、参加メンバーおよびピアインスタンス単位の課金方式で、月額30万円からとなっている。この中には月額の基本料金13万8600円が含まれている。Enterprise Plusは、よりセキュリティ要件の高い本番環境として提供されるコンテナ占有型プランだ。利用料金はリリース時に明らかにされるという。

 いずれのプランも、日本を含む世界5カ国のデータセンターにあるLinuxサーバー「LinuxONE」上に構築されるが、ポリシー的にデータを国外に持ち出せないといった場合には、国内データセンターのみで対応することも可能。また今後は、5カ国以外の国のデータセンターでも動作させる予定であるという。

用途や規模に応じて「Entry」「Enterprise」「Enterprise Plus」のプランを選べる

 日本IBM 執行役員 インダストリー・ソリューション事業開発担当 鶴田規久氏は、IBMがグローバルで展開しているブロックチェーンのプロジェクトはおよそ400あり、そのうちの10%は日本のプロジェクトであることを紹介した。さらに鶴田氏は「これまではブロックチェーンは実証実験の段階だったが、いよいよ本格展開の年になった」と述べ、前述した400プロジェクトの中には、実際の業務で利用する本番稼働のプロジェクトも含まれていると説明している。

日本IBM 執行役員 インダストリー・ソリューション事業開発担当 鶴田規久氏

 日本IBMがフォーカスする日本での事業展開予定エリアは、「世界貿易」「地方創生」「公共サービス」の3つであると鶴田氏は説明する。世界貿易分野には多くのステークホルダーがいるにも関わらず、現状では紙ベースのやりとりや手作業などの非効率なプロセスによって、高コストで脆弱な仕組みとなっていることが多い。しかし、ブロックチェーンを導入すると、ペーパーレス化やトレードプロセスの可視化が進み、世界貿易のコスト・リードタイムを大幅に削減し、国際競争力を向上することができるようになるという。

世界貿易分野におけるブロックチェーンの活用。コストやリードタイムを削減し、国際競争力を向上させることができる

 地方創生では、地域の銀行、および事業会社との間でn対nの法人顧客向けサービスプラットフォームを構築し、顧客利便性の向上、口座振替のコストダウン、サービス品質向上、地方金融サービスの提供、新たな金融ビジネスモデル、地方発金融サービスなどを実現していくという。また、地方公共団体の収納業務効率化、行政サービスの向上、新たなビジネスの創造といった地域の活性化に貢献する仕組みも展開していく。

地方創生分野におけるブロックチェーンの活用。地域の銀行、事業会社、法人顧客、あるいは地方公共団体とブロックチェーンによってつながることで、地域の活性化に貢献する

 公共サービス分野では、主に電子行政の実現に向けたコアテクノロジーとして提供していく。法人登記、不動産登記、医療情報管理、食品安全管理など省庁・業界横断的な業務の効率化を目指すという。

公共サービスにおけるブロックチェーンの活用。省庁・業界横断的な業務を効率化する電子行政の実現を目指す。

 日本IBM 執行役員 サーバー・システム事業部長 朝海孝氏は、ブロックチェーンプロジェクトで必要なこととして「ブロックチェーンを本番環境で本格展開するにあたっては、俊敏性以外にも、セキュリティ、信頼性、拡張性が重要になる」と述べた。さらに、IBM Blockchain PlatformのベースにIBMがHyperledgerを選んだ理由について朝海氏は、「ブロックチェーンには、Hyperledger以外にも、ビットコインやEthereumなどがあるが、さまざまなユースケースに対応していることや、エンタープライズ向けのセキュリティや合意形成モデルを実現できることなどから、ビジネス用途の本格展開に最適な技術としてHyperledgerを選んだ」と述べた。

日本IBM 執行役員 サーバー・システム事業部長 朝海孝氏
本格展開に必要なブロックチェーン技術の要件

 また、朝海氏は「これまでIBMでは、ブロックチェーン以外にも、今後の主流になると予想されるさまざまな技術に先行投資し、エンタープライズレベルに引き上げてきた。その中でもっともわかりやすい例はLinuxだ」と述べ、IBMが今後の主流になる技術としてブロックチェーンにさらに注力することを明らかにした。