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JARIが計算システム刷新、自動車衝突シミュレーションをより大規模に

乗員・歩行者の傷害メカニズムなど解明へ

 一般財団法人日本自動車研究所(JARI)は、自動車衝突シミュレーションに活用する科学技術計算用システムを3月より稼動させた。システム提供元のSCSK株式会社が20日、発表した。

 JARIは中立的かつ公益的な立場から、自動車安全技術の革新を通じ、日本の産業界へ貢献するための研究機関。研究グループの1つである衝突安全グループでは、国内外の研究機関との連携により得られた、人体の衝撃耐性に関連するデータを基に、人体を模擬したコンピュータモデルを開発し、乗員と歩行者の傷害メカニズムの解明、傷害指標の開発・評価などに取り組んでいる。

 近年では衝突安全に関連するモデル開発や解析業務の大規模化が進み、高い計算性能と解析関連業務(プリポスト)を効率よく連携できることが、研究開発プロセスの改善における重要課題になっているという。

 そこでSCSKが、標準技術を積極的に採用したPCクラスタシステムと、さまざまな科学技術計算用ソフトにも対応する柔軟なアプリケーション実行環境を提供した。日本HP製サーバーを高速ネットワークで接続した「並列計算処理システム」で、衝撃・衝突解析ソフト「LS-DYNA」「Virtual Performance Solution」による計算を行う。

 科学技術計算用システムは、計算ノードに「Xeon E5-2643 v2」×2基を搭載した「HP ProLiant BL460c Gen8」×16台(計192コア)と、ノード間通信に「InfiniBand FDR」を採用。従来の計算機システムに比べて1コアあたり約30%の高速化を実現している。

 また、科学技術計算用システムとワークステーション(プリポスト用端末)を連携させることで、ファイル操作の利便性向上や大規模モデルの最適化を高速に実行できる環境を構築した。

 新システムによって、従来よりも大幅な高速化を実現、大規模シミュレーションも効率的に実行できるようになり、研究開発の加速が期待される。

 なお、SCSKは安定したシステム運用のため、「HPCサポートサービス」によって、「トラブルや課題解決のための技術支援」や「システムを効率よく利用するための運用ノウハウ」も提供する。

川島 弘之