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Windows Server 2016とSQL Server 2016、インテルの最新プラットフォームでITインフラの何が変わるか?
2017年1月17日 10:00
株式会社インプレスは全国4会場で、Windows Server 2016、SQL Server 2016を扱う販売会社やSIer向けのセミナー「ビジネス環境の変化と情報漏洩リスクに備えるIT提案セミナー」を開催した。特別協賛はインテル株式会社と日本マイクロソフト株式会社。
東京では12月6日に、2部構成で開催された。ここでは、主に営業担当者向けにWindows Server 2016とSQL Server 2016の新機能や変更点について解説した第1部の模様をレポートする。
なお、こちらのイベントページでも、当日配布された資料のダウンロードやセッションの動画を確認可能だ。
SDIのためのWindows Server 2016の新機能
Windows Server 2016については、NECマネジメントパートナー株式会社の吉田薫氏が、「Windows Server 2016で始めるITインフラの強化」と題して解説した。
吉田氏はまず、現在のITインフラに要求されることとして「セキュリティ」「コスト」「パフォーマンスや可用性の改善」「新しいアプリケーションプラットフォーム」を挙げ、「いずれも高いハードルだが、それを超えていくことで新しいインフラが実現できる」と語った。
新しいインフラとして今注目されるものとしては、吉田氏はSDI(Software Defined Infrastructure)を挙げ、「高価な専門ハードウェアの機能を、安価なハードウェアと高度なソフトウェアで実現するもの」と説明する。それにより、コストと制御しやすさを実現。パブリッククラウドやプライベートクラウド、プロバイダーがホストするクラウドなど、どのプラットフォームでも一貫性のあるプラットフォームとなるという。
吉田氏は、SDIに対応したサーバーOSであるとしてWindows Server 2016を紹介した。
開発コンセプトは「最新の多層セキュリティ」「ソフトウェア定義データセンター」「クラウド対応アプリケーションプラットフォーム」の3つだ。
機能の前に、エディションとライセンスの変更が説明された。Windows Server 2016にはStandardとDatacenterの2つのエディションがある。Windows Server 2012 R2のWindows Serverのエディションは、仮想化に関するライセンス数だけの違いだったが、Windows Server 2016では機能の違いがあり、SDIを実現する機能はDatacenterだけだという。
また、オンプレミスはプロセッサ数ベースで、クラウドはコア数ベースでライセンスが決められていたが、Windows Server 2016ではコアベースのライセンスに統一された。「感覚的には8コアライセンスが従来の1ライセンスに対応する」と吉田氏は説明した。
さて、Windows Server 2016のSDI機能について、吉田氏は「コンピューティング」「ストレージ」「ネットワーク」の3点から説明した。
まずSDIのコンピューティングとしては、「新しいHyper-V」「Nano Server」「Windowsコンテナー」が語られた。
1つめのHyper-Vについては、「かつてWindows Serverはファイルサーバーなどの用途が多かったが、いまはHyper-Vのホストとして使う用途が多い」として、パフォーマンスや信頼性、セキュリティ、柔軟性の向上が説明された。
2つめのNano Serverは、Server Coreより小さいサーバーで、ヘッドレスサーバーとして動く。Hyper-Vのホストとして使うことなどを想定している。吉田氏は実際にNano Serverが5秒程度で起動するところをデモして、「パッチをあてても停止時間を短くできる」とそのメリットを語った。
3つめのWindowsコンテナーは、コンテナー型仮想化の機能だ。Hyper-Vの違いとしては「アプリケーションだけを仮想化する」と吉田氏は説明した。吉田氏は実際にWindowsコンテナーをデモ。dockerコマンドでコンテナーを起動してPowerShellを実行し、IISをインストールしてコンテナーの外のWebブラウザーからアクセスしてみせた。
コンピューティングの項の最後に、インテルによるコンピューティングの最適化も説明。「Windows Server 2016に最適化された」と銘打ってXeon E5-2600 v4を紹介した。
次にSDIのストレージ。高価なSANストレージにある機能をソフトウェアで実現するものだと吉田氏は説明した。
まず、従来からあった、複数のディスクを束ねてプール化する「記憶域スペース」と、アクティブ/アクティブで冗長化や負荷分散を実現する「スケールアウトファイルサーバー」を紹介。そのうえでWindows Server 2016の新機能として「記憶域スペースダイレクト(S2D)」を紹介した。それぞれのローカルストレージを束ねて、SASの共有ストレージのように使える分散ストレージ機能だ。
また、「記憶域レプリカ」が、同じくWindows Server 2016の新機能として紹介された。ボリュームをブロックレベルで自動的にレプリケーションするという。
ストレージの項の最後に、インテルによるストレージの最適化も説明。PCIe対応(NVMe)インテルSSDデータセンター・ファミリーを紹介した。デモビデオでは、4KサイズのRAW動画の再生で、SATA HHDでは2fpsのところ、SATA SSDでは15fps、さらにNVMe SSDでは24fpsを2つ再生可能なところを見せた。
そしてSDIのネットワーク。複雑に階層化された今日のデータセンターネットワークを、これを単純化してソフトウェア化するSDN(Software-Defined Network)機能を、Windows Server 2016の機能として用意しているという。
ネットワークの項の最後に、インテルによるネットワークの最適化も説明。VMDqやSR-IOVに対応したネットワークアダプターIntel X710/XL740が紹介された。
最後に、Windows Server 2016のセキュリティ機能から、2点が説明された。1つめは「Windows Defender」。これまでクライアントOSに搭載されていたものだが、Windows Server 2016にも標準でインストールされるようになった。グループポリシーによる一元管理や、WSUSによる定義ファイルの配布に対応するほか、監視情報もAzure Log Analyticsのサービス連携で一元管理できるという。
セキュリティ機能の2つめは、シールドされた仮想マシンだ。Hyper-Vの仮想マシンイメージを暗号化するもので、BitLockerの技術が使われている。暗号の鍵は専用の「HGSサーバー」で管理し、信頼されたHyper-Vホストだけに限定して鍵を渡すという。
セキュリティの項の最後に、インテルによるセキュリティの拡張も説明。Xeon E5-2600 v4がサポートがサートするTPM 2.0とインテルセキュアキー、AES-NIが紹介された。
大量データの活用や分析を強化したSQL Server 2016
SQL Server 2016については、エディフィストラーニング株式会社の沖要知氏が、「SQL Server 2016導入提案のポイント」と題して解説した。
沖氏は時代背景として、企業のデータがどんどん増え、データが企業の差別化要因になっているため、データの活用や分析が重要になっていると語った。そして、これまでのSQL Serverの進化を図示し、バージョンアップしたときの新機能が、コア機能からデータ活用・データ分析に移ってきていることを示した。
それに関連して、Windows Server 2008 Standard(32ビット版)では最大メモリサイズが4GBだったのに対し、Windows Server 2016の最大メモリサイズが24TBになったことを紹介。同様にインテルXeon E7-8800 v4では、コア数が最大24、搭載可能なメモリ量が最大24TBとなっていることも紹介された。
CPUとメモリと同様にデータベースの性能に関わるストレージについては、SSDが一般化したこと、さらにNVMeやNVDIMMが登場していることが語られた。その例として、吉田氏と同じく、PCIe対応(NVMe)インテルSSDデータセンター・ファミリーを紹介した。
次に、TPC(Transaction Processing Performance Counci)による、SQL ServerとXeonプロセッサのベンチマーク結果が紹介された。取り上げられたのは、基幹業務系(OLTPデータベース)と情報系(データウェアハウス)の2種類。いずれもSQL Serverがトップを占めていると沖氏は説明する。
まずOLTPのTPC-Eでは、Xeon X5460から現在のXeon E7-8890 v4で約34倍のトランザクション数になっていると説明された。また、データウェアハウスのTPC-Hでは、Xeon X7460から現在のXeon E7-8890 v4で、性能では約10倍のトランザクション数、コストは約35分の1になっていると説明された。
さらに、インテルによるSQL ServerとSSDのベンチマークも紹介された。SATA HDDと比べて、SATA SSDが2.7倍、NVMe SSDで7倍のクエリー処理数となったという。
続いて、SQL Server 2016の変更点や新機能が解説された。SQL Server 2016のプリンシパルエディションはEnterpriseとStandard。また、Expressと同じように、開発とテストにのみ利用可能なDeveloperが無償となった。
また、11月にリリースされたSQL Server 2016 SP1では、ExpressとStandardの機能が増えたことも説明された。沖氏によると、アプリケーションをStandardからEnterpriseに透過的に移行できるようにするためだという。
新機能については、パフォーマンス、セキュリティ、可用性、スケーラビリティの4カテゴリーを紹介した。
そのうち、パフォーマンスの中ではインメモリOLTPの拡張による効果を沖氏は説明した。トラディショナルなデータプラットフォームの課題として、ロック/ラッチやインデックスメンテナンスの問題がある。沖氏は、インメモリならロック/ラッチなしでトランザクションできることや、列ストアインデックスによるメンテナンス軽減などを解説した。
パフォーマンスの事例も紹介。OLTPでは名古屋銀行が列ストアインデックスで10~100倍高速化した例が、情報系ではオンラインゲームのbwinがインメモリで16倍高速化した例が語られた。
そのほか、Operational AnalyticsによるOLTPとデータ分析の統合や、クエリストアによる実行プランの安定化、セキュリティ、動的データマスク、行レベルセキュリティ(RLS)、Reporting Servicesの新機能についても説明された。
講演の最後には、SBIリクイディティマーケットの顧客事例が紹介された。年間49兆円の取引を扱う次期FX取引システム基盤を、SQL Server 2005からSQL Server 2016に移行した大規模事例で、SQL Serverが金融系でも着実に実績を残していることを示した。