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奈良先端大が情報基盤を大幅強化、被災時のネット環境も考慮

 奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)が最新の情報基盤・計算機環境を整備し、2014年度から順次稼働を開始した。同大と伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)が25日、共同発表した。

 奈良先端大では2013年度に情報基盤・計算機環境を強化し、災害時の事業継続も考えたシステム構築のための調達を行い、2014年度から順次本格稼働を開始している。新たに導入したのは、1 )全学情報環境システム、2)高度統合情報基盤ネットワークシステム、3)遠隔拠点間データバックアップシステム、4)アドホック型衛星インターネット通信システム。

 1~3をCTCが、4をスカパーJSATが受注し、奈良先端大との協力体制の下でシステム構築された。

 高度統合情報基盤ネットワークシステムをネットワーク基盤とした上で、連携する全学情報環境システムにより個々の研究者、学生、職員へ先端的な研究環境と大学院教育環境を提供することで、「インテリジェント・キャンパス」を実現。加えて、沖縄科学技術大学院大学と接続した遠隔拠点間データバックアップシステムや、被災してもインターネットが使えるアドホック型衛星インターネット通信システムにより、災害時もネット環境が途絶えないよう配慮している。

新システムの概要

 高度統合情報基盤ネットワークシステムでは、ネットワークの主要な部分に100Gbpsで相互接続される「コアスイッチ」、キャンパス内全域のフロアに20Gbpsの帯域を提供する「フロアスイッチ」を設け、キャンパスネットワークシステム「曼陀羅(まんだら)ネットワーク」を刷新した。

 コアスイッチには、ジュニパーの「EX9200シリーズ」を導入し、障害回避策として二重化されたスイッチを核に3研究科棟間を100Gbpsの帯域で接続。IPv4/IPv6によるIPスイッチング、MPLS(Multi Protocol Label Switching)、VPLS(Virtual Private LAN Service)によるソフト上の仮想ネットワークを使用する。学内の各建屋にはフロアスイッチを設置し、複数の端末やOSが混在した状況でも確実にユーザーを認証できるトリプル認証などを利用して、安定性・安全性に優れたサービスを提供している。

 また、複数の組織がリソースを共用するための環境を提供するVXLAN、管理者がネットワーク制御方法を自由に設計できるOpenFlowスイッチ、40Gbpsで学外接続する境界ルーターなども導入し、大容量のデータアクセスが必要となる先端的な研究を可能にしたという。

曼陀羅ネットワーク概略図

 全学情報環境システムでは、オラクルのHadoop実行基盤システム「Oracle Big Data Appliance」を大容量データ処理ノードとして導入。大規模データを分散・並列処理することで高い処理性能を実現した。データ保存に関しては「Oracle ZFS Storage ZS3-2」を採用するほか、汎用分散ファイルシステム「GlusterFS」による広帯域分散ファイルサーバーや、日本HPの超低電力・高密度型カードリッジサーバー「HP Moonshot System」、15.8TFLOPSのGPGPUを搭載した超並列演算ノード「HP ProLiant SL6500 Scalable System」も導入している。さらに、これらのシステムを、I/O仮想化コントローラー「Oracle Fabric Interconnect」で束ね、InfiniBandとその上に仮想的に作成されるEthernetで相互接続することで可用性を高めている。

全学情報環境システム概略図

 遠隔拠点間データバックアップシステムでは、地震対策が施されたコンテナ型データセンターを活用し、ジュニパーの「SRX3400シリーズ」によるIPsec-VPN方式で沖縄科学技術大学院大学と接続しBCP対策を実現。データはホスト側で暗号化し、「Oracle SPARC T4-1」サーバーのSAPRC T4プロセッサに内蔵された暗号化アクセラレータを活用している。

遠隔拠点間データバックアップシステム概略図

 アドホック型衛星インターネット通信システムでは、被災地や情報格差地域において簡易な操作でインターネット接続を確保する世界初の自律式車載型衛星通信システムを導入。地震・津波などで地上系通信インフラが損壊した場合も通信衛星を介したインターネット環境を構築した。同システムは、ハイブリッド車による運搬・電源供給が可能で、電源投入後ワンタッチ操作だけで目的の衛星を自動的に補足できるという。

アドホック型衛星インターネット通信システム概略図

 なお、Oracle Big Data Appliance、Oracle ZFS Storage ZS3-2、EX9200シリーズは、国内の教育機関としては初の導入事例とのこと。

 昨今、大学では情報環境システムに学外のクラウドサービスを利用する傾向にあるが、奈良先端大では最先端システム構築の知見を蓄積し、そのノウハウを情報発信していくため、オンプレミスでシステムを構築しプライベートクラウドとして学内へサービスへ提供。今後は学外へのサービス展開も視野に入れ、現存する問題点の抽出・課題の明確化を行い、災害に強い事業継続も考慮したシステム導入を進めるとしている。

川島 弘之