大河原克行のキーマンウォッチ

なぜ、Lenovoはx86サーバー事業を買収したのか?~日本法人のロードリック・ラピン社長を直撃

日本におけるクラウド事業も開始へ

 中国Lenovoの動きが目まぐるしい。2014年第3四半期決算(2014年4月~12月)は、四半期決算として過去最高を記録する一方、1月23日にはIBMのx86サーバー事業を買収すると発表。さらに、1月29日に、Googleが持つMotorola Mobilityのスマートフォン事業の買収を発表した。

 これらの動きは日本では今後どうなるのだろうか。そして、日本におけるクラウドビジネスにも、いよいよ踏み出す姿勢も明らかにする。

 Lenovo NEC Holdings B.V.の社長であり、レノボ・ジャパンおよびNECパーソナルコンピュータの社長を務めるロードリック・ラピン氏に、レノボ・ジャパンの取り組みについて直撃した。

重要なマイルストーンとなった1年に

――最近、Lenovoの動きが目まぐるしいですね。2014年3月に期末を迎える今年度の動きは、Lenovoにとってはどんな1年であったといえますか。

レノボ・ジャパンおよびNECパーソナルコンピュータのロードリック・ラピン社長

 最新四半期(2013年10月~12月)の業績は、売上高、利益ともに、過去最高を記録しました。PC市場における世界シェアは18.5%となり、これも過去最高となりました。まだ第4四半期が残っていますが、これまでの数字からも、Lenovoにとって素晴らしい1年であったといえるでしょう。

 そして、IBMとのx86サーバー事業における戦略的提携、Motorola Mobilityのスマートフォン事業買収といったことが、今年に入ってから起きています。のちに今年を振り返ってみると、きっと、記念すべき重要な年であった、といえるのではないでしょうか。われわれの進化の過程が、次のステップに踏み出すという点で象徴的な1年になったのではないでしょうか。

 従来からのPC事業においては、第2位との差がさらに広がり、2ポイントほどの差が出ている。ナンバーワンという立ち位置の基盤固めができたといえます。また、売上高を上回るペースで、利益が伸びているという点も重要な要素です。もともとLenovoは中国国内での成功を土台に成長を遂げてきた企業でしたが、2005年にIBMのPC事業を買収し、これがさらに大きな成長を遂げるマイルストーンとなりました。世界的な金融危機のなかでも継続的な成長を遂げることができたのは、PC事業の買収抜きには語れません。

 また2011年には、日本において、NECパーソナルコンピュータとのジョイントベンチャーをスタートし、ドイツでもMEDIONを買収。PC事業の基盤を固めるとともに、自らの成長力を加えて、現在の世界ナンバーワンPCメーカーの立場を獲得した。これも大きなマイルストーンです。

 一方で、2009年には携帯電話事業を買い戻し、スマートフォン事業の展開を開始。2012年のブラジルCCEの買収によって、事業基盤を拡大してきました。その流れのなかで、今回のMotorola Mobilityのスマートフォン事業買収といった動きへとつながっています。

 また、サーバーやワークステーションのほか、2012年からはEMCとの戦略的提携により、ストレージの品ぞろえを強化。エンタープライズ領域のビジネスを推進し、そこにIBMとのx86サーバー事業における戦略的提携といった動きが加わることになった。

 こうしてみると、PC事業の立ち位置を盤石なものにするとともに、われわれが取り組むPC+戦略の基盤固めができた1年であったといえます。

――これまでLenovoが語ってきた「PC+」は、タブレット、スマートフォン、テレビを指していました。この定義はこれから変わっていきますか。

 定義が変わるというよりも、もともとPC+は、PC以外という領域を指していましたから、その点では変化がないといえます。例えば、EMCとの戦略的提携もPC+のひとつに位置づけられていました。

 そして、今年に入ってから発表した2件の買収によって、さらにPC+戦略を広げ、加速する体制が整ってきているといえます。スマートフォンに関しては、かなり立場がしっかりとした世界第3位のメーカーになりますし、x86サーバーでも世界第3位のシェアとなる。われわれがこれから成長させたいという領域に対して、いい位置につけて、チャレンジャーとして挑むことができる体制が整ってきたわけです。

 もともとPCでも、われわれはチャレンジャーとして挑んできた結果、1位となったわけです。スマートフォンやx86サーバー市場において、チャレンジャーになるということは、Lenovoの社風にもあっているといえます。

――4月1日付で、グローバルで組織変更を行いますね。新たな組織体制は、PC事業グループ、モバイル事業グループ、エンタープライズ事業グループ、エコシステム&クラウド事業グループとなります。これがPCおよびPC+を形成する要素になるととらえていいですか。

 そういう見方も当然のことでしょう。Lenovoの組織は多様化し、複雑化してきましたから、それをプロダクトにあわせた形で再編することで、これまで以上に市場や製品にフォーカスできる体制となりますし、PC+の領域においても経営の責任が明確になっていくことになります。

――日本でも同様の体制を敷くことになりますか。

 製品戦略は、新たな体制にのっとったものになってきますが、実際のビジネスは現地に任されています。これは、Lenovoが、ほかの外資系企業と大きく違うところで、その国を担当する責任者にかなりの権限が与えられています。組織体制についても、日本で最適な組織体制を敷くということになります。ただ、基本的な考え方は、日本も新たな体制へと移行していくことになります。

(大河原 克行)