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富士通の2016年度第3四半期連結決算は減収増益、税引前利益は前年同期の4倍に
2017年2月1日 00:01
富士通株式会社は1月31日、2016年度第3四半期(2016年4月~12月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比6.1%減の3兆2005億円、営業利益は前年同期から616億円増の632億円、税引前利益は前年同期比305.2%増の681億円、当期純利益は前年同期の106億円の赤字から黒字転換し、322億円となった。
富士通 取締役執行役員専務兼CFOの塚野英博氏は、「円高の減収影響が1850億円あり、為替を除く実ビジネスベースでは若干の減収。海外サービスおよびデバイスソリューションの減収が大きく、国内サービスおよびネットワークプロダクトの増収ではカバーできなかった。また営業利益では、ビジネスモデル変革費用を除いた通常ビジネスで471億円の増益となった。ネットワーク、ユビキタスが貢献した」と総括した。
【お詫びと訂正】
- 初出時、「通常ビジネスで421億円の増益」としておりましたが、「471億円」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。
また、社内計画に対する進ちょく状況についてもコメント。「2016年10月発表の計画値に対しては、若干、好転している。為替については、ドルに対して、ユーロ安および円安が進んだ影響があり、テクノロジーソリューションおよびユビキタスソリューションは下振れ、デバイスソリューションが好転した。連結合計売上高では、ユーロ対ドルの影響が大きく、2けた億円前半の下振れとなった」という。
また、「一方、実ビジネスにおいては、ネットワークおよびユビキタス、デバイスが好転。海外サービスが下振れした。海外サービスでは、新規商談の獲得が計画から遅れている。デジタルサービスのポートフォリオの絞り込みやデリバリー体制の構築に時間を要している。市場でもコストダウン要求が高まり、商談の進ちょくが遅くなっている。全体では2けた億円の好転となっている。また、テクノロジーソリューションは、大きな減収にはなっているが、ほとんどは為替の影響である。為替の影響を除いた実ビジネスについては、手堅いと考えている」などと述べた。
セグメント別業績
セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比5.8%減の2兆1837億円、営業利益は同54.5%増の1039億円。そのうちサービス事業の売上高が同6.4%減の1兆8455億円、営業利益が同2.5%減の824億円。また、サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は前年同期比2.1%増の7162億円、インフラサービスの売上高は同11.2%減の1兆1293億円となった。
システムプラットフォームは、売上高が前年同期比2.2%減の3381億円、営業利益は388億円増の215億円。そのうち、システムプロダクトの売上高は同4.7%減の1631億円、ネットワークプロダクトの売上高は同0.3%増の1750億円となった。
「第3四半期においては、サービスは海外を中心に減収となったほか、システムインテグレーションが金融分野向けの大型プロジェクトの商談がピークを越えたものの、製造業、サービス業に加えて、通信キャリア向けが伸長。ソリューション/SIは、上期に引き続き、過去最高だった前年実績を上回り、増収を継続した。インフラサービスでは、為替影響を大きく受けたほか、海外サービスが欧州を中心に低調。だが、国内はアウトソーシングを中心に増収になった。しかし、前年の公共系の大型商談の反動影響をカバーできなかった。また、欧州でのデジタルサービスへのシフトにかかわる費用の一部を第3四半期から計上した影響が出ている」とした。
また、システムプラットフォームにおいては、「ネットワークプロダクトは、国内キャリアの投資前倒しなど、携帯電話基地局の所要増により増収。北米が通信キャリア向け新機種購入の切り替え時期に当たり、光伝送装置を中心に減収となった。新機種のビジネスを確実に立ち上げるとともに、機器ビジネスからソフトウェア、サービスへのシフト、拡大を進める」とした。
ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比2.8%減の7432億円、営業利益は417億円増の284億円。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が前年同期比6.9%減の4447億円、モバイルウェアの売上高が同4.2%増の2985億円となった。
「第3四半期のPCの売上高はほぼ前年並。国内は法人向けに伸長して増収したが、海外は為替影響もあり、減収となった。携帯電話は、スマートフォン市場の成長鈍化の影響を受けた。モバイルウェアは為替影響を受けたものの、国内および北米の需要が伸長した。だが、すべてのビジネスが増益となり、PCについては、開発費を中心とする費用の効率化、円高によるドル建て購入部材のコストダウン効果があった。携帯電話もコストダウンの効率化を進め、利益が改善した」と説明した。
デバイスソリューションは、売上高が前年同期比12.3%減の4065億円、営業利益は同81.1%減の46億円。そのうち、LSIの売上高は同17.9%減の2007億円、電子部品は同6.2%減の2066億円となった。
「LSIは、スマホ向けの所要減に加え、円高の影響を受けた。また、電子部品も円高のマイナス影響を受けた。だが、LSIはスマホ向けの所要減が底を打ち、回復の兆しを見せたのに加え、円安傾向も貢献した」と語った。
通期見通しは据え置きも、セグメント間で予想を変更
一方、2016年度(2016年4月~2017年3月)通期業績見通しは据え置き、売上高は前年比5.0%減の4兆5000億円、営業利益は同0.5%減の1200億円、当期純利益は同2.0%減の850億円とした。だが、セグメント間での予想を変更している。
テクノロジーソリューションに関しては、サービス事業において、欧州の売り上げを400億円減額し、利益では、ビジネスモデル変革費用の組み替えがマイナス60億円、為替影響などを含めてマイナス70億円を減額。「欧州ではデジタルサービスの立ち上げを進めており、これを確実に実行することが大切だと考えている。ビジネスモデル変革による事業基盤の強化により、来年度以降に効果を出したい」とした。システムプラットフォームでは、システムプロダクトで為替影響として20億円を減額。「ネットワークプロダクトについては、前倒しが中心であり、第4四半期にもう一段の所要上積みを期待している」とした。
ユビキタスソリューションは、好調な実績を反映して、売上高において、モバイルウェアで250億円増額、携帯電話も50億円を増額した。利益面では、ビジネスモデル変革費用の組み替えがマイナス10億円、為替の影響でマイナス50億円、PCおよび携帯電話の費用効率化によってプラス60億円。「第4四半期の計画値は、保守的な数字にしている。Windows 7の販売終息通知の影響で、法人需要が上期に進んだこと、部材調達価格がドルベースで上昇し始めていること、新機種投入を中心に開発投資が増加することなどの懸念材料が影響すると見ている」と説明した。
デバイスソリューションは、第3四半期における為替影響でプラス20億円。「所要の減少が、底を打って回復基調が見えてきたので、第4四半期に織り込んでいた所要減に対するリスクを取り除いた」と説明した。
ニフティ再編を発表、コンシューマ事業は売却も商品ブランドは当面継続
なお、PC事業に関するレノボとの交渉については、「レノボとの戦略的な提携は、どうやったら事業を強く、大きくしていけるかということを子細に議論をしているところである。交渉というよりも、どうやって事業を強くするのかということを考えている段階であり、少々時間はかかっているが、年度内には確実に作り上げたい。もうしばらく見守ってほしい」と述べた。
携帯電話事業については、「さまざまな策を検討しているが、現時点で話ができるレベルのものはない」と述べた。
また、この日発表したニフティの再編については、コンシューマ向け事業を4月1日付けで、ノジマに譲渡することについても言及。「ノジマに250億円で譲渡することになる。昨年10月以降、さまざまな候補先のなかから検討をしてきた。事業や従業員の雇用、成長性の問題からノジマを選択した。リストラが発生することはない。また、事業をより強くする形にしたいと考えており、それを支援したい。ノジマの実店舗や営業力により、サービスやソリューションを広げていくことを期待したい」と述べた。また、「ニフティのブランドは、ノジマに移行するが、法人向けサービスのニフティクラウドは商品ブランドとして残し、当面、継続していくことになる」とした。
トランプ政権による影響については、「法人減税やインフラ構築により、経済全体が活性化され、顧客におけるICT投資が加速することを期待しているが、懸念事項は、過度にネガティブなものが見えてくる点。ポジティブな面とネガティブな面の双方を想定している」と述べた。