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DellのEMC買収は成功するのか? 世界最大の非公開エンタープライズ向けベンダーの誕生

Dellの財務状況、ライバルとの対比

 670億ドルという巨額の買収額に対する懸念も多い。Dellは2013年に非公開企業となり、財務状況は公開されていない。だが7月末終了の会計年度第2四半期財務情報(債務証券の保有者向けに開示される)を入手したNew York Timesは、Dellの財務状況が弱くなっており、この買収はさらなる痛手になるのではと推測する。

 同四半期のDellの売上高は前年同期の295億ドルから減少して275億ドル。前年同期は5億7000万ドルだった損失額は7億6800万ドルに膨らんでいるという。また上半期の売上利益率が18%から17.1%に低下したことに触れ、「Dellの売り上げは、コストよりも速いペースで落ちている」と指摘。490~500億ドルの債務を伴う予想される670億ドルという買収はマイナス材料とした。

 一方で、EMCのキャッシュフローは堅牢で、Dellの債務を皆済するにあたって、助けになるとの財務アナリスト見方も紹介している。

 Dellが目指すエンタープライズ分野は、伝統的にIBM、HPが強い領域だ。IBMはx86サーバー事業をLenovoに売却し、HPはPC・プリンターとエンタープライズの2つの事業に分社化を進めているところだ。

 競合が規模を小さくするのに対し、Dellは買収により大きくなるという構図だが、ライバル2社はこのタイミングを自社の戦略の正当性を示す機会と考えているようだ。

 HPのエンタープライズ事業部(HP Enterprise)を率いるCEO、Meg Whitman氏が社員にあてたメールを入手したZDNetによると、Whitman氏は財務、合併後の組織統合、製品ポートフォリオの統合、チャネルに招くカオス――の4点からうまくいかないと分析した。

 IBMのCEO、Ginni Rometty氏は、イベントの席でコメントした。The Registerによると、「規模に興味を示す人もいるが、自分は信じない」と述べたという。また、DellとEMCの買収はハードウェアにフォーカスしたものと批判しながら、自社の売り上げにおけるハードウェアの比率はいまや10%にすぎず、クラウドとサービスが成長していることをアピールした。

 DellのEMC買収は60日間の「Go-Shop」条項(条件を上回るオファーを他社から受けることができる)の後に正式となり、完了は2016年5月~10月を見込む。Re/Codeによると、両社は既に担当者を任命しており、それぞれの資産をすり合わせてポートフォリオや組織を作る計画だという。

岡田陽子=Infostand