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【Interop 2013】今年も大盛況、SDN関連展示を集めた「SDN ShowCase」

実際のユースケースを想定したソリューションも増加

 「Interop Tokyo 2013」ではSDN(Software Defined Networking)関連ソリューションを集めた「SDN ShowCase」のコーナーが設けられている。各社の製品やソリューションをそれぞれ展示し、ミニセミナーを開催するとともに、相互接続などの検証を行っている。

 昨年のSDN ShowCaseはOpenFlowスイッチなどの基礎技術が中心だったが、今年はより応用的な、クラウドプラットフォームとの連携や、管理、WANやQoS、実際のユースケースを想定したソリューションなども目立った。また、OpenFlowに限らないSDNも見受けられた。

SDN ShowCase
相互接続検証のために集まった各社のSDN関連製品
各社のOpenFlowスイッチ関連が集まったラック

クラウド基盤ソフトとの連携ソリューション

 今回のSDN ShowCaseで特に目立ったのが、OpenStackやApache CloudStackなどのクラウド基盤ソフトとSDNを組み合わせたソリューションだ。

 もともとSDNが必要とされる理由のひとつとして、仮想サーバーを一動作でプロビジョニングしたりマイグレーションしたりする操作にネットワークを追従させる、というものがあった。そうした仮想化されたサーバー管理とネットワーク管理を一元化して自動化する、オーケストレーションが本格化してきたようだ。

 各社とも、OpenStackやApache CloudStackのネットワーク管理サブシステムから自社SDN製品を扱うためのプラグインを、オープンソースにしたり本家にコミットしたりといった方法で提供している。

NECのクラウド基盤「WebSAM vDC Automation Ver2.0」。同社のOpenFlowコントローラ製品「PF6800」に対応することで、仮想サーバーとともにVLANやOpenFlowなどのネットワークを一元管理する
OpenStackにNECのOpenFlowコントローラ製品「PF6800」に対応するプラグインを組み込む
CTCの展示。大手OpenFlow企業BigSwitch Networks社のOpenFlowコントローラのプラグインはOpenStackに含まれる
VMware NSXは、買収した大手OpenFlow企業Niciraの技術。クラウド基盤ソフトのOpenStack・CloudStackや、仮想化ハイパーバイザーなど、VMware社と競合する部分のある製品との組み合わせをデモ
シトリックスは、Apache CloudStackベースの商用製品「CloudPlatform」とADC(ロードバランサ)などのネットワーク製品「NetScaler」によるSDNを展示
ブロケードのSDN ShowCaseのコーナーに隣接した、同社ブースのSDN関連展示。OpenStackでの仮想サーバーの作成等にイーサファブリックによる仮想ネットワークを連動させる
ミドクラの展示。自立分散型オーバレイネットワーク「MidoNet」を、Red HatのOpenStackディストリビューションと、Apache Cloud Stackの最新版 4.2に組み合わせる
Aristaの展示。VXLANによるVMwareとの相互接続と、OpenStackとの連携をデモ
日立の展示。OpenStack/Apache CloudStackとNicira NVPを組み合わせてテンプレートからシステムを作る「仮想統合システム自動生成技術」

OpenFlowの仮想ネットワークの試験や設計ができる「VOLT」

 NTTコミュニケーションズの展示では、OpenFlowの実ネットワークの構成や経路情報を丸ごと複製したテスト環境を作成して、仮想ネットワークの試験や設計ができる「VOLT(Versatile Openflow vaLidaTor)」をデモしている。テスト環境では、フローテーブルを吸い上げて構造を3Dグラフィックでダイナミックに表示。ホスト間の疎通など、フロー定義が正しいかどうかをチェックできる。また、同じ3Dグラフィックの構造画面でフローを設計し、それを実ネットワーク用に書き出す機能も持つ。

OpenFlowのネットワークをテスト環境に複製して試験や設計ができる「VOLT」
フローテーブルを吸い上げる
ダイナミックな3Dグラフィックでフロー情報の検証過程と結果を表示

OpenFlowの最新バージョンに対応した製品も

 OpenFlowの最新バージョン規格であるOpenFlow 1.3に対応した製品や、関連または類似する機能の製品も登場している。ShowNetのPODでも、OpenFlow 1.3.1対応の製品を並べて相互接続検証するラックが設けられている。

ShowNetのPODに設けられたOpenFlow 1.3.1相互接続検証のラック

 PODのOpenFlow 1.3.1相互接続検証では、OpenFlowコントローラとしてIxiaのOpenFlowテストソリューションが動作している。

SDN ShowCaseのIxiaの展示

 OpenFlow 1.3の機能にQoS(帯域制御)がある。トーメンエレクトロニクスの展示では、OpenFlowスイッチのCentec Networks V350と、NTTデータのOpenFlowコントローラの組み合わせで、OpenFlow 1.0ベースのコントローラを拡張して帯域制御を実現しているという。また、HPも、OpenFlowでの帯域制御でMicrosoft Lyncによるビデオ会議をデモしている。

トーメンエレクトロニクス、Centec Networks V350とNTTデータのOpenFlowコントローラによる帯域制御をデモ
HPによる、帯域制御したネットワークでMicrosoft Lyncを使うデモ

WANでのSDN活用製品

 WANでのSDNも何点か見られた。NTTコミュニケーションズでは、SDNの考えかたをMPLSに活用し、コントローラがMPLSパスを集中的に制御することで、時間・場所・帯域をネットワークのユーザーが予約できるシステムを展示している。さらにそれを進め、Stateful-PCEPプロトコルにより遅延やノイズなどを測定しリアルタイムにパスを切りかえる技術もデモしている。

 サイアンの「blueplanet」は、企業やデータセンターなどの間のネットワークをSDNで管理するソリューション。ネットワークをグラフィカルに表示する機能や、OpenStackとWANの連携などをデモしている。

 CTCは、Yahoo! JapanのVPLSネットワーク上でOpenFlowを使って、IPアドレスやVLAN IDの重複が可能なマルチテナントネットワークを実現するソリューションを展示している。

NTTコミュニケーションズの展示。MPLSパスの時間・場所・帯域をネットワークのユーザーが予約できるシステム
Stateful-PCEPプロトコルによりリアルタイムにパスを切りかえるデモ
WANをSDNにするサイアンの「blueplanet」。ネットワークをグラフィカルに表示する機能や、OpenStackとの連携など
CTCの、VPLS上でOpenFlowを使ってIPアドレスやVLAN IDの重複が可能なマルチテナントネットワークを実現するソリューション
日立のパケット光トランスポートシステムによる仮想IP/MPLSルータ化

無線LANやセキュリティ製品

 ストラトスフィアは、SDN技術によってPCやタブレットなどを有線や無線LANで社内ネットワークにつないだときに、どの物理ポートに接続しても所属するネットワークセグメントに参加させる「OmniSphere」を展示している。ユーザー認証やクライアントの専用ソフトによらず、登録してあるMACアドレスをベースにネットワーク側で判別する。

 また、NTTデータでも、OpenFlowコントローラ「バーチャルネットワークコントローラ2.0」をフレームワークとして使ったサンプルとして、ユーザーや部署ごとの“マイネットワーク”に接続する例をデモしている。

ストラトスフィアの「OmniSphere」。PCやタブレットをどの物理ポートに接続しても所属するネットワークセグメントに参加させる
NTTデータのOpenFlowコントローラ「バーチャルネットワークコントローラ2.0」によってユーザーや部署ごとの“マイネットワーク”に接続するサンプル

 ラドウェアとエーピーコミュニケーションズは、それぞれOpenFlowを使ったDDoS攻撃対策ソリューションを展示している。

ラドウェアの「DefenceFlow」。NECのOpenFlowコントローラPF6800のカウント情報をモニタし、DDoSと判断したらフローを曲げる
エーピーコミュニケーションズの「空蝉」。iPadの操作で攻撃のアクセスをダミーサーバーに向ける

 Infobloxでは、同社が参加しているFlowForwarding.orgによるオープンソースのソフトウェアOpenFlowスイッチ「LINC」について展示。OpenFlow 1.3.1やOpenFlow-Config 1.1に対応しているという。展示では、Intelの“ホワイトボックス”スイッチのほか、Raspberry Piでもスイッチを動作させていた。

Infobloxの展示。オープンソースのソフトウェアOpenFlowスイッチ「LINC」がインテルのホワイトボックススイッチで動作
ソフトウェアOpenFlowスイッチ「LINC」がRaspberry Pi(有線NIC+USB接続の無線NIC)で動作

 NTTデータの「Hinemos仮想ネットワーク管理オプション」では、最近の機能であるファイアウォールやロードバランサをOpenFlowで簡易的に実現する機能や、画面上でネットワークを設計する機能、コストベースでパスを決める機能などをデモしている。

NTTデータの「Hinemos仮想ネットワーク管理オプション」。ファイアウォールやロードバランサをOpenFlowで実現する機能など

 IBMは、11日に発表した「IBM SDN Virtual Environments(VE)」について展示している。VMwareのハイパーバイザーにIBM SDN VEの仮想スイッチを組み込むことで、物理サーバー間をVXLANによるオーバーレイネットワークで接続し、MAC数やLANの制約、セキュリティなどの問題に対応するという。

IBMの「IBM SDN VE」

(高橋 正和)