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立場の弱い下請け事業者は取適法で救われるのか?――Sansanの調査で実態が明らかに

 2026年1月に中小受託取引適正化法(取適法)が施行されて3カ月が経過した。取適法とは、取引上優越的な立場にある事業者が、立場の弱い下請け事業者に不当な要求をすることのないよう取り締まる法律で、下請法を改正し規制を強化したものだ。

 Sansan株式会社は3月30日、取適法施行後の実態に関する説明会を開催した。同社は今月中旬、受注側・発注側の両者に対して取適法施行後の状況をオンラインで調査しており、今回の説明会はその調査結果に基づいている。

 調査では、受注側に対しては、取適法施行後に価格協議が増加したか、また価格協議を増やすために重要だと思うことは何かを問い、発注側に対しては、取適法に対応できているか、また受託事業者の特定に課題はないかを調査した。結果、取適法によって企業の取引適正化が進む一方、対象となる企業や取引内容が増加したことで、現在も法改正への対応に追われる企業が多いことが明らかになった。

 まず、受注側である中小受託事業者のうち、「価格協議が増加した」との回答は43.2%にとどまった。一方で「価格協議に変化なし」とする企業は56.8%で、「法改正を価格転嫁につなげられている層とそれ以外とで、状況に差が出ている」と、SansanでContract One Unit プロダクトグループのプロダクトマネジャーを務める大泊杏奈氏は説明する。

法改正後も「価格協議に変化なし」が6割弱
Sansan Contract One Unit プロダクトグループ プロダクトマネジャー 大泊杏奈氏

 価格協議が増加した企業では、65.1%が契約書や発注書などの取引条件をすぐに確認できるようにしていることがわかった。「単に条件を明示するだけでなく、すぐに確認できる環境を整えることまで意識している」と大泊氏はいう。

価格協議の鍵は「取引条件の即時確認」

 また、受注側では72.1%の企業が「取引条件を明示した書面が手元にないため価格交渉を断念した経験がある」と回答、契約内容の把握不足が交渉の障壁になっていることが浮き彫りになった。

 さらに、17.1%が「契約内容の変更を把握できず誤った内容で取引した経験がある」と回答しており、大泊氏は「交渉の場面だけではなく、実際の取引においても契約内容を正しく把握することが重要だ」と強調した。

受注側の7割「書面がなく交渉を断念した経験」あり

 一方、発注側の企業では、87.4%が取適法への対応を進めていると回答し、業務の見直しが進んでいる様子がうかがえる。ただし、59.5%が「受託事業者の特定に課題がある」と回答するなど、対象企業の洗い出しが依然として負担になっていることがわかった。その理由として最も多かったのは「企業情報の確認・収集の負担」で、手作業による情報整理が現場を圧迫しているようだ。

「受託事業者の特定」に課題がある企業が6割

 大泊氏は、「法改正による業務負担を最小限に抑えつつ取引慣習をアップデートするには、取引条件の可視化と情報収集の負担軽減が重要なポイントになる」と述べ、同社の取引管理サービス「Contract One」が、契約書のデータ化とAIによる情報抽出によって、「取引条件の確認と対象企業の特定を効率化する仕組みを提供している」とアピールした。

取適法:Contract Oneで対応できること

 阿部・井窪・片山法律事務所 弁護士の松田世理奈氏は、この調査結果を受け、「今回の規制は、中小事業者が価格協議を持ちかけた際、発注側はそれを拒めず適切に対応しなければならないというもの。つまり、改善のスイッチを押すのは受注側の中小事業者自身であるはずが、受注側は直接規制されないためか、やや受け身の姿勢が見られる」と指摘する。

 続けて松田氏は、「中小企業が自ら動かなければ、法改正の効果を実感することは難しい。むしろ、この機会を生かして価格協議を行い、フェアな価格に見直していくべきだ」とコメントした。

阿部・井窪・片山法律事務所 弁護士 松田世理奈氏