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日立の2016年3月期第3四半期決算は増収増益に 北米のストレージ事業はサービス化への移行急ぐ
(2016/2/4 06:00)
日立製作所(日立)は3日、2015年度(2016年3月期)第3四半期決算を発表。売上高は対前年同期比1%増の2兆4233億円、調整後営業利益は同3%増の1343億円、受取利息および支払利息調整後税引前四半期利益(EBIT)は同30%増の1483億円、親会社株主に帰属する四半期利益は同68%増の753億円となった。第1四半期から第3四半期(2015年4月~12月)までのトータルでは、売上収益は前年同期比4%増の7兆2302億円、調整後営業利益は同4%増の4083億円、EBITは同8%増の4109億円、親会社に帰属する四半期利益は同7%増の1729億円となった。
情報・通信システムの第3四半期は、5%増の5015億円、調整後営業利益は70億円増の275億円、EBITは70億円増の253億円となった。「システムソリューション事業は、過去最高の売上ではあるものの、米国でのハイエンドストレージ事業が伸び悩み、さらにIoT事業の立ち上がりがずれている」(日立 代表執行役 執行役副社長CFOの中村豊明氏)と、業績は好調であるものの、懸念材料が生まれていることが明らかになった。
2016年3月期の通期見通しについては、中国や資源・産油国を中心とした成長鈍化など不透明状態が継続することから、売上については前回の見通し通り9兆9500億円だが、調整後営業利益は前回見通しよりも500億円マイナスの6300億円、EBITは800億円マイナスの5400億円、当期純利益は700億円減の2400億円とする。
事業部門別では、情報・通信システムの売上高は前回の見通しよりも1%減の2兆800億円、調整後営業利益は210億円マイナスの1370億円、EBITは310億円マイナスの1130億円とした。
また、2015年度に事業構造改革費用として800億円を計上し、さらなる追加も検討。4月1日からカンパニー制をあらためマーケット別の事業体制に変革する。経営体制も変更し、4月1日付けで現在、取締役 代表執行役会長兼CEOの中西宏明氏が取締役会長 代表執行役に、取締役 代表執行役 執行役社長兼COOの東原敏昭氏が取締役 代表執行役 執行役社長兼CEOに就任することを発表した。
2015年度第3四半期(2015年10月~12月)の業績については、「4月から12月までの9カ月間の類型については調整後営業利益、EBITともに過去最高を更新」(中村CFO)と好調な結果となっている。これは中期経営計画として進めているスマトラ(Hitachi Smart Transformation Project)効果によるプラス効果などが要因となっている。
国別では、売上収益は国内は前年同期比3%減の1兆1934億円、海外売上収益は5%増の1兆2299億円。海外収益の内訳は、アジアが5%減の5422億円で、うち中国が4%減の3048億円、ASEAN・インドほかが6%減の2373億円。北米は12%増の3173億円、欧州が22%増の2557億円、その他の地域が9%増の1146億円。為替の影響もあって、3期累計での海外売上比率が昨年同期の48%から51%と比率が高まり、過去最高となった。
事業部門別では、建設機械が在庫調整などにより赤字転落したものの、情報・通信システム、社会・産業システム、オートモーティブシステム、金融サービスの5部門は前年を上回った。
通期連結決算の見通しとしては、経済環境が中国や産油国を中心とした経済成長鈍化など不透明な状況が継続するとの見方から厳しい見通しとした。
その一方で、情報・通信システムについては、別な要因から主力事業であるストレージ事業に見直しが必要だとしている。
「欧州では第1四半期に発売したハイエンドモデルが好調。第2四半期についてもその好調は続いたが、第3四半期での売上増が期待されていた米国市場は思ったほど売れ行きが伸びなかった。米市場向けには需要があったこともあってオールフラッシュ製品を投入した。オールフラッシュ製品は、スピードは速いものの容量は多くない。需要としてはAI、アナリティクスといったデータをためるというよりも、分析をおこなって戦略を決定するために利用するストレージ需要が伸びている。全部自社にデータを置いてというよりも、クラウドを使ってサービス化を求める傾向が強くなっている。これは当社だけではなく、他社も含めた傾向だが、当社のサービス化ビジネスは半年ほど出足が遅れた感がある」(中村CFO)。
2015年度の事業構造改革として260億円増となる800億円を計上するが、さらなる追加も検討する。内容としては、電力流通事業、ヘルスケア事業、日立建機などで事業構造改革を継続するほか、社会インフラシステム事業におけるポートフォリオの見直しとして、収益性の低い海外化学プラントや中東地域の産業プラントからの事業撤退や培養設備や製造管理システムなど、日立が優位性を持つ医薬分野やアジア地域に成長資源を集中投入する。
情報・通信システム分野については、ITプラットフォーム事業における事業構造改革と強化を実施する。具体的には、(1)通信ネットワーク事業の自社開発製品の大幅な絞り込み・軽量化とIoT関連分野の強化、(2)海外ストレージ事業における製品販売からサービス中心のビジネスモデルへの転換を加速、(3)オールフラッシュストレージ製品ラインアップの拡充と提案力の強化を実施する。
社内体制としては、4月1日付けでカンパニー制をあらためてフロント機能を強化したマーケット別事業体制に変革する。
CEOについても、現在の中西CEO、東原COOの二頭体制を、東原氏がCEOをつとめる一頭体制へと変更する。「2014年度、15年度は二頭体制で経営を進めてきたが、新たな中経を計画するにあたり、東原体制への変更を実現する。組織も東原のもとでカンパニー制からフラットな体制とすることで、直接情報を共有し、物事を決めやすい体制へと変更する。決定がスムーズに進む前向きな経営体制変更となる」(中村CFO)。