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あらゆるものがつながり、スマートになる世界にチャンスがある――、Salesforce.com幹部
Salesforce World Tour Tokyo 2016基調講演
2016年12月14日 06:00
株式会社セールスフォース・ドットコムは、国内最大規模のクラウドイベント「Salesforce World Tour Tokyo 2016」を、2016年12月13日、14日の2日間、東京・芝公園のザ・プリンスパークタワー東京および虎ノ門の虎ノ門ヒルズフォーラムで開催している。
経営者をはじめ、ビジネスユーザー、マーケッター、ITマネジャー、開発者、パートナー、中堅中小企業、非営利団体、スタートアップ企業などが参加。200を超えるブレークアウトセッション、ゲストを交えた講演などを用意し、同社では、「新たなアイデアやイノベーション、インスピレーションを体感できる場」と位置づけている。
また、展示会場となるCloud Expoでは、Salesforce EinsteinやLightning、Mobile、Quipといった最新クラウドサービス、業種向けソリューションを一堂に展示。75社以上の企業が最新ソリューションを紹介している。
初日の基調講演では、セールスフォース・ドットコムの代表取締役会長兼社長の小出伸一氏、米Salesforce.comのエグゼクティブバイスプレジデントのアダム・ブリッツァー氏が、「Our Path Together―ともに進む。ともに目指す」をテーマに講演した。
小出会長兼社長は、「今回のSalesforce World Tour Tokyo 2016には、1万1000人の事前登録があり、約100万人がネットで参加することになる。このイベントを通じて、今年秋に米サンフランシスコで開催し、17万人が訪れたDreamforce 2016のパッションを体感してほしい」と切り出した。
また、Salesforce.comの売上高が約8000億円の売上高に達し、ソフトウェア会社として4番目の規模に達していること、2万4000人の社員が勤務していることなどに触れながら、「グローバル企業が、グローバルで展開する上では、信頼と成長、イノベーションとともに、平等(Equality)が、重要な要素であると考えている。セールスフォース・ドットコムでは、今年採用した新卒のうち、40%以上を女性が占めている」と語った。
さらに、「日本に向けては、Salesforce.com CEOのマーク・ベニオフが積極的な投資を続けており、今年11月には、日本法人の従業員が1000人を超えた。私が社長に就任した2年半前には450人であり、倍増以上になった。パートナーは388社に達し、認定開発者数は7400人に増えている。来年には、東京に続き、関西に国内第2データセンターを稼働させることができる。Salesforce.comは、日本を重要な国として投資してきた。これからも日本への投資を続け、日本の企業の成長を支援していく」とした。
続いて、米Salesforce.com Salesforce Sales Cloud GM&EVPのアダム・ブリッツァー氏が講演。ブリッツァー氏は、日本で4年間を過ごし、柔道で三段を持つこと、日本人の妻を持つこと、子供の母国語が日本語であることなどを、ユニークなエピソードを交え、流暢な日本語で自己紹介し、会場を涌かしたあと、講演そのものは英語で行った。
「いま、顧客の時代が訪れている。Salesforce.comは、顧客との関係を深めるために、1999年から17年間にわたって、クラウド、AppExchange、Force.com、Chatter、Salesforce 1、Lightningというように、次々と革新に取り組んできた。そして、これで終わるわけではない。あらゆるものがつながり、あらゆるものがスマートになり、そこにわれわれのチャンスがある。最新の技術としてAIのジャーニーをスタートしたところであり、Salesforceは、Einsteinによって、世界で最もスマートなCRMになった。これは、デベロッパーだけでのものではなく、管理者だけのものではなく、エンドユーザーが活用できるものである。顧客との関係を深め、誰もがデータサイエンティストになることができる。160人以上のトップデータサイエンティストの能力を活用して実現したものであり、その価値を提供する。今後のエンタープライズソフトウェアの変革には、インテリジェンス、スピード、生産性、モバイル化、すべてがつながるという5つの要素が必要である」などとした。
エンタープライズソフトウェアの変革のための5つの要素を実現するために、Salesforce.comでは、Lightning、Commerce Cloud、Quip、LiveMessage、MySalesforce 1、Thunder IoT Cloudなどを提供。さらに、Salesforce Customer Success Platformにおいて、Einsteinが重要な役割を果たすことを示した。
続けて、セールスフォース・ドットコム プロダクトマーケティングディレクターの田崎純一郎氏が登壇。「AIを、仕事のなかに組み込むにはクリアしなくてはならない課題がある。インテリジェンスを手に入れるためには、さまざまなデータを集めること、分析を行うための前処理や、構築するモデルを常に更新する必要がある。これらの作業を行う役割を担うデータサイエンティストが世界的に不足している。これを解決するのが、Einsteinである」とした。
また、この命名の理由として「われわれが、複雑なものをシンプルにするために、参考にしたのがアインシュタイン博士。複雑な世界、複雑な宇宙を、『E=mc2』というシンプルな公式で表現した。CRMをインテリジェントにするための公式は、顧客データとAI、Salesforceのプラットフォームを組み合わせである。これにより、最もシンプルなCRMを実現することができる。Salesforceのプラットフォームは、一番下にセキュアなインフラストラクチャがあり、その上にThunderなどのデータ層があり、その上にLightingやアプリケーションがあった。これにEinsteinが加わる」とする。
そのEinsteinは、プラットフォームのひとつとして、Salesforce Customer Success Platformに組み込まれるとのことで、「さまざまなデバイスからデータを集め、これを分析することで、発見、予測、推奨、自動化といったカテゴリにわけてアウトプットし、ビジネスアプリに組み込んだ形で利用できる。これが、Einsteinの大きなポイントになる」と述べた。
一方、「顧客の時代」を代表する企業として、ソニーマーケティングの代表取締役社長である河野弘氏と、日立の執行役専務 サービス&プラットフォームビジネスユニットCEOの小島啓二氏が登壇。それぞれの活用事例について説明した。
ソニーマーケティングの河野社長は、「ソニーでは、プロダクト軸のコミュニケーションから、顧客軸のコミュニケーションにシフト。顧客の利用シーンをもとに、購入前、購入時、購入後、満足度を高めることで、新たなニーズへとつなげていくことができるカスタママーケティングを実現している。セールスフォース・ドットコムの設計思想と、実践したいマーケティングの考え方が合致している点が、セールスフォースを採用した最大の理由。今後は、サービスをマーケティングの究極の形にしたい。それを実践する場として、新たにαプラザの開設を発表した。顧客のタッチポイントを充実させ、既存の顧客の満足度を高めることに取り組んでいく」とした。
ソニーマーケティングでは、Marketing CloudおよびService Cloudを活用することで、ソニーストアでの顧客接点のほか、アプリやWeb、eメール、カスタマサポートなどのさまざまなチャネルでの顧客接点を強化。これらの接点での各種活動を時系列でとらえ、継続的なサポートを実現している点が特徴だ。カスタマサポートでは、ユーザーの利用状況などをもとにして、Einsteinが、カメラユーザーに対して、センサークリーニングなどのサービスを提案することを推奨。一方で、ソニーストアでは、ビーコンを設置しており、来店客のスマホに最適な情報を通知するといったことも行っているという。
また、日立の小島執行役専務は、「デジタルトランスフォーメーション・ジャーニーを始めたいと考えている企業が多く、そうした企業を支援したい。日立は、IoTプラットフォームであるLumadaにより、われわれが蓄積した知見を活用し、それを提供していくことができる。Lumadaは、すでに1000社以上から声がかかっているが、そのなかでも最も多いのが、デジタル技術を活用し、働き方を変えて、クリエーティブな作業を増やしたいという要望である。フィールドで働く人々にアクセスし、改善することができるのがセールスフォース・ドットコムの特徴。そうした点で、今後もパートナーシップを組みたい」とした。
日立では、Sales Cloud EinsteinおよびSalesforce CPQ、Field Service Einstein、App Cloud Einstein、Analytics Cloud Einsteinなどを活用。ビデオを通じて、日立製作所の東原敏昭社長は、「セールスフォース・ドットコムはカスタマとの連携に優れている。日立とセールスフォース・ドットコムが組めば、協創が実現できる。顧客ニーズを満たすビジネスモデルが創出できる。この協業には期待している」と発言。「データとデータをつなぎ、人と人をつなぎ、ビジネスとビジネスをつなぐことで、新たな価値を創造。人々のクオリティ・オブ・ライフを向上させたい」とコメントした。
海外売上比率が3分の2を占めるヘルスケアビジネスの例をもとに、各国や案件ごとに管理指標や受確度などを統一。グローバルレベルで共通の情報管理を実現。横のつながりや横のつながりが柔軟にできるようになったという。そのなかで、My Salesforce Oneにより、日立独自のモバイルインターフェイスを採用したことや、さらに、Einsteinでは、これまでの商談の傾向を分析し、商談の受注率を高めるためのポイントを提案。それを活用することで商談を成功に導くといった活用事例を紹介。さらに、機器に設置したセンサー情報などをもとに、ヘルスケア機器の予防保全に活用している例を示した。