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NEC、マルチデータセンター管理に対応した「NEC Cloud System(OSS構築モデル)」新版

 日本電気株式会社(以下、NEC)は2日、OpenStackを活用したクラウド基盤の構築と運用を支援するソリューション「NEC Cloud System(OSS構築モデル)」において、機能強化を行ったと発表した。

 NEC プラットフォームサービス事業部 主席システム主幹の上坂利文氏は、「サーバー仮想化実施企業のうち、7%の企業がOpenStackを本番環境で使用しており、ICT企業では40%近くが導入に向けて取り組んでいる。利用者が、アーリーアダプターからアーリーマジョリティへとシフトしはじめているなかで、多くの企業から、OpenStackに精通しているエンジニアが少ないこと、半年ごとのメジャーリリースに追随できないなどの課題が浮上している。また、ネットワーク環境の構築、管理が難しいといった問題も出ている。今回のNEC Cloud System(OSS構築モデル)の機能強化は、こうした課題を解決するものになる」と位置づけた。

NEC プラットフォームサービス事業部 主席システム主幹の上坂利文氏
国内企業におけるOpenStackの導入状況
期待効果と課題
今回の強化ポイント

 2015年10月にリリースされたNEC Cloud System(OSS構築モデル)は、今回の機能強化が2ndリリースとなり、OpenStackの異なるバージョンが混在するマルチデータセンター環境でも、統合ポータルによる統一した運用を実現したのが特徴だ。

 「KiloやLibertyといったOpenStackの異なるバージョンがリージョンごとに混在した場合は、現時点ではHorizonにおける一元管理ができないが、異なるバージョンのIaaS基盤でも、統合ポータルでの一元管理を可能にした。半年ごとのバージョンアップに追随できない企業においても、新たなバージョンをマルチデータセンター環境で利用できるようになる。当然、次期バージョンのMitakaにも対応しており、ソースコードはOSSコミュニティに還元して、OSS化する予定である」とした。

 異なるバージョンを使用している各データセンターからリソースの払い出しや、データセンター間のネットワーク設定をポータルから一括して行える。

NECクラウド基盤へのOSSの適用
NEC Cloud System(OSS構築モデル)とは
マルチバージョンに対応した統合ポータルを提供

 さらに、データセンター間のディザスタリカバリの仕組みを提供。データセンター内ネットワークに適用していたSDNを、データセンター間のネットワークにまで拡大することで、マルチデータセンターをひとつの仮想データセンターとして、統合管理できるようにした。データセンター間のネットワークを介して、データを転送し、災害発生時にはバックアップ側のシステムを素早く復元し、事業継続性を向上させる。

 「NEC神戸データセンターとNEC神奈川データセンター間で、ディザスタリカバリ環境を構築できるサービスを提供しており、これを活用したものになる。OpenStackだけでは実現できない部分をOSSを組み合わせて実現する」という。

データセンター間のディザスタリカバリの仕組みを提供する

 また、マルチデータセンター環境に対応した階層化されたポリシー管理を提供。管理者やテナント利用者の両方で、マルチデータセンター環境対応した複数のポリシー定義機能により、ポリシー情報をデータセンター間で共有。マルチデータセンター環境下での階層関係を管理することで、上位管理者による集中管理から、下位管理者による分散管理など、管理者への権限移譲や役割の適正化を実現。セキュアなデータセンター環境を構築できるという。「すでにOSSコミュニティに還元し、OSS化する予定ではあるが、すでに、具体的なユーザーニーズとして存在する要件であることから、NECが先行する形で提供することになる」とした。

 そのほか、サービス事業者および企業向けに、VNF/PNF管理機能を提供。マルチベンダー環境において、ファイヤウォールやロードバランサーなどの物理および仮想ネットワークアプライアンスを、自動構築する管理機能を提供することで、データセンター全体の管理の効率化を図る。

 「これまでは、通信事業者向けにはVNF/PNF管理機能を提供してきたが、今年2月に提携を発表したUBIqubeとの提携により、同社のMSActivatorを活用し、これをOSS化していくことにより提供するもの。OpenStackだけでは実現できない部分は、OSSを組み合わせて実現する取り組みにひとつになる」とした。

サービス事業者および企業向けのVNF/PNF管理機能
検証済みのVNF/PNF製品一覧

 NECでは、同社のオープン化に向けた基本姿勢として、「OpenStackを中心としたオープンソフトウェアを積極的に活用し、新規に開発した機能を、OSSコミュニティへ還元することで、オープン性の高いクラウド基盤の実現に寄与する」ことを強調する。

 「Libertyのときには、コントリビュータとしての貢献において、NECは全世界で10位だったが、最新のMitakaでは6位となっている。9つのコンポーネントで22人のNECの開発者が活動。そのうち8つのコンポーネントに、日本人初の1人のプロジェクト・チーム・リーダーと、8人のコアデベロッパーを排出しており、日本ではトップの実績。尖った技術者がOSSに参加しているのが、NECの特徴である」とした。

コントリビュータとしての貢献は、Mitakaでは6位となった
日本人初のプロジェクトリーダーを排出したという

 また、NEC Cloud Systemでは、所有型のクラウドソリューションで、レディメイド型のCloud Platform Suiteのほか、セミオーダー型として商用製品構築モデルと、OSS構築モデルを用意。さらに、利用型のNEC Cloud IaaSとのハイブリッドクラウド連携も実現している点も強調した。

 NEC Cloud SystemのOSS構築モデルでは、オープンソフトウェアを活用する環境において、構築支援サービスを提供。ワンストップでサポート、サービスを提供することで、運用効率化を含めたトータルサポート体制を構築している。さらに、通信事業者、サービス事業者、企業の3つをターゲットとして提供する。

 上坂氏は、「これらの企業にヒアリングを行ったところ、約2000件のTo-Be要件のうち、約1400件がソフトウェア要件によるものだったが、66%がOpenStackでは実現できない機能であった。特にデータセンターの運用管理系機能の多くは、OpenSatckでカバーされていない。これをカバーするために独自のソリューションを開発する企業が多いが、その結果、半年ごとのバージョンアップに追随できないといった問題が発生しているほか、OpenStackを使いながらもベンダーロックされてしまうという状況が生まれている」と指摘。

 その上で、「NECは、OSSコミュニティとの緊密な関係を取りながら、独自性を排除し、ピュアオープンなクラウド基盤を提供している。他社がオープンといっているレベルとは、オープンの意味が違う」と述べたほか、「これらの領域において、マネタイズしようとは考えていない。また先行することで利益を得ようとも思ってない。顧客に価値を提供する上で、OpenStackをいじる部分があるが、これもすべてOSSコミュニティに提供する。機能をしっかりと提供することで、それに伴うインテグレーションやサポートといった点で差別化を行い、ビジネスを行うことになる」と語った。

顧客要件の収集・分析
顧客要件の実現に向けたNECの取り組み
データセンターの運用管理系機能の多くは、OpenSatckでカバーできない
各社のソリューション比較

 NECでは、NEC Cloud System OSSクラウド基盤構築支援サービス、NEC Cloud System 統合運用サービス、NEC Cloud System OSSクラウド基盤サポートサービスを提供。今後3年間で700億円の販売を目指す。

 一方、NEC Cloud System(OSS構築モデル)の今後のロードマップとして、3rdリリースでは、マルチハイパーバイザーやコンテナ対応、IoTなどへの対応を図るほか、4thリリースでは、インタークラウド連携、ベアメタル管理、障害検知短縮や障害予測、SaaS対応などを予定している。

今後のロードマップ