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日本IBM、国内初の「SoftLayerクラウド・データセンター」を東京に開設

日本語サポートを無償提供、パートナーとのエコシステムも推進

左から:クリエーションライン 代表取締役社長の安田忠弘氏、エス・アンド・アイ 代表取締役社長の藤本司郎氏、日本IBM 執行役員 クラウド事業統括担当の小池裕幸氏、パイオニアVC 代表取締役副社長の間下浩之氏、ニスコム 常務執行役員の三石剛史氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は22日、日本初の「SoftLayerクラウド・データセンター」を東京に開設し、同日よりサービス提供を開始したと発表した。

 今回開設した「SoftLayer 東京データセンター」は、アジア太平洋地域の各都市(シンガポール、香港、メルボルン)に配置されたSoftLayerのデータセンターを補完するもの。また、IBMがクラウド・データセンターを全世界に展開している中で、データの冗長性や地域の多様性を強化することも目的としている。

 日本IBM 執行役員 クラウド事業統括担当の小池裕幸氏は、国内にデータセンターを構える背景について、「SoftLayerによるクラウドサービスを日本で提供するにあたり、国内に業務データやアプリケーションを保持する必要性が出てきていた。また、すべてクラウドではなく、自社IT基盤とつないだハイブリッドクラウドの構築ニーズも高まっていた。さらに、日本語でのサポート強化を望む声も増えてきていた。東京データセンターでは、こうした要望に応えるサービスを提供していく」と述べている。

日本IBM 執行役員 クラウド事業統括担当の小池裕幸氏
「SoftLayer 東京データセンター」の選択画面

 具体的には、1万5000台のサーバー設備を用意し、ベアメタルサーバー、仮想サーバー、ストレージ、ネットワークなど、SoftLayerのクラウド基盤の全サービスを提供する。IBMのプライベートネットワークと、世界中に配置されたSoftLayerのすべてのクラウド・センターやnetwork points of presence(POP)をシームレスに統合。顧客企業は、東京のデータセンターを利用できるだけでなく、セキュアなグローバル高速ネットワークを活用することで、東京と他国データセンターとの連携を容易に実現できる。例えば、システム間の連携、システムの移行、バックアップの構築、世界的な開発システムの構築なども、迅速かつ簡単に構築できるという。

 日本語サポートの強化としては、「日本語Webサイトをオープンするとともに、管理ポータルサイトから日本語によるテクニカルサポートを無償で提供する。サポートを受けたい人は、チャットシステムやチケットシステム、電話を使って日本語で問い合わせを行い、その回答を日本語で得ることができる。日本語でのサービス対応時間は、平日の9時から17時までで、当面は件数の制限はしない予定。こうした現地語でのテクニカルサポートは、日本が世界で初めてとなる」(小池氏)と説明している。

 また、「SoftLayer 東京データセンター」の開設に合わせて、「SoftLayer」の企業での利用を支援するため、今年11月に発表した「業界業務プロファイル」のラインアップを拡充した。新たに追加したプロファイルは、「組立加工業プロファイル」、「中小プラント構築業プロファイル」、「運輸業プロファイル」、「アパレル業プロファイル」、「製造業IT-BCPプロファイル」、「Connected Vehicleプロファイル」の6つで、これにより計17種類の品ぞろえとなった。

 SoftLayerパートナー160社とのエコシステムもさらに推進しており、「最近では、エス・アンド・アイ、コミュニケーション・プランニング、クリエーションライン、ニスコムの4社からSoftLayerを活用した新サービスが次々と発表されている。また、SHカッパープロダクツ、本田技術研究所、マツダ、テイ・エス テック、東京都環境局、金沢工業大学、筑波銀行、リコー、プラス、ミラノEXPOメディア情報配信実行委員会準備会が、すでに東京データセンターの採用を決定している」(小池氏)という。

 今回の発表会には、SoftLayerパートナーを代表して、エス・アンド・アイ、クリエーションライン、ニスコム、パイオニアVCの4社も同席し、各社のSoftLayerへの取り組みを紹介した。エス・アンド・アイ 代表取締役社長の藤本司郎氏は、「当社ではSoftLayerの利用に必要な導入・構築・運用をすべてパッケージ化した『S&Iクラウド・マネージドサービス』を提供しており、12月17日には、同サービスの提案により東京環境局のシステム共通基盤運用業務を落札した。これをきっかけに、エンタープライズ向けシステムインテグレーションのメニューの一つとして、同サービスを積極的に提案していく」と述べた。

 クリエーションライン 代表取締役社長の安田忠弘氏は、「SoftLayerのAPIを活用した日本語によるポータルサービス『SETTA(セッタ)』を来年1月12日から提供開始する。このサービスでは、SoftLayerのさまざまな機能と当社の技術サポートにより、安心して小規模からクラウド環境を利用することができる。x86サーバーのユーザーや販社をターゲットに、まずはサーバープロビジョニング機能を提供し、運用監視機能やセキュリティ関連機能などを順次追加していく」としている。

エス・アンド・アイ 代表取締役社長の藤本司郎氏
クリエーションライン 代表取締役社長の安田忠弘氏

 ニスコム 常務執行役員の三石剛史氏は、「分野特化型クラウド導入支援サービス『OptiClouds for HPC』のサービスの一つであるHPCクラウド専用セルフポータル『OptiClouds FrontGate』のSoftLayer対応版を本日から提供開始した。HPC分野では、クラウドの本格利用にあたり、日本国内でのセキュアかつ高性能なHPCクラウドサービスのニーズが高まっていた。今回、こうしたニーズに対応するべく、『OptiClouds FrontGate』をSoftLayerで動作可能とした。さらに、HPC利用の需要が多い製造業向けに、CAEアプリケーションをプリインストールしたインスタンスを提供することで、HPC分野でのクラウド利用を促進していく」との考えを示した。

 パイオニアVC 代表取締役副社長の間下浩之氏は、「当社では、SoftLayerのベアメタルと仮想サーバーの豊富な選択肢、高品質なグローバル・データセンター・ネットワークといった特長を生かしたリアルタイム・コラボレーション・ソリューション『xSync Prime』を提供している。これまでは、世界各地のSoftLayerデータセンターからサービスを提供してきたが、今回の東京データセンターのオープンを機に、来年以降、既存ユーザーのシステムとデータをすべて東京データセンターに移行していく」との計画を明らかにした。

ニスコム 常務執行役員の三石剛史氏
パイオニアVC 代表取締役副社長の間下浩之氏

 なお、日本IBMでは、「SoftLayer 東京データセンター」の開設に合わせたキャンペーンを実施する。東京データセンターで、新規注文したサービスの最初の1か月は、最大500ドルの割引が受けられるという。キャンペーン対象は、月単位請求のサーバーとサービスのみで、時間単位のサーバーとサービスは対象外となる。オファーの有効期限は2015年2月28日まで。

唐沢 正和