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脱PPAPの「その先」へ――HENNGEとBox Japanが示す、「AI-Ready」なデータ管理とガバナンス強化の最適解

クラウドシフトやSaaS活用の急拡大に伴い、企業における「データの拡散」と「ガバナンスの形骸化」が深刻な課題となっている。特に、行政主導により急ピッチで進む脱PPAP(パスワード付きZipファイルの廃止)への対応は、情報システム部門にとって喫緊のテーマだ。企業が安全にデータを集約し、真のデータ利活用やAI活用へ踏み出すにはどのようなアプローチが必要なのだろうか。

本記事では、クラウドセキュリティサービス「HENNGE One」を提供するHENNGE株式会社の三宅智朗氏と、コンテンツクラウドのリーダーである株式会社Box Japanの安達徹也氏の対談を通じて、AI時代を見据えたデータ共有とガバナンス強化の最適解を紐解いていく。

HENNGE株式会社 Executive Officer 三宅智朗氏
株式会社Box Japan 専務執行役員 パートナー事業担当・マーケティング担当 安達徹也氏

情シスが直面する「データ共有」と「ガバナンス」の壁とは

――近年、企業においてクラウドシフトや多種多様なSaaSの活用が加速する一方で、情報システム部門の皆様からは「どこにどんなデータがあるのか把握しきれない」という声が数多く聞かれます。現在のデータ共有化や、セキュリティ、ガバナンスを取り巻く状況について、どうご覧になっていますか?

三宅: まさにそこが、数千~数万人におよぶ情報システム部門の担当者様が頭を抱えているポイントです。いまやメール添付だけでなくBoxのような共有機能を持つコンテンツ基盤、チャットツールなど、さまざまな手段でデータを共有可能になりました。その結果、企業ユーザーや情報システム部門が「機密データがどこにあるのか」を把握・管理しきれなくなっているのです。

データが社内のさまざまな場所に分散すれば、「どれが最新のものか分からない」といった問題も生じ、業務効率や生産性にも影響します。

一方、セキュリティの観点からも、標的型攻撃を受けた際に、どこに機密情報があり、攻撃された領域にどれだけの機密情報が含まれていたのかを把握できなければ、最終的にどんな情報が外部へ漏れたのか、被害の全体像を想定することも困難です。

――データの「保管場所」だけでなく、データが社内外を行き来する「出入り口」の管理についても、悩まれている企業は多いと聞きます。

三宅: その通りですね。その一例が、PPAPからの脱却です。内閣府・内閣官房によるPPAP廃止の動きに加え、金融庁からも「パスワード付きファイルの送付禁止・通信経路暗号化の徹底」という明確な通達が出されるなど、行政によるガバナンス強化の要求も急ピッチで強まっています。そうした要請を受けて、大手金融機関においてもPPAPの原則廃止が発表されました( 図1 )。

図1 金融庁通達に伴う金融機関の脱PPAPへの対応

しかし、まだまだ企業の現場では統一されたルールや仕組みがないまま、PPAPをはじめ、さまざまなデータ授受の手段が乱立しています。その結果、管理者だけでは、データの出入り口をコントロールしきれない状況になっています。

――企業のコンテンツ基盤を支えてきたBox Japanの立場からも、現状をどのように捉えられていますか。

安達: 三宅さんが指摘するように、企業が扱うデータ量が増え続ける中、「どこに保存するか」と「どう外部と共有するか」を切り分けて考えることはできません。

Boxは、企業内データの約9割を占めるといわれる非構造化データをお客様からお預かりしています( 図2 )。

図2 企業内の情報の90%が「非構造化データ」

しかもこの非構造化データは、年率55~65%で増加しています。

従来、非構造化データはファイルサーバーやSharePoint、外部共有サービス、SaaSのドキュメントライブラリなど、社内のさまざまな場所に分散してしまう傾向にありました。

これに対してBoxは、容量逼迫への対応だけでなく、データのサイロ化を解消し、一元管理することでデータ活用の強化や、ガバナンスの設計・運用を支援してきました( 図3 )。

図3 なぜ、Boxはコンテンツを一元管理できるのか?

しかし、保管場所の一元化だけでなく、社外へ出ていく際の「出口対策」まで一貫して考えなければ、ガバナンスを完結させることはできません。

そこでBoxでは脱PPAPをはじめとする出口対策についても、HENNGEをはじめとするパートナーシップを通じてソリューションを提供してきました。

現場に広がる「脱PPAP」の動きと、Box連携へのニーズ

――企業全体でデータの保管から出入り口までを一元的にコントロールする仕組みが強く求められているわけですね。そうした中、HENNGEは、データの分散や喫緊の課題である脱PPAPに応えるソリューションとして、「HENNGE Secure Download」(以下、HSD)を提供しています。どのような背景とコンセプトで生まれ、なぜ現場から支持されているのか、お聞かせください。

三宅: はじめに、私たちが提供するクラウド型認証・アクセス制御サービス「HENNGE One」は、「現場の生産性を落とさずに、クラウドを安全に使い倒す」というコンセプトを掲げたセキュリティ基盤です。その中で、HSDは、まさにPPAPのセキュリティリスクとパスワード別送の手間を解消するために生まれました( 図4 )。

図4 HENNGE Secure Downloadによる脱PPAPのファイル送信

利用方法も極めてシンプルで、ユーザーが普段通りメールにファイルを添付、送信するだけです。ファイルは自動でクラウド側に格納され、さらにシステムが自動的に受取人専用の安全なダウンロードURLに変換し、それを相手先に送信します。このような仕組みにより、送信・受信双方の運用負担を減らすことが可能です。

また、万が一、宛先間違いが発生しても、送信後にファイルを無効化・削除できることも、安心感につながっています。これらの優位性が評価され、企業の利用が拡大しています。

――近年、脱PPAPの動きとも相まって、その利用が急増しているそうですね。

三宅: 最新の当社調査では、2021年には約30%のファイルがPPAPを用いて送られていました。対して、2023年には6.2%まで減少し、代わりにHSDを用いた送信がPPAPを6倍以上上回るようになっています( 図5 )。

図5 HENNGE Secure Downloadにおける「PPAP」利用比率の推移

また、この機能を使って安全にファイルを受け取っている企業も、80万社を超えました( 図6 )。

図6 HENNGE Secure Download 利用企業数は80万社を突破

実際、非HENNGEユーザーの方からも「HENNGEで添付ファイルが送られてくる画面を最近よく見るよ。スムーズで安心感があるね」と言われるほど、脱PPAPの標準的なインフラになりつつある手ごたえを感じています。

そして、脱PPAPに続いて、お客様から数多く寄せられるようになったのが、「HSDの仕組みを使いながら、データを自社で利用しているBoxに集約したい」というニーズです。そうした声にお応えするため、2023年よりHSDの仕組みをさらに発展させ、メール添付ファイルを直接Boxに保管・共有連携させるソリューションとして「HENNGE Secure Download for Box」(以下、HSD for Box)の提供を開始しました。

コンテンツクラウドとしてのBoxの真価と、AI-Readyな基盤の実現に向けたHENNGEとの親和性

――HSDで受け取ったデータをBoxに集約したいというニーズが生まれていることからも、Boxの利用が企業の中で広がっていることがうかがえます。改めて、Boxがコンテンツ基盤として選ばれている理由や、その強みについてお聞かせください。

安達: おっしゃる通り、Boxの利用は非常に広がっており力強い手応えを感じています。現在、国内で2万3千社のお客様にご利用いただいており、日経225の86%に導入されています。

また、クラウドSaaSの特性を生かした提供形態により、中堅・中小企業にも幅広くご利用いただいています。

そうした中で、Boxの最大の強みは、単なるファイル保存ストレージではなく、全社のデータとコラボレーションを一元管理する「コンテンツクラウド」である点です。さまざまな業務で生まれるコンテンツをBoxに集約し、共有や権限管理、ワークフローなどを一元化することで、企業にとっての「Single Source of Truth」を実現します。

――企業のコンテンツを一元管理する基盤としてBoxの利用が広がる一方、近年では、そうしたコンテンツをAIでいかに活用するかも重要になっています。Boxでは、AIの進化に対応してどのような取り組みを進めているのでしょうか。

安達: 特にここ2年ほど、Boxにとって「AIエージェント」との連携は大きなテーマになっています。Boxでは、まず「Box AI」によって、蓄積したコンテンツから必要な情報を抽出・活用できる環境を整えてきました。さらに、複数のコンテンツから情報を取得して処理する「Box Agent」や、人とAIエージェントによる業務フローの構築を支援する「Box Automate」へと、AI活用の領域を広げています。

AIに適切な情報を与え、適切なリターンを得るためには、データそのものをきちんと管理しておかなければなりません。つまり、AI活用が進むほど、どのデータを誰が扱い、どこから入り、どこへ出ていくのかを適切に管理することが重要となるのです。

Boxは「AI-Readyなコンテンツ基盤」へと進化を遂げています( 図7 )。そして、その優位性を最大限に発揮させるためには、セキュアな情報連携が必須となるのです。

図7 Boxは、AI-Readyなコンテンツ基盤へ進化

――そのためにも、入口と出口をしっかり固めながらBoxとの情報連携を行うHENNGE One、そしてHSD for Boxとの連携が重要になるということですね。

安達: その通りです。HENNGE のソリューションがあるからこそ、企業は安心してBoxにデータを集約し、真のコンテンツ活用、そして AIの利活用にも踏み出せると考えています。

脱PPAPからAI活用まで、Box活用時のデータガバナンスを強化するHSD for Box

――両者がセキュアに連携できるHSD for Box の機能優位性について、改めてお聞かせください。

三宅: HSD for Boxの特長は 図8 に示すとおりですが、その優位性を上げると、大きく2つあります。

図8 脱PPAPをBoxで一元管理するHSD for Box

1つ目は、従業員に特別な教育が不要で、すぐに利用できることです。普段通りメールを送るだけで自動的にファイルがBoxに格納されるため、教育コストをかけずに運用できます。

次の2つ目は、管理側は、メールの添付ファイルがBoxに集約されるため、一元的なログ管理が可能になることです。

さらに、「HENNGE File DLP」機能を併用した二重防護も可能です。File DLPを活用することで、社内だけでなく社外へのファイル共有状況まで一元的に可視化し、不適切な共有を自動的に停止できます( 図9 )。

図9 ファイルの共有ステータスを可視化し、意図しない情報漏洩を防ぐHENNGE File DLP

Boxによる一元管理とFile DLPによる可視化・制御を組み合わせることで、意図しない共有や機密漏洩を確実に防ぐ二重のガバナンスを実現可能です。

――HSD for Boxの導入企業からはどのような点を評価されていますか。

三宅: DX推進の一環で、全社的にBox活用を進める大企業様からは、「従来通りメールセキュリティを担保しながら、従業員の運用手順を変えずにBoxでの安全なファイル共有を実現できる」といった点が評価されています。

また、「社内でAIを使って資料やドキュメントを手軽に作成できるようになったからこそ、コンテンツの増加に伴う管理負荷を高めることなく、全体のガバナンスや漏洩対策を強化したい」といったリアルな現場からの課題感に対しても、最適なソリューションとして活用いただいております。

安達: 日本企業特有の「メール添付」という外部共有の運用にあたって、HSD for Boxは脱PPAPによる情報漏洩対策を確実に行ってくれます。「Boxを全社でより安全に使いこなせるようになり、ガバナンスレベルが一気に跳ね上がる」という観点からも、Boxユーザー企業様にとって間違いなく必須のソリューションであると言えますね。

ライセンス体系の刷新で、HSD for Boxの導入がより容易に

――今回、HENNGE Oneの「DLPプラン」を刷新し、ライセンス体系も変更されたそうですね。

三宅: これまではHSD for Boxをご利用いただく際にオプション契約などが必要でしたが、より手軽に導入していただけるよう、ライセンス体系を刷新しました。今年10月に提供を開始する新「DLPプラン」では、このBox連携機能が有償のオプションから無料の標準機能となります。新規で導入されるお客様はもちろん、すでにDLPプランをご利用中のお客様も、追加契約なしでそのままHSD for Boxをご利用いただけます。

Boxを活用する企業が増えるなか、追加契約や設定といった導入のハードルを下げ、セキュリティとデータの一元管理をよりシームレスに実現していただくことが狙いです。

安達: 情報システム部の皆様が予算や社内調整に悩むことなく、セキュリティを一気に引き上げられる素晴らしいアップデートだと思います。

HENNGE、Box Japanの連携をさらに強化、ビジネスもグローバルに展開

――今回のライセンス刷新によって、Boxとの連携をより多くの企業が利用しやすくなるわけですね。では、そうした両者の連携も含め、今後の製品やビジネスについてどのような展開を考えていますか。

安達: Boxとしては、引き続きセキュリティを強化していく予定です。特に今後は、AIエージェントを安全に利用するための「エージェントセキュリティ」が重要なテーマになってくると考えています。AIが企業内のさまざまな情報へアクセスするようになるほど、「どの情報にアクセスしてよいのか」を適切に管理することが必須となるからです。

また、ビジネス面ではアジアをはじめとする海外市場でのパートナーシップ強化も図っていきたいと考えています。

三宅: 企業のクラウド活用やAI活用が国境を越えて広がるなか、セキュリティとコンテンツ基盤の連携も、日本国内にとどまらずグローバルに求められると考えています。HENNGEもグローバル展開により力を入れており、台湾オフィスの開設に加え、昨年にはアメリカに子会社を設立しました。また、タイやインドネシアなど東南アジアへの展開も始めています。

Box Japanさんもアジア展開に力を入れていらっしゃいますので、日本国内だけでなく、グローバルにもパートナーシップを広げ、両者の連携による取り組みを推進していきたいと考えています。

――ありがとうございます。それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします。

安達: AIの普及と相まって、企業における情報活用はさらに加速しています。一方で、AIを最大限に活用するには、そこで扱われるデータの安全性を確保する堅牢な基盤が不可欠です。そのために弊社はHENNGEさんとの連携をさらに深め、安心して情報を活用できるソリューションを提供していきます。

三宅: 我々は情報システム部門の皆様に、企業の安全をしっかり守りながら、最新のクラウドサービスやAIなどのテクノロジーを安心して活用していただきたいと考えています。

引き続き、Boxさんとの連携をさらに強化し、より使いやすく、安全で確実なソリューションを提供することで、AIを活用した情報活用の高度化を支援していきます。