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中国産OSがWindowsを追い落とす? 米メーカーも採用した「NeoKylin」

銀河、中標、Ubuntu… Kylinの変遷

 注目のNeoKylin OSだが、Wall Street Journalは「The Obscure Chinese Operating System 」(知られざる中国OS)のタイトルで伝えており、詳しいことには触れていない。

 NeoKylinはどんなOSなのだろう? 中国の検索エンジン「Baidu」のオンライン百科事典「百度百科」や過去のメディア記事からその歩みを調べると、かなりの紆余(うよ)曲折を経てきたことが分かる。

 中国の独自OS開発は、1986年に発表された技術高度化プロジェクト「863計画」に始まる。863計画は、バイオ、宇宙、エネルギー、新素材など9分野の先端技術開発を推進する国家プロジェクトで、情報技術分野の目標として国産OSの開発が入っていた。

 「Kylin」(銀河麒麟)の開発が始まったのは2001年で、国防科学技術大学や、中標軟件、Lenovoなどが協力した。中国の想像上の動物「麒麟」から名前を取ったという。セキュアなサーバー用OSをつくろうという計画だ。2006年末、バージョン2.0が、国の最も厳しいデータセキュリティ基準をクリアして、863計画の承認を獲得。2007年には公式バージョンがリリースされた。

 一方で、2006年4月には、Kylinのカーネルを調べたユーザーが、FreeBSDのカーネルとコードがほぼ同一だと指摘し、“盗用”疑惑が浮上。ブログなどでは盛んに取り上げられた。2009年のZDNetなどが、そのときの様子を伝えている。しかし、これに関して開発側からはコメントや説明はないままのようだ。その後、Kylinはバージョン3.0からはLinuxベースになっているという。

 その後しばらく動きが伝えられてないKylinが再び脚光を浴びたのが、2011年の中標軟件と中国国防科学技術大学との戦略提携だったというわけだ。両者は合弁で、銀河麒麟と中標軟件「中標普華Linux」というディストリビューションを統合し、中標麒麟(NeoKylin)が誕生した。このニュースは大々的に報じられ、再び中国の独自OSへの関心が高まった。

 実は、Kylinにはもう一つの種類がある。2013年、当局はUbuntu Linuxの開発・サポートを行っている英Canonicalと契約し、Ubuntuをベースとする「Ubuntu Kylin」を4月にリリースした。Tech in Asiaによると、現在のNeoKylinは、このUbuntu Kylinをベースにしているという。

 このOSが中国産と言えるかについて TECH IN ASIAは皮肉っぽく指摘している。「実際のところ、Kylinが中国製OSと言えるかというと、大いに疑問だ。だが、中国のメディアは、このプロジェクトを“国産”と言い続けている」。いずれにしても、Kylin OSは連続性という意味では、何度も途絶え、ブランド名が続いているものだと言える。

 ちなみに、中国のLinuxディストリビューションで最も有名なのは「Red Flag Linux」(紅旗Linux)だろう。開発元のRed Flag Software(北京紅旗軟件)は昨年、給与の支払い不能などで事業停止したと伝えられたが、現在、Webサイトは復活しており、今年になって新たな提携なども発表している。

(行宮翔太=Infostand)