大河原克行のキーマンウォッチ
「The Most Complete Cloud」を打ち出し、クラウド事業を加速する~日本マイクロソフト・樋口泰行社長 (大きな勢いがついてきたDynamics)
(2014/12/2 06:00)
この1~2年で大きな勢いがついてきたDynamics
――クラウド三兄弟の末っ子ともいえるDynamics CRM Onlineは、長年、日本でもビジネスを展開してきましたが、なかなか事業に弾みがつきませんでした。今年は最重点ビジネスのひとつに位置づけてきましたが、手応えはどうですか。
私自身は、この1~2年で大きな勢いがついてきたという手応えがあります。Dynamicsは、グローバルにみると標準的なERPおよびCRMの一角を占める製品であり、買収した企業との統合においても有効であること、日本に本社を持つ海外子会社が選択したERPがDynamicsであり、それを日本でも活用しようという動きなどが増えています。
ロンドンオリンピックやソチオリンピックの基幹システムとして、Dynamicsが全面的に採用されたという実績も、世界のメインストリームに位置づけられる基幹系システムであるという認識を高めることにつながっています。
さらに、最近ではワークスタイル改革のなかで、MicrosoftのIT基盤を活用する企業が増加し、そこでDynamicsとの連携性が高く評価されているという例もあります。さまざまな引き合いがあり、その件数も年を追うごとに増加しています。
Dynamics CRM Onlineは、まだまだこれからであり、ビジネスサイズが小さいという点もありますが、パートナー企業が、取り扱っている国産のCRMやERPに、国際標準のDynamics CRM Onlineを加えたいという動きも見逃せません。例えば、富士通では、自社のグローバルコミュニケーション基盤に、Dynamicsを加えて、労働生産性を高めることに成功しています。
開発も簡便であり、軽くて、低コストであり、機能性にも優れている。そして情報基盤との連携も強い。顧客管理システムでプレゼンス情報と連携し、顧客からの問い合わせに対しても、CRMの画面からコミュニケーションが可能であるというように機動力の向上にも貢献できる。個別のアプリケーションを切り替えるというような手間がなくなるわけです。販売パートナーが注目しているのはこうした点であり、コミュニケーション基盤とセットで提案できることが他社にはない強みになっています。
――Microsoftは、CRM分野で競合となる米salesforce.comとの提携を発表しました。Dynamicsのビジネスにはどう影響してきますか。
フロントにおけるアプリケーションレベルの競合については何も変わりません。しかし、バックエンドでは、Azureと連携したり、Officeと連携するという点では、ユーザーにもメリットが生まれますし、当社にとってもビジネスチャンスが生まれると考えています。
クラウドビジネス参加のメリットをさらに訴求する
――一方で、クラウド事業におけるパートナービジネスについてはどんな進ちょくとなっていますか。このほど、クラウド事業に関する販売パートナーを1500社から2000社へ拡大する方針も発表しましたが。
そこでは一定の成果が出ていると思いますが、まだまだやることはあります。新たな技術やトレンドが生まれる際には、これまでやってきたビジネスからの転換が難しいという局面に置かれることが多く、新たなビジネスだけでは目の前の売り上げが立たないということも起きがちです。クラウドビジネスに関しても同様のことが発生し、なかなか踏み出しにくいというパートナーもいます。こうした企業に対して、日本マイクロソフトのクラウドビジネスに参加することのメリットをさらに訴求していきたいと考えています。
一方で、ベンチャーからスタートしたような新たな企業は、クラウドビジネスに前向きに取り組んでいます。ですから、1500社から2000社への拡大に向けても、既存パートナーに加えて、新たなビジネスパートナーを積極的に取り込んでいきたいと考えています。例えば、AWSを扱っている企業にも、AWSの一本足打法ではなく、Azureも扱っていただくことで、ビジネスチャンスを広げてもらうこともできるのではないかと考えています。
いまや、提案書にクラウドという文字がなければ受け入れてもらえないという状況が生まれています。その点では、ユーザーサイドからクラウドに対する要求が高まっており、そこに販売パートナーが引っ張られているという構図も見受けられます。ユーザーの間では、クラウドに対する関心が急速に高まっており、コンサバティブと言われるような企業においても、クラウドの活用に積極的に取り組んでいるということを肌で感じます。