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DellのEMC買収は成功するのか? 世界最大の非公開エンタープライズ向けベンダーの誕生

 Dellが670億ドルでEMCを買収すると発表した。PCから始め、サーバー、ストレージなどを獲得。エンタープライズベンダーになるべく計画を進めてきたDellは、EMC買収によってストレージや大規模顧客にアクセスできることになる。が、新たに誕生する企業でのポートフォリオの重複、買収により約500億ドル上る債務を負うことなどさまざまな懸念もつきまとう。何よりクラウドという業界の流れにどう対応するのだろう――。

IT史上最大のメガ買収

 両社は10月12日、DellがEMCを買収することで合意したと発表した。数週間前からReutersなどが報じていた動きを認める形で正式発表したものだ。買収額は670億ドルで、IT業界で過去最高。Re/Codeが事前に予想していた500億ドルも大きく上回るものだった。

 Dellは2013年に株式を非公開化しており、買収によって「株式非公開企業として世界最大の統合技術ベンダー」が誕生すると述べている。両社を併せた売上高は推定800億ドル超と、“世界最大規模のエンタープライズ向けハードウェアベンダー”となる。

 Dellの創業者でCEOのMichael Dell氏は「エンタープライズソリューションのパワーハウス(発電所)を作ることができる。あらゆる技術環境で業界をリードするイノベーションを両社の顧客に提供できる」とコメントしている。具体的な分野としては、デジタルへの変革、ソフトウェア定義のデータセンター、コンバージドインフラ、ハイブリッドクラウド、モバイル、セキュリティを挙げており、研究開発へのフォーカス、非公開企業という構造などから、「比類なき規模、強み、柔軟性を得ることができる」と展望する。

 DellはPC、EMCはストレージから進化してきたベンダーだ。DellはPCからサーバー、ストレージ、ネットワーク、そしてソフトウェアにサービスと展開。EMCもストレージからスタートし、2004年に仮想化技術のVMwareを買収し、その後もセキュリティのRSA、PaaS技術のPivotal Softwareなどを獲得して、“フェデレーション”戦略をとってきた。

 Fortuneは、EMCの事情として、売却先としてDellが魅力的だったとする。EMCの売却は以前から取りざたされていたが、「Hewlett-Packard(HP)もCiscoも関心を示しておらず、Dellは最後の候補だった」とする。

 Dellから見ると、EMCの買収で、ストレージ、セキュリティ、データ分析などの資産を得られる。これによって、ネットワーク、ストレージ、サーバーを一体化したコンバージドインフラ分野で進展が図れると期待する。この分野でDellはNutanixと提携しているが、「大きな成果は出ていない」とFortuneは分析する。

(岡田陽子=Infostand)