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中国産OSがWindowsを追い落とす? 米メーカーも採用した「NeoKylin」

国産OS化を強力に推進する中国政府

 国産OSを推進する中国には、テクノロジー分野で幅を利かせる欧米製品への、強い不信感がある。特に2013年、元CIA職員、Edward Snowden氏が暴露したNSA(米国家安全保障局)の通信傍受活動はITインフラの防御策に全力を挙げる契機になった。

 その象徴が2014年5月に明らかになった「Windows 8排除」だ。中国の政府調達部局は、政府機関の新規購入するPCについてWindows 8を禁じた。この動きを伝えた新華社通信は、代替する国産OSの一つとしてNeoKylinを挙げていた。新華社通信に対し、中標軟件の代表は「(NeoKylinは)政府、軍、機密性を要する分野のセキュリティの要求を満たし、安全でコントロールされた製品だ」とコメントしている。

 さらに昨年12月、Bloombergが、中国が2020年までに金融、軍事、国有企業、主要政府機関のテクノロジーを国産化する方針であると伝えている。公式発表ではなく、政府の方針に詳しい筋からの情報で、既に同年9月、吉林省で大規模な国産コンピューターのトライアルが行われ、成功したという。

 この国産化政策は、海外のサプライヤーを中国のテクノロジー分野から締め出すものだ。ただし例外があり、それぞれの企業のコア技術を中国政府と共有するか、あるいは製品への中国側のセキュリティ検査官のアクセスを認め、テクノロジーが安全でコントロールできると判断された場合は、引き続きサプライヤーとして製品を供給できるという。DellのNeoKylin拡大は、この流れに沿ったものだろう。

 Tech in Asiaは2014年12月、リリースされたUbuntu Kylinのアルファ版を試用し、「バグだらけで、主要部分の中国語化さえ済んでない状態」と酷評したが、それから半年あまりで、Dell製品にプリインストールされたところをみると、Dellが共同開発で果たした役割も大きかったと想像できる。

 中国当局はNeoKylinを強力に推進している。おそらく軍や金融機関、政府機関では使われるようになるだろう、しかし、大衆に使われるのかというと話は別だ。中国のPCユーザーの間では、Windowsライセンス料が含まれないLinux搭載PCを買って、海賊版Windowsに入れ替えることがよく行われているという。

 Wall Street Journalも、DellのNeoKylin搭載パソコンの比率には注意が必要と指摘している。海賊版Windowsが出回っているため、Windows搭載PCをNeoKylin搭載に買い替える人の数がはっきりしないからだ。

行宮翔太=Infostand