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コマツとNTTドコモ、SAPジャパン、オプティムの4社が建設業向けIoTで協業
建設生産プロセスの新プラットフォーム「LANDLOG」を共同企画・運用
2017年7月20日 06:00
株式会社小松製作所(以下、コマツ)、株式会社NTTドコモ、SAPジャパン株式会社、株式会社オプティムは7月19日、建設業務の生産プロセスにかかわる土・機械・材料などのあらゆる「モノ」をつなぐ新プラットフォーム「LANDLOG」(以下、ランドログ)を、4社共同で企画・運用することに合意したと発表した。10月をめどに建設事業者向けに提供開始する予定だ。
7月19日に行われた共同会見では、「ランドログ」を立ち上げる背景や狙い、プラットフォームの概要および協業各社の役割について説明した。
コマツでは、建設業界の大きな課題となっている労働力不足に対して、2015年2月から建設現場向けソリューション「スマートコンストラクション」を展開し、現場にかかわるすべてのものをICTで有機的につなぎ、安全で生産性の高いスマートな「未来の現場」の創造を推進している。「スマートコンストラクション」のコンセプトは、着実に建設現場に浸透しており、今年6月末時点で累計導入現場数は3308まで拡大しているという。
こうした中で、今回、新たなプラットフォーム「ランドログ」を4社共同で立ち上げる狙いについて、コマツ 代表取締役社長の大橋徹二氏は、「現在、『スマートコントストラクション』では、生産現場のIoT活用により、建設生産プロセスの全プロセスを3次元データでつなぎ、施工現場の見える化を実現している。次のステージでは、施工現場を最適化し、安全で生産性の高い現場の実現を目指すことになるが、そのためには、当社だけでなく、高度な技術力を持つソリューションパートナーとの協業が必要であると判断。当社のIoTの取り組みを長年支えてきたNTTドコモ、SAPジャパン、オプティムと共同で、建設生産プロセス全体のIoT基盤となる新プラットフォーム『ランドログ』を企画・運用していくこととした」と述べた。
「ランドログ」では、従来の「スマートコンストラクション」で運用しているプラットフォーム「KomConnect」をオープンプラットフォームとして整備。建設生産プロセス全体にかかわる土・機械・材料などのあらゆる「モノ」のデータを「ランドログ」に集約し、そのデータを施工会社などの要望に応じてさまざまなアプリケーションプロバイダに提供する。
アプリケーションプロバイダは、建設生産プロセス全体の安全、生産性を向上させるために、「ランドログ」に蓄積されたさまざまなデータを用いて、アプリケーションを開発することが可能になるという。「KomConnect」が建設機械による施工プロセスを中心に構築されたプラットフォームであるのに対し、「ランドログ」は建設生産プロセス全体を包含するプラットフォームという位置づけとなる。
「『ランドログ』は、建設生産プロセス全体のあらゆる『モノ』のデータをリアルタイムに可視化するとともに、可視化されたビッグデータを解析することで、施工現場の最適化を図ることができる。このプラットフォームに多くのソリューションプロバイダが参加し、安全で生産性の高い現場を実現するアプリケーションが生み出されることに期待している。将来的には、日本だけでなく、グローバルでの展開も計画しており、建設業界の枠を超えた幅広い知見を交えることで、建設生産プロセスのイノベーションを一気に加速させていく」と、大橋氏は今後の展開に意欲を見せた。
協業各社の役割としては、NTTドコモでは、LTE・LPWA・5Gなど無線通信に関するノウハウ・サービスを提供するほか、IoTなどのソリューション構築とデータ収集・可視化・分析に関するノウハウを提供する。
共同会見であいさつしたNTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏は、「コマツとは、これまでも建設機械の遠隔監視において、当社のモジュール回線を採用するなど、通信機器関連での支援を行ってきた。今年5月には、5Gを用いた建設機械の遠隔制御システムの開発に向けた実証実験を開始することを発表した。そして、今回の『ランドログ』では、施工現場で扱うデータの容量や種類に応じて最適な通信環境を当社がサポートしていく。また、農業IoTやAIタクシーなどを通じて蓄積したデータの収集、可視化、解析のノウハウも提供し、安全で生産性の高い未来の建設現場の実現に寄与していきたい」との考えを示した。
SAPジャパンでは、デザインシンキングとSAP Leonardoによって新プラットフォームのビジネスを支援していく。SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏は、「IoTという言葉が生まれる前から、いち早くインターネット活用に取り組んでいたコマツが推進する新プラットフォームに参加できることをうれしく思っている。今回、当社では、デザインシンキングの手法を用いて、利用者の視点から『ランドログ』のビジネスモデルの創出をサポートする。また、ビジネスモデルの構築に当たっては、SAP Leonardoを活用し、新プラットフォームのデジタルシステム全体を下支えしていく。これは、日本初のグローバルプラットフォームの展開になる」と語った。
オプティムでは、AI・IoTおよびCloud IoT OS活用などに関するノウハウを提供する。オプティム 代表取締役社長の菅谷俊二氏は、「当社は、これまでに農業や医療、介護の分野においてIoTプラットフォームを提供してきた実績がある。そのノウハウをベースに、今回の『ランドログ』では、大きく4つの役割を担っていく。まず、Cloud IoT OSを活用し、セキュアかつスケーラビリティに優れたIoTプラットフォームをスピーディに構築していく。次に、膨大なIoTデータを各建設現場でAI処理できるよう、エッジコンピューティングテクノロジーを提供する。3つめは、パートナーが参加しやすいオープンプラットフォームとし、エコシステム構築を支援する。そして、最後に大きな役割として、当社自身がアプリケーションプロバイダとなって、建設現場の生産性向上に役立つアプリケーションを提供していく」と、「ランドログ」で同社が担う役割について詳しく説明した。