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富士通研、スマート端末でWebアプリを安全かつ快適に使える新技術
WebアプリのUI処理とデータ処理を分散実行
(2015/5/29 13:31)
株式会社富士通研究所(以下、富士通研)は、スマート端末やウェアラブル端末で動作するWebアプリをシンクライアントと同様の安全性と優れた操作性で利用できる技術を開発した。
近年、さまざまな現場でスマート端末を活用した業務効率化への期待が高まっている。こうした端末で患者情報や社外秘情報といった高い秘匿性が求められるデータを扱う場合、安全性の観点では端末にデータを残さないシンクライアント環境が理想という。ところが、一般的にシンクライアント環境では画面情報の送受信が頻繁に発生し、人が遅いと感じる数百ミリ秒から1秒程度の遅延が発生することがあり、スワイプ操作などに体感的に影響してしまう。
今回の新技術は、スマート端末向けに開発されたWebアプリを「ユーザーインターフェイス(UI)処理」と「データ処理」に自動で分離し、データ処理はクラウド側で実行し、UI処理はスマート端末側で実行する新しい仮想化技術。これにより、スマート端末で動作するWebアプリにおいて、シンクライアントと同様の安全性と優れた操作性を実現できるという。
具体的には、まず「Webアプリの分散」を行う。端末とサーバーには新たに開発したスマートフォン仮想化エンジンをそれぞれ搭載し、UI処理の移動や処理内容の実行などを行う。さらに独自開発した仮想化対応版のWebアプリ・ライブラリに置き換える。
Webアプリの実行時にソースコードを解析し、その実行に必要なライブラリで定義されたUIに関連するAPIが記述された部分を、ソースコードのUI処理と推定して分離。端末からサーバーにWebアプリの実行が通知されると、ソースコードのUI処理部分と仮想化対応版のWebアプリ・ライブラリをスマート端末に転送する。
一方、分離したUI処理以外のソースコードはデータ処理としてサーバー側で実行。UI処理とデータ処理を分散して実行することで、シンクライアント環境の端末側にデータが残らない安全な業務環境と、画面転送が頻発しても遅延が生じにくい優れた操作性を両立する。
加えて、スマート端末で利用者の操作や処理時間、操作頻度を分析し、UI処理の中でも操作性への影響が小さい処理はサーバーに動的に移動する機能も開発した。これにより、操作性を維持しながら、より安全なシステムを実現できるという。なお、これらはWebアプリ実行時に動的に処理するため、分散処理のための再設計・再開発は不要とのこと。
富士通研は、開発した仮想化技術のサーバーにおける多重実効性能の向上や操作分析の高精度化などを進め、2016年度中の実用化をめざす。さらにサーバーやストレージのみならずIoT環境などさまざまなクラウドが連携する「ハイパーコネクテッド・クラウド」の実現に向け、実行状態やネットワーク環境などに応じて端末やネットワーク装置、サーバーなどに最適に分散実行する技術開発を進めるとしている。