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「安定稼働は評価、運用コストは今後の課題」――、IIJが顧客調査の結果を公開

 株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)は18日、同社の提供するクラウドサービス「IIJ GIO」のユーザーに対して行われた調査「2015 IIJ GIOカスタマーサーベイ」結果や事例を紹介する説明会を開催した。

 2015年のIIJは、9月にオンデマンドで提供するネットワークサービス「IIJ Omnibus」、10月にハイブリッドクラウドとプライベートクラウドを柔軟に組み合わせて利用できるクラウドサービス「IIJ GIO P2」の提供を開始した。IIJはこれらのサービスを背景に、すべてのクラウドリソースをひとつにまとめる「One Cloud」という新しいコンセプトを打ち出した。

 IIJ 執行役員 プラットフォーム本部長の立久井正和氏は、「IIJ GIO P2とIIJ Omnibusによって、オンプレミスとクラウドを用途に応じて柔軟に使い分けられるようになった」と述べる。

IIJ 執行役員 プラットフォーム本部長の立久井正和氏
「One Cloud」で、あらゆるクラウドリソースをひとつに

安定稼働を前提に適材適所でクラウドの利用がすすむ

 2015 IIJ GIOカスタマーサーベイによると、顧客の業種や利用形態を問わず95%のユーザーがITシステムの中で重視していることは、システムの安定稼働である。もちろん当然といえば当然の回答ではあるが、調査対象がクラウドサービスであるIIJ GIOのユーザーに限定されていることも含めて考えてみると、2位の運用管理コスト(70%)を大きく上回る結果となっていることは興味深いと言える。次いで3位以下は初期導入コスト、性能保証、事業継続性となっている。

 クラウドの利用動向として、既存の業務アプリケーションをそのままクラウド上に移行するクラウドイネーブルの割合が増加したことから、オフィスITやB2C系Webの用途の比率は低下したという。

 IIJ サービス推進本部 GIO推進部長の神谷修氏は、「業務部門やビジネス部門がなんらかの形で導入に関与するケースが増えている」と述べ、ユーザー部門が自分たちのビジネスに合ったITシステムを求める傾向が強まっていることを強調した。

95%のユーザーはシステムの安定稼働を重視している
ユーザー部門が何らかの形で導入にかかわるケースが増えている

 ITシステム全体のリソースの70%以上をクラウドで稼働させている企業が13%に達するなど、フルクラウドに向かっている企業は増えている。しかし、一方で半数の企業はクラウドの占める割合が10%以下という調査結果も出ており、このギャップをどのように埋めていくかは今後の課題と言えるだろう。

 IIJ GIO以外のクラウドの利用状況については、Amazon Web Service(AWS)の使用が圧倒的に多く、Google、さくらインターネット、Microsoft(Azure、Office 365)などが続く。神谷氏は「適材適所でパブリッククラウドを活用しているお客さまが増えているのではないか」と述べた。また、このように多様な用途でのクラウド利用が進む中、ハイブリッド/マルチクラウドとバックアップ/ディザスタリカバリ(DR)環境の2点については、過去傾向と比べて検討される割合が高くなっているという。

ハイブリッド/マルチクラウド、DR環境の導入が増加傾向にある

 ではITシステムでもっとも重視するポイントであるシステムの安定稼働について、実際のユーザーはIIJ GIOをどのようにとられているのだろうか。IIJ GIOを導入したことでシステムの品質やサービスレベルが「大幅に改善された」「多少改善された」と答えたユーザーは全体の88%、稼働率・信頼性が「とても良い」「やや良い」と答えたユーザーは94%という高い結果となった。

 しかし一方で、運用コストが増加したと答えるユーザーも19%にのぼっている。神谷氏は「コストについては今後の課題」としながらも、「DRへの投資などコストの増加が前提な場合もあり、一概にコストが増えたことで顧客満足度が低くなるとは考えていない」と述べた。

クラウドサービスの弱点を補い、新しい価値を提供する

 IIJ サービス推進本部 GIO推進部 GIO推進課の近藤将吾氏はIIJ GIO P2について、「これまで選択の幅が狭かったパブリッククラウドのサービスの選択の幅を増やす。さらにプライベートクラウドではビジネスの変化に柔軟に対応できるオンデマンド性や初期コストの削減を提供する」と述べ、さらに「これらのクラウドをひとつのクラウド(One Cloud)として提供する」とIIJ GIO P2はこれまでのクラウドサービスの弱点を補いつつ、新しい価値を提供することをアピールした。

IIJ サービス推進本部 GIO推進部 GIO推進課の近藤将吾氏

 すでにIIJ GIO P2には130件程の引き合いがあり、そのうちの45%は新規顧客であるという。また、クラウドネイティブに向けたマルチクラウドの利用が拡大することを視野に入れ、MicrosoftのOffice 365の閉域接続などIIJは今後もさまざまなクラウドサービスを提供していく予定だという。

IIJが考える今後のクラウドの活用

北原 静香