【Interop 2012】SDNへの取り組みを進めるネットワーク機器ベンダー~ブロケード、ジュニパーなど

最新ルータ、スイッチを展示


イーサネットファブリックとSDNへの取り組みを進めるブロケード

 15日まで開催されていた「Interop Tokyo 2012」のブロケードコミュニケーションズシステムズ(ブロケード)のブースでは、同社のイーサネットファブリック対応製品を中心に展示していた。

 イーサネットファブリックやマルチパスイーサネットと呼ばれる技術は、1つの物理的なレイヤー2ネットワークの上で経路制御により論理的なレイヤー2ネットワークを作るものだ。物理ネットワーク上にループなどがあってもよく、スパニングツリー(STP)と違いブロッキングポートなしで、動的に複数の経路を切り替えたりネットワーク構成を変更したりできる。

 ブロケードのブースでは、イーサネットファブリックに対応したスイッチである、VDX 6710/6720/6730を展示。さらに、ミニセミナーで同社のイーサネットファブリック技術をデモしていた。

 デモでは、ミリ秒単位でpingを繰り返しながらパスを切り替えてほぼパケットが落ちないところや、VDXシリーズからVMware vCenterのAPIを呼び出して仮想ネットワークをVDXから管理するところ、IP-SANで複数のパスをISLトランキングに使って本数を変えてもそれに応じて均等に負荷分散されるところを実演した。また、ブロケードにとってのイーサネットファブリックのポイントとして、サービスネットワークとストレージネットワーク、マネジメントネットワークを1つの物理ネットワークで実現できることを挙げた。

 ブースではそのほか、SDN(Software Defined Network)分野への取り組みとして、OpenFlowに対応した、広域イーサネット対応のスイッチやルータのモジュール等を展示。ロードバランサーADX 1000シリーズの低消費電力も実演していた。

イーサネットファブリックに対応したBrocade VDX 6730スイッチミリ秒単位でpingを繰り返しながらパスを切り替えるデモ
VDXスイッチからVMware vCenterの仮想ネットワークを管理するデモイーサネットファブリックでIP-SANを均等に負荷分散するデモ
ShowNet NOCのデータセンターに設置されたBrocade VDX 6720OpenFlowに対応した、広域イーサネット対応のスイッチやルータのモジュール等

 

フラットなネットワークをより使いやすく、ジュニパー

 「Interop 2012」のジュニパーネットワークス(ジュニパー)のブースでは、13日に発表された、同社の「QFabric」におけるインターコネクトの小型製品「QFX3600-I」を世界初展示していた。

 ジュニパーのQFabricは、データセンターのレイヤー2ネットワークを、全体で1つのスイッチに相当するフラットなネットワークとして構成する、データセンターファブリック技術。バーチャルシャーシの発展形といえる。従来のレイヤー2ネットワークで使われているコアスイッチ、アグリゲーションスイッチ、エッジスイッチといった階層構成に対して、構成の柔軟性や管理性、パフォーマンスを提供するという。

 QFabricは、スイッチのポートに相当する「ノード」、ノードを相互接続する「インターコネクト」、ファブリックを管理する「ディレクター」の3つから構成される。このうち、インターコネクトについては従来、最大6144ポートに対応する21Uサイズの「QFX3008」が発売されてきた。

 それに対してQFX3600-Iは、最大768ポートで1Uと大幅に小型化したのが特徴となる。QFX3600-Iの投入により、一般に米国などに比べると小規模な日本のデータセンターで導入が進むだろう、という説明だった。なお、QFX3600-IはBest of Show Awardの「データセンタ&ストレージ」部門でグランプリを受賞した。

ジュニパーのQFabricに対応したQFXシリーズ。1UサイズのインターコネクトQFX3600-Iは世界初展示。ラック下半分にあるのが従来のインターコネクトQFX3008。ほか、ノードのQFX3500とディレクターのQFX3100。

 コンテンツ配信アプライアンスの新製品「VXA2100」も展示された。キャリア向けに、キャッシュなどメディア配信を最適化するアプライアンスで、最大スループット20Gbpsの世代の製品。Best of Show Awardの「パフォーマンスオプティマイゼーション部門」部門でグランプリを受賞した。

 そのほか、Junos PulseクライアントとMAG2600ゲートウェイによるBYODや、無線LANソリューション、サービスゲートウェイSRX550、アクセスルータACX2000、クラウド上でJunosの設定テストなどができるJunosphereの体験コーナー、MXやEXをJunos SDKでカスタマイズしてOpenFlowに対応したデモなどが展示された。

コンテンツ配信アプライアンスVXA2100Junos PulseクライアントとMAG2600ゲートウェイによるBYODの展示
無線LANソリューションの展示サービスゲートウェイSRX550
アクセスルータACX2000Junosの体験コーナー

 

Virtual BoxCoreやNiciraとの共同ソリューションを展示、日立電線

 「Interop 2012」の日立電線のブースでは、多数のスイッチを仮想的に1台のスイッチとして動作させる「Virtual BoxCore」がBest of Show Awardの「キャリア/SP/エンタープライズ向け ネットワーキング」部門のグランプリを受賞。また、同社のイーサネットファブリック技術BFSとニシラジャパンのSDN(Software Designed Network)技術NVP(Network Virtual Platform)を組み合わせたソリューションがBest of Show Awardの「クラウドコンピューティング&バーチャリゼーション」部門の特別賞を受賞した。

 Virtual BoxCoreは、同社のAPRESIAスイッチを最大32台まで仮想的に1台のスイッチとして扱えるようにする機能。ログインや設定、ログ情報も1カ所で一元管理できる。スイッチのスタックよりも柔軟に構成できるのが特徴で、専用のポートは不要、APRESIAのうち異なる機種でもよく、リング構成でなくてもトポロジーに依存せず、途中に他社のL3スイッチが入っても管理VLANさえ通れば問題ないという。

 Virtual BoxCoreは、標準機能として搭載され、追加ライセンスは不要。ブースでは実際に22台のAPRESIAスイッチでデモしていた。

Virtual BoxCore機能で22台のAPRESIAスイッチを仮想的に1台として動作させる
機種が異なっても、フロアをまたいでもVirtual BoxCore機能で一元化1台のコンソールからすべてのスイッチを管理

 日立電線のBFSとニシラジャパンのNVPを組み合わせたSDNソリューションも展示。ニシラジャパンのNVPは、OpenFlowとトンネルリングプロトコルSTTを使うことで、物理ネットワークの上に仮想ネットワークを重ねる「オーバレイネットワーク」の技術。それにより、物理的なネットワーク構成には左右されず、サーバーのハイパーバイザー側に設置された仮想スイッチのOpen vSwitchが実際のネットワーク構成を決めることになる。ブースでは、2つのデータセンターをファイアウォール越しに1つの仮想ネットワークとして構成するところをデモしていた。

 ただし、実際のトラフィックのモニタリングや管理は物理ネットワーク側の役割となる。そこで、物理ネットワークを日立電線のBFS技術で構成し、NVPと組み合わせることで、トラフィックの可視化や分散を実現し、帯域の追加などにも対応するという。

日立電線のイーサネットファブリック技術BFSとニシラジャパンのSDN技術NVPを組み合わせたソリューションのデモ。2つのラックをそれぞれ1つのデータセンターとし、ファイアウォール越しに接続
BFS対応スイッチ APRESIA 1500ニシラのNVPのサーバー
BFSとNVPを組み合わせることで、物理トラフィックを可視化し管理する

 

新たな高密度キャリア向けルータ「AX8600R」、アラクサラ

 「Interop 2012」のアラクサラネットワークスのブースでは、6月4日に発表された次世代型のキャリア向けエッジルータ「AX8600R」シリーズを展示していた。

 AX8600Rシリーズは、10GbEを最大384回線収容できる高密度収容が特徴。これにより通信事業者において、ユーザーのアクセス回線を1台でより多数まかなえる。インターフェイスはシングルハーフサイズのマイクロラインカードとなっており、キャリアのコアに接続する100GbEや、10GbE、1GbEなど異なる回線を収容できる。

 内部では、高速なデータ転送を実現するフォワーディングエンジンに、高度な機能を実現するプログラムエンジンを組み合わせるハイブリッドアーキテクチャを採用。トンネリングなど将来の機能拡張に対応する。

 フォールトトレラント機能としては、転送エンジンカード(PRU)単位で冗長化し、監視プロトコルをハードウェアにオフロードするプロトコルアクセラレータによる高速切り替えを実現する。

 また、前後給排気に対応してフロアのエアフローに柔軟に対応。電力消費では、ASICの処理速度を2段階で、バスを2段階で切り替えて、計4通りの電力モードをスロットごとに実現。さらに、ウォームスタンバイに対応し、ホットスタンバイに比べ電力消費を抑える。

 ブースでは実際に、100GbEで片方向100Gbpsずつ、計200Gpsのトラフィックをかけるデモをしていた。なお、AX8600RシリーズはBest of Show Awardの「キャリア/SP/エンタープライズ向けネットワーキング部門」部門でグランプリを受賞した。

 そのほか、大容量PoEスイッチAX2230Sの展示や、AX3830SによるShowNetでの40GbE接続の展示なども行われた。

10GbEを最大384回線収容できるアラクサラのキャリア向けエッジルータのAX8600Rシリーズ
100GbE回線でのスループットのデモ。
AX8600Rシリーズの転送エンジンカード(PRU)
AX3830SによるShowNetでの40GbE接続ShowNet NOC側のAX3830S
関連情報
(高橋 正和)
2012/6/18 06:00