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DellのEMC買収は成功するのか? 世界最大の非公開エンタープライズ向けベンダーの誕生

クラウドの潮流に反する

 Fortuneは、そもそもVMwareの人気に陰りが見え始めていると指摘する。「企業の多くがオープンソースの代替技術を使っており、オープンの推進役こそDellなのだ」と述べ、Dellの精神と矛盾して不協和音が発生すると予言した。両社の合体には矛盾や疑問が多く、「これらが買収額を正当化するだろうか――。おそらく、それはないだろう」と結論している。

 VMwareへの脅威は、Fortuneが指摘するオープンソースの代替仮想化技術だけではない。クラウドコンピューティングモデルの浸透によってハードウェア離れが加速するという業界全体の流れもある。Wall Street Journalはこの分野で最大手のAmazon Web Services(AWS)がVMwareの技術を使っていないという事実も指摘する。

 こうした懸念に対し、VMwareのCEO、Pat Gelsinger氏は「多数のクラウドベンダーで、われわれの技術の利用は増えている。さらに、Dellは多くの資産を持っており、そのうちの多くのハードウェアはクラウド事業者向けに提供されている」とコメントしている。

 もちろん、課題はVMwareだけではない。Tech CrunchはEMCのメーンであるストレージを、Dellも2007年のEqualLogicの買収により有すること(それまで両社はEMCのストレージをDellが再販することで提携関係にあった)を指摘し、合併にあたって、多くの決断を下さねばならないとする。ストレージについては一部切り捨てが必要であり、エンタープライズコンテンツ管理のDocumentumやドキュメントキャプチャのCaptivaも対象になるだろうとする。

 また、RSAは「トリッキー(微妙)」、Pivotalは「議論すべき問題」と評価する。そして、「Dellは幅広いビジョンの下、多く分野に首を突っ込みすぎている」と結論づける。

 さらには、買収の中核となるストレージでは、製品の重複よりも大きな問題として「ストレージの特性が変わりつつあること」と指摘する。クラウドの台頭による変化だ。AWSのようにコンピューティングやストレージなどの機能をクラウド経由で提供するパブリッククラウドサービスの利用が一般的になる中、「伝統的なストレージは市場を奪われている」というのだ。

 なおクラウドでは、Dellはパブリッククラウド事業を持たず、EMCはVMware(vCloud Air)とクラウド管理のVirtuStreamを持っている。両社はともに、ハイブリッドクラウド戦略をとっている。

(岡田陽子=Infostand)