特別企画
Windows Server 2016ではライセンスを変更、プロセッサ課金からコア課金へ
(2015/12/18 06:00)
11月末にTechnical Preview 4(TP4)がリリースされたWindows Server 2016だが、2016年のリリースに向けて、徐々に情報が出てきている。
今回は、先ごろ発表されたライセンスに関する最新情報をお届けする。
ライセンスが大幅に変わったWindows Server 2016
TP4のリリース後に明らかにされた情報としてもっと大きいのが、Windows Server 2016のライセンス形態が大きく変わるということだ。
Windows Server 2012 R2までは、Standard/Datacenterの両エディションとも、物理プロセッサの個数によってサーバーライセンスの料金が決まる、プロセッサライセンスの形態で提供されていた(Windows Server 2016を利用するためには、サーバーライセンスとCALが必要になる。CALに関しては、大きな変更は現状では発表されていない)。
現行バージョンであるWindows Server 2012 R2のStandard/Datacenterでは、1ライセンスあたり2つの物理プロセッサで利用できた。つまり、4物理プロセッサでWindows Server 2012 R2 Standardを使用するには、プロセッサライセンスが2つ必要となる。コアの数はライセンスに影響しないので、Windows Server 2012 R2までは、物理サーバーとして利用する場合、1プロセッサにどれだけコアが搭載されていても、物理プロセッサが2つならOSのライセンス料は同じだった(仮想環境については後述)。
しかしWindows Server 2016では、1ライセンスあたり16コア分のライセンスが与えられる。1ライセンスあたりのコストが変わらないと仮定すると、8コアのプロセッサを2つ搭載するサーバーでは、Windows Server 2012 R2とWindows Server 2016のコストは変わらないことになる。Microsoftでも、多くのユーザーはこのライセンス形態の変更によりコストが増えることはない、と説明している。
ただし、最近のプロセッサでは、コア自体の性能を飛躍的に向上させるのではなく、1プロセッサあたりのコア数を増やす方向にシフトしている。製造プロセスが微細化されれば、よりコア数を増やしていく方向に進んでいく。このため、1プロセッサあたり10以上のコアを持ったマルチコアCPUも、今では珍しくなくなっている。
実際、Intel Xeon E5 v3シリーズやXeon E7 v3シリーズ(Haswellベース)では、最大コア数は18となっているし、次世代のXeon E5(Broadwellベース)では最大コア数は20になると予想されている。そうしたCPUを搭載する2ソケットサーバーの場合は、追加ライセンスが必要になるため、以前よりもコスト増になってしまう。
もしかすると、Windows Server 2016がリリースされる際には、もう少しライセンスが緩和されているかもしれない。
なお、Windows Server 2016でコアライセンスを採用した理由をMicrosoftでは、「サーバーOS自体がクラウドを意識したモノになってきているため、クラウドで一般的な課金体系を採用した」と話している。
仮想マシン単位から仮想マシンとコンテナを含むライセンスに
Windows Server 2012 R2の場合、Standardでは、1ライセンスごとに2つの仮想マシンを動かす権利が与えられていた。Datacenterでは、1つのライセンスで無制限の仮想マシンを動かす権利がある。つまり、多数の仮想マシンを動かすサーバーにおいては、Standardエディションよりも、Datacenterエディションの方がコストメリットある設定になっている。
Windows Server 2016では、新しくコンテナによる仮想化の仕組みが入ったため、ライセンスにコンテナに関する項目が追加されている。
Windows ServerのOS上で直接動作するWindows Serverコンテナに関しては、Standard/Datacenterともに無制限。ハイパーバイザーが関係するHyper-Vコンテナに関しては、Standardは2つ、Datacenterは無制限となった。
Hyper-Vコンテナに関しては、コンテナ向けの特殊な仮想マシンで動作するため、基本的には仮想マシンとしてカウントされる。このため、Standardでは、仮想マシンとHyper-Vコンテナを合わせて2つとなっている。コンテナが追加されてはいるが、基本的には以前のライセンス形態とほとんど変わらないと思っていいだろう。
エディションによって機能が異なるWindows Server 2016
Windows Server 2012 R2では、Standard/Datacenterの両エディションで機能はまったく変わらなかった。2つのエディションの差は、プロセッサ数、仮想マシンの数などのライセンスに関する部分だ。しかしWindows Server 2016では、StandardとDatacenterで異なる機能が提供される(Web EditionやEssential、Storage Serverなどがどうなるかは明らかにされていない)。
Windows Server 2016では、Standardは、Windows Serverのコア機能を搭載したOSとして再定義された。
Windows Server 2016で追加されたすべての新機能がDatacenterでしか利用できないというわけではないが、注目すべき機能のいくつかはDatacenterのみになる。例えば、Windows Server 2016で搭載されるStorage Spaces DirectやStorage Replicaなどは、Datacenterにしか入っていない。また、ハイパーバイザーのセキュリティを高めるHost Guardian Service、セキュリティ性の高い仮想マシンを動かすShielded Virtual Machineも、Datacenterにしか入らない。
ネットワークの仮想化をより進めた新しいネットワークスタック(Software Defined Network)に関しても、Datacenterのみでの提供になる。
こうした機能は、大規模なプライベートクラウドやパブリッククラウドの構築のために必要なもので、小規模なオンプレミスサーバーではあまり必要ない、といった切り分けになるのだろう。
Microsoftとしては、集約率の低いオンプレミスサーバーはStandard、仮想化やコンテナを多く利用する集約率の高いサーバーにはDatacenter、という方向に動いているようだ。将来的に、StandardとDatacenterで、大幅に機能が異なっていく可能性もある。
なおMicrosoftでは、参考価格として、Windows Server 2016のStandardは882ドル、Datacenterは6155ドルに設定している。
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もう1つ、Windows Server 2016での重要な点として、Windows 10と同じように、最後のメジャーアップグレードになるかどうか、ということがある。これに関しては、Microsoftはまだ明らかにしていないが、Windows 10と同じように、メジャーアップグレードとしてはWindows Server 2016が最後になる。事実、Windows Server 2016 TP4では、OSのカーネル部分などはWindows 10ベースになっているので、アップグレードという項目が用意されている。
ただしサーバーOSには、カーネル部分だけでなく、サーバーとして利用するためのソフトウェアスタックがさまざまある。例えば、ハイパーバイザーのHyper-V、Active Directory(AD)、ストレージ、ネットワークなどだ。このようなソフトウェアスタックは、日々進歩している(コンテナなどもここ数年で注目されてきたテクノロジーだ)。
クライアントOSのように、テクノロジー面で劇的な変化が起こらないモノなら、メジャーアップグレードではなく、段階的なアップグレードでも問題ないだろうが、サーバーOSのように、多数のソフトウェアスタックで進化が起こっているOSでは、段階的なアップグレードのメリットがあるとはいえない。
また、企業の基幹業務で使っているサーバーOSにおいて、年に数回アップグレードが提供されるのも、管理面から考えると非常に煩雑になる。
こういったことを考慮すれば、筆者は、サーバーOSでは今後もメジャーアップグレードが提供されると思っている(実際、2020年になってもWindows Server 2016が最新サーバーOSというのでは、イメージとしていいものではないだろう)。
ただし、メジャーアップグレードといっても、それまでに段階的に提供された機能などをまとめて、新バージョンとして提供する形態に変わっていくかもしれない。
いずれにしても今後、サーバーOSがどういった方向性に進むのか、注視していきたい。