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“カスタマーカンパニー”になるために必要なこととは?~米salesforce.comマーク・ベニオフCEO

 株式会社セールスフォース・ドットコムは28日、東京・六本木の東京ミッドタウンにおいて、クラウドコンピューティングイベント「Customer Company Tour 東京」を開催した。

 「新しいカタチで顧客とつながる」をテーマに、米salesforce.com会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏が基調講演を行ったほか、16以上のブレイクアウトセッションや、最新クラウドソリューションを体験できる展示会「Cloud Expo」、参加者同士の交流会などを用意した。

 同イベントは、4月15日の福岡での開催を皮切りに、名古屋、大阪でも開催しており、今回の東京会場での開催が最後となる。

顧客志向を実現することで成長力を高める企業“カスタマーカンパニー”

米salesforce.com会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏

 同社では、クラウド、ソーシャル、モバイル技術を活用し、顧客志向を実現することで成長力を高める企業のあり方を「カスタマーカンパニー」と呼称。午前10時から行われたベニオフCEOによる基調講演では、同氏が冒頭に、「みなさんのフィードバックをもらうために今日はここにやってきた。それが今日の一番大事なことである。思ったことをTwitterやFacebookで直接送ってほしい」と、対話型のイベントとすることを示している。

 その上でベニオフ氏は、「カスタマーカンパニーになるには、顧客とつながること、社員とつながること、製品とつながることが必要である。いまは第3の波が起こっている。これはモノのインターネットが築く世界である。バーバリーの店舗では、商品のタグからさまざまな商品情報が得られるほか、顧客が店舗を訪れたり、サイトを訪れても、どんな商品をこれまで購入したのかといった情報をもとにお勧めの商品を提供できる。フォーカスしなくてはならないのは、テクノロジーの変化ではなく、顧客に立ち返ること。テクノロジーは、顧客とつなげてくれる役割を担うことになる」と指摘した。

カスタマーカンパニーを実現
モノのインターネットへ進化するプラットフォーム

 また「スマートフォンは、製品や企業、社員とつながっており、そこからコミュニケーションが行える。私は、来日するのにラップトップは持ってこない。すべてスマートフォンに必要なものが入っており、ここから業務を行うことができ、顧客の詳細を知ることができ、コミュニケーションを取ることができる。みなさんも、これからはPC、ラップトップを捨て去る時代に入ってくる。すべてがスマートフォンで済むようになる」とし、スマートフォンによる変革がこれからも進んでいくことを強調した。

来日する際にはこのiPhoneを持参し、ノートPCは持たないという

 さらに「ソーシャル」、「モバイル」、「ビッグデータ」、「コミュニティ」、「アプリケーション」、「クラウド」、「トラスト」という7つの要素によって、カスタマー革命が起こっているとし、「すべての業種の企業が、新しいアプローチによってお客さまとつながることができる。企業は、いまこそカスタマーカンパニーにならなくてはならない。そして、ソフトウェアカンパニーにならなくてはならない。それは企業だけでなく、政府も同じである」と述べている。

 ベニオフCEOによれば、カスタマーカンパニーが求められる背景には、消費者は選択の自由を持ち、商品に対する情報を自由に発信できること、そして、モノを手に入れるだけでは満足はしない市場へと変化していることがあるという。そして、そうした顧客に向けて商品を提供するということは、企業は、消費者のための会社である「カスタマーカンパニー」にならなくてはならないことを強調。企業は、あらゆる方法で情報を入手し、製品、社員、企業、顧客がつながり、カスタマー中心に事業を行う必要性を提示しながら、「これが未来の当たり前の形である」などと述べた。

カスタマー革命の7つの要素
ソーシャル革命
ビッグデータ革命
コミュニティ革命

中小企業庁の中小企業・小規模事業者支援事業に採用

 一方、ベニオフCEOは、中小企業庁が展開する中小企業・小規模事業者支援事業にて採択されたコンソーシアムからの提案において、セールスフォース・ドットコムが提供するクラウドサービスが選択されたことを発表。「2016年には100万社が参加できるものにしたい」と語った。

 登壇した経済産業省 中小企業庁事業環境部長の鍛冶克彦氏は、「日本の中小企業は、460万社から420万社へと減少している。起業数も米国の半分のままである。起業に関する手続きをどうするのか、政府の補助金をどう利用するのかがわからない。また、ビジネスパートナーとのマッチングができていないといった問題がある。それを解決するために、今年7月にクラウドを活用し、起業手続きを簡単に行え、補助金をワンストップで確認でき、1万人の専門家をマッチングさせるものをつくる。起業家と、女性経営者や、商店街とのマッチングを行う」としたほか、「日本の中小企業は下請けが多いが、その技術を使えば、航空宇宙や先進医療分野にも出て行くことができる。クラウド、ソーシャル、モバイルを活用することで、日本の中小企業が持つ技術やノウハウを、アウトリーチできるようになる」などとした。

セールスフォース・ドットコムの中小企業に対するコミットメント
経済産業省 中小企業庁事業環境部長の鍛冶克彦氏

私たちはなにをしなくてはいけないのか?を探る5つの設問

カスタマーカンパニーを実現するための5つの問い

 続けてベニオフCEOは、「私たちは、なにをしなくてはいけないのか」と問いかけ、「ここにある5つの設問を、自問してほしい」と呼びかけた。

 その5つとは、「さまざまな場所にいる顧客にマーケティングを展開するには」、「顧客と連携しながらチームで営業を進めるには」、「さまざまな場所にいる顧客にサービスを提供するには」、「カスタマープラットフォームを構築するには」、「ワークスタイルを変革するには」というもの。

 こうした課題を解決するために、MarketingCloudを活用したソーシャルリスニングの実例、Chatterによるコミュニティ展開、Chatter Mobileによるモバイル利用提案、SalesCloudによるCRMの活用、ServiceCloudを活用した顧客サービス強化、Force.comによる開発環境の提供などを、具体的な事例を通じて紹介した。

 こうしたなかで、最新事例として、オリックス・バファローズおよびトヨタカローラ徳島を紹介した。

 オリックスバファローズは、ファンとのコミュニケーションにWebやSNSを活用。そこからさまざまな分析を行い、サービス向上につなげている例を紹介した。

 オリックス野球クラブの湊通夫取締役事業本部長兼企画事業部長は、「ホームページと対極にあるのがSNS。1対Nがホームページであるのに対して、1対1のコミュニケーションがSNS。球場にきてもらうのが一番のコミュニケーションだが、それを補完するのがSNSとなる。だが、球団だけが発信すると独善的になる。それを解決するには、セールスフォースのような仕組みが必要である」などと語っている。

 また、トヨタカローラ徳島では、営業活動において、タブレットを活用し、業務の効率化と顧客満足度の高めていることを示す。同社の北島義貴社長は、「セールスフォースを通じて、お客さまとの1対1の関係をしっかりとみることができ、それが成功につながることを、社員が実感している。モノではなくて、コトを提供するビジネス。これから自動車につながるさまざまなサービスが出てくる。ディーラーとして、顧客を満足させるブランドを目指していきたい」とした。

 また、米国で展開しているウーバーによるタクシーの配車サービスなどの事例も紹介した。

オリックス野球クラブ 取締役事業本部長兼企画事業部長の湊通夫氏
トヨタカローラ徳島 代表取締役社長の北島義貴氏

 さらに、ベニオフCEOは、salesforce.comが、クラウドとCRMのナンバーワンカンパニーになったことを示すとともに、四半期ベースで成長を遂げ、最新四半期でも前年比30%増の売上高成長を遂げていることを紹介しながら、「これは、お客さまが、セールスフォース・ドットコムを信じていくれたこと、セールスフォース・ドットコムにインスピレーションをくれたことによるもの」などと述べた。

 最後にベニオフCEOは、「新たな時代に向けたエネルギーを感じてもらいたい。方向を感じてもらいたい」としたほか、あらためて「私のメッセージをください。フィードバックをください」と訴えた。

 なお、基調講演の前には、パソナをはじめとするセールスフォースの導入企業の事例が紹介されたほか、salesforce.comのマーケットプレイスであるApp Exchangeは、米国では2000種類、日本では、100種類のアプリケーションが用意されており、ここにきて、SalesCloud上で動作する業務・業種アプリケーションが出てきたことを紹介。Force.comで開発しなくても、すぐに活用できるクラウドアプリケーションがそろいはじめていることなどを示した上で、6月17日にApp Exchangeカンファレンスが開催されることも告知された。

 一方、午後から行われる個別セッションでは、セールスフォース・ドットコムの包括的ソーシャルマーケティングソリューション「Salesforce Marketing Cloud」を活用する日産自動車および楽天Edyの事例、クラウドを活用した中堅・中小企業の先進事例のほか、ソーシャルメディアの活用に関するセッションなどを用意している。

(大河原 克行)